プロローグ
山田権蔵は平凡な男だ。
旅行や仕事で県外に出ることはあったが、今までの人生で地元から居住地を離れたことがない。
就職して一年が経過するまで実家に住んでいたし、その後は会社と実家の中間ほどの場所にあるアパートを借りてずっと住んでいた。
口数も少なく、インドア派でもあるから行動範囲も交遊関係も狭い。インターネットやスマートフォンが世間に普及してからはより狭くなった。
休日は食料の買い出し以外で出かけることもほとんどない。私服も十年は同じものを着回している。
食は好き嫌いはないが、特別好むものもこだわりもない。味覚は正常なのだが興味が薄い。
美味しいものを食べたときに感動はするが、たまにでいいと思っている。一週間三食同じ物を食べていても飽きや苦痛を感じない。
山田権蔵は初めての経験にとても臆病だ。
過去に何かあったわけではない。経験が役に立たないことを深層心理で恐れている。小中高大への進学は初日がとても不安だった。初めて入るお店はとても緊張する。
しかし一度経験してしまえば開き直れる。周囲の人、物、事に興味が薄いから。
「自分が心を許した人達がいればいい」
山田権蔵は本気でそう思っている。
異世界に転移するという、初めての経験をしてしまった。
住む場所も、心を許した身内も奪われた。
遭難生活で三ヶ月以上サバイバルを経験した。
絶望し本気で生を諦めて、そこから復活した。
魔物を、生き物を殺した。
生き物を食べるための加工を、自らの手で初めから経験した。
人生で一番他人に感謝し、特大の恩を感じている。
山田権蔵は平凡な男だ。
平凡な男が短期間に、身体的にも心理的にも劇的な変化を経験した。
性格、趣味嗜好、価値観などが大きく変わるだろうか。全く変わらないだろうか。
未来はまだわからない。
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