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おじさん驚愕が止まらない

「……なるほどわかりました。春の風の皆さん、長期間の調査依頼お疲れ様でした。

 お疲れでしょうし、定期的に報告もいただいていましたから、詳細は明日でも良いのですがいかがなさいますか? もちろん今日でも構いませんよ。

 それと稀人の彼は大丈夫ですか? 冒険者ギルドに来てから、ずっと目の焦点が合っていませんが」


 カウンターの向こうから、スーツのような服を着た男性がこちらを見て何か言っているようだが、混乱している私には届かない。



 アイリーンさんが連れてきたスーツのような服を着た、四十歳ほどの冒険者ギルド職員の男性に案内されてタイゴンの町に入った。


 主要な大通りや門周辺は大きな物でも通るのかとても広いのだが、防壁内は日本の都市部のように建物が密集していた。


 一番に感じたのは匂い。


 ひどい悪臭はしないのだが壁に囲まれているからなのか、室外なのに籠っているような様々な匂いを感じる。


 香辛料、料理、人、動物、鉄、石材、木材、なにかの悪臭などなど、判別できない匂いも多くあり判別できているのかもわからない。


 空気に味でも感じてしまうかのような密度の匂い。ずっと自然の中にいた私は匂いだけで混乱してくる。

 

 次に視界から入って来る情報量。


 馬車らしき物を牽いているのは……馬が大きくない? 隣に並んでいる人が目一杯手を伸ばして、ようやく口に手が届きそうな大きさだよ。筋肉も盛り上がって凄いし、なにあの馬のような動物。


 建物は防壁に使われているような建材や、木、石、煉瓦、など様々な建材で最低でも二階建ての建物がひしめき合っている。


 建物の色も様々なので余計視界からの情報量が増えて、めまいを感じそうになる。真っ赤な建物とかどうしてそうなった、目に厳しいぞその色。


 雰囲気としては日本の長崎にあるオランダ村に近いだろうか。建物の雰囲気が日本のものと違うし、ここはすっごい密集しているけど。火事や大きな地震きたら大惨事にならない?


 道行く人々も、大人はほとんどが武器を所持している、剣や槍などの刃物は鞘やカバーをされて抜き身ではないが、鎧などの防具を着用した人ほぼ全員が所持している。


 町人といったラフな格好の人も、鉄の棒やこん棒など刃物のついていない武器を腰や背中に保持している。


 お婆さんが杖をついていたと思ったら、木製のこん棒だったように住人のほぼ全員が武装している光景は、日本人の私には町全体の圧力が上がったようにも感じる。


 素直に言えば怖い。めっちゃ怖い。



 ここまで牽いてきた総香木製の荷台は荷物ごと冒険者ギルドに預けることになり、「春の風」の四人とスーツの男性と衛兵の方に案内されて、防壁側のいろいろ箱が積まれた広場のような所に置いてきた。


 混乱気味の私は、なんとか私物が全て詰まった大きなリュックを回収し背負っている。



 防壁から少し大通りを進むと大通り沿いに冒険者ギルドがあり、外観は町の防壁と同じ素材でできた四階建てで横にも広い、どこの要塞だと思うような無骨な建物だった。


 何かの魔物をモチーフにしたような紋章の彫られた、年代を感じさせる重厚な木製看板が大きく掲げられている。


 建物の中央からは左寄りに位置する入り口は、金属で補強された重厚な木製扉が開け放たれており、中に入れば壁と床は年季の入った木製で、所々新しい木材になっている。


 入り口から右側には市役所や大きな病院の受付のように木製のカウンターが並び、左側には壁全面が木や革で作られた何か書かれている物が掲示されている。


 あれが聞いていた冒険者への依頼書なのだろうか。


 カウンター以外にテーブルや椅子などはなく、武装した老若男女が立つか床に座っている。


 カウンター横の広い通路から血の匂いがかすかに漂ってくるけど。人の血じゃないよね? 獲物の血の匂いだよね?



 防壁の外もだったが内側も、初めて見るものや驚愕の連続で、私の理解力を貫通してくる。


 落ち着かない心と混乱した頭の中で、柔軟な人や頭のいい人ならすぐに適応できるのだろうか? 言葉もわからずいきなりここに一人で飛ばされていたらどうなった? と、どうでもいいことを思ってしまう。



「……ゾウ。……ゴンゾウ? ねぇ、ゴンゾウ! ずっと呆然としているけど大丈夫なの? 顔色は悪くないけど」


「……んぇ? アイリーンさん? えっと、はい、体は大丈夫です。でも、町も人も、全部、知っているものと、違いすぎて、今もずっと、驚いています。まだ、落ち着かない」


「放心してるから何事かと思ったッスけど、ずっと森と川にしかいなかったッスからね」


「初めて違う文化に触れてぇ、驚いてしまいましたかぁ? 驚くのも無理はありませんねぇ」


「あぁあれかい? 初めて村や小さい町から、大きな街や首都に来た人間の反応かい。ゴンゾウの場合はもっと重症かね?」


 アイリーンさんに肩を叩かれ呼び掛けられて、思考が少しクリアになってきた。心配されるくらい呆然としていたらしい。


 でも許して? 驚愕しすぎて思考が止まったんだか暴走したんだか、まだ落ち着かないんですよ。


 五感で感じるカルチャーギャップがすごいんです。


「よし! それじゃ簡単な報告もしたし、緊急の報告もないから、あたいらはまた明日の昼までに報告に来るよ。今日はギルドで紹介されたいつもの宿で休もうじゃないか」


「そッスね。エナも疲れたし今日は宿でパーっと豪華に飯食べて、ゆっくり休むの賛成ッス! エナ先輩が連れてってあげるッスよ。ゴンゾウ」


「あそこの宿は食事も美味しくてぇ、お部屋も清潔ですからぁ、ゴンゾウさんも落ち着いて休めると思いますよぉ」


「ええそうね。私も久しぶりの長期調査の達成感もあるのかしら? いつもとは違う疲れを感じているわね。今日は休みましょう。ゴンゾウ大丈夫? もうちょっとで落ち着けるわ」


「皆さん、ごめんなさい。ありがとう。頭? 心? が、落ち着かない、少し、混乱してるかも」


 まだまだ落ち着かない頭と心で、リジーさんに先導され、後ろにセイランさんが全員を視界に収めるように控え、アイリーンさんとエナさんに手を引かれながら、今日泊まる宿まで連れて行ってもらう。



 ご迷惑をおかけして申し訳ない。


 そしてありがとう。本当に助かります。



お読みいただきありがとうございます。


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