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おじさんの反省会

 森の中で二泊して、拠点にはお昼前に到着。


 収集物の確認や荷物の整理、簡易な装備の点検整備なども済ませ、水浴びをして遅い昼食を食べ終えた。


 現在は道具や装備の点検整備をしながら調査任務の進捗の確認や調査時の報告連絡相談を「春の風」の四人が行っており、たまに私にも話題が飛んでくる。


「やっぱり専属の運搬担当がいると違うんッスね。なんッスかこの収集物の量! めっちゃ金になるじゃないッスか!」


「エナさんはずっとソロでしたからねぇ。私たちと一緒になっても、運搬や荷物持ちはいませんでしたからぁ」


「他の同業者と一緒にしちゃダメよ。ゴンゾウごめんなさいね。まだ持てるって繰り返すから、調子に乗っちゃったわ」


「ちょっとした山になっちまったね。あたいらだけじゃ全部は持っていけないから、持って行けない分は次まで預かっててもらえないかい? ゴンゾウ」


「わかりました。セイランさん、預かります。木を抉って、大きい荷台、作っておきます。オレ一緒に、行くとき、牽いていける」


 これは前から考えてはいた、人里に降りるとき森の中を牽いていける、車輪もなにもないソリのような荷台だけを木をくり貫いて作っておけば、ここになにも残さず行ける。不要なものは売れるなら売ればいい。



 話し合いも一段落し、私の今回の戦闘に話が及んだので、相談してみるか。


「相談したい、ことが、あります。オレの、戦い方、冒険者の、方針、どうしたらいいか、悩んでいます。オレのこと、気にしないで、思ったこと、聞きたい。お願いします」


 そんな感じで私の戦闘感想会と反省会が始まったのだ。


「私は今回の調査での戦闘は、問題なかったと思っているわ。もちろん改善する部分は多いわよ? 腕力任せなところ以外にもね。

 でも戦闘幼児のゴンゾウがフォローがあったとはいえ、初戦闘で魔物に自分も荷物も触らせずに完勝できたのはすごいことよ。だから戦い方や方針をすぐに固定するべきじゃないと思う。目標を持つのはいいと思うけど」


 評価が甘く感じるが、今は選択肢を狭めてまだ固定するべきではなく試す期間、と続けるアイリーンさん。ん? 幼児? 聞き間違えた?


 他の三人も初戦闘としては、怯むことがなく慌ててはいたが、概ね問題はないと言ってくれる。


「やっぱりゴンゾウはやり過ぎるッス。これから力に慣れていけば良いんッスけど、力の調節ができないなら討伐に出ても素材ダメにして稼げないッスよ? 少ない依頼達成金だけッス。魔物素材の収集依頼は、確実に失敗するッスね。でも大型仕留めて、丸々持って帰れるかもしれないのは超魅力的ッス」


 エナさんは私の稼ぎを心配してくれている。確かにパワーが調節できず私が倒した魔物は多くはなかったが、素材はほぼダメになっていた。


 ゴブリン、ウルフ、シールドボアの他にも一対一の状況を作ってもらい何度か戦わせていただいたが、回収できたのはシールドボアの牙と額の盾だけだった。


「運搬係やパーティーの荷物持ちとしては、今の時点でもほぼ最高峰ですよぉ。ゴンゾウさんがソロで冒険者ギルドの依頼を受けるなら、建築現場や物資の集積所のような重量物を持つお仕事が良いかもしれませんねぇ。大きな町でも小さい村でも、力仕事はいっぱいありますからぁ」


 リジーさんは私が一人でも稼げる仕事を考えてくれる。私もずっと彼女たち「春の風」に付いて回ることは出来ないだろうし、そのつもりもない。そのとき稼げませんでしたでは、彼女たちにも申し訳ない。


「あたいらは個人でもパーティーでも自惚れじゃなく、ギルドの評価で上位に位置している。でも、パーティー人数のこともあって活動が片寄ってんだよ。ゴンゾウがいなくてこの拠点もなかったら、今受けている長期調査も難しいくらいにね。

 四六時中ゴンゾウを縛り付けはしないが、参加してくれりゃ活動の選択肢が大きく増える。あたいらと一緒に活動しながら、あんたに戦闘や冒険者の基本なんかを教えようと考えていたんだ。

 ……今回の調査でも思ったんだが、あんた焦ってんのかい? 焦ってもいいことはないよ」


 セイランさんは私が必要で面倒をみることが当然のように言い、私が焦っていることを指摘してくれる。


 自分が焦っていることに初めて気が付いた。アイリーンさんリジーさんエナさんも「それだ!」みたいな顔してる。


 異世界に転移してから三ヶ月程度が経過しているが、出会った人は「春の風」の四人だけ。いろいろ教えてもらいわかった気になっていたが、自然の中で生活していただけで人里に出たことはない。


 指摘されると自覚できることが多々沸き上がってくる。慣れてはきたが私の人生で初めて地元ではない、知らない土地での遭難サバイバル生活。


 年若い彼女たちに迷惑はかけられないという強迫観念のようなもの。国や文化どころか地球とは違う世界で、まともに生活できるのかという大きな不安。


 吹っ切れたとは思っていたが、私は唐突にパワーを手にしただけの平凡なおじさんだ。他にも出てくる出てくる細かい焦る理由。


 焦ってたかぁ。焦ってるなぁ。



 その後、今後の生活に不安があって焦っていたことを、正直に伝えて謝ると、セイランさんには「春の風」リーダーとして考えていた、今後のパーティーの方針や私の今後などを話していなかったことを謝られ。


 アイリーンさんリジーさんエナさんからは、「相談もなくなにを勝手にゴンゾウは、私たちから離れようとしているのか」と、バシバシとエナさんから背中を叩かれながら詰め寄られた。


 セイランさんが謝ることじゃないことと、むしろ感謝をしていることを伝え、三人には平謝りしながら、不安も焦りもかなり小さくなって心が軽くなったように感じた。


 私の戦い方に関しては、戦闘どころかそもそも身体を動かし慣れていないんだから、それ以前の問題だと言われる。


 冒険者としての方針も、パワーを生かす方向が良いが経験どころか見てもいないのに方向性を決めるのは焦りすぎ、とごもっともな意見で私の悩みはほぼ解決した。


 相談しなかったら、盛大に空回りして特大にやらかしていたかもしれない。



 相談して良かったぁ。


お読みいただきありがとうございます。


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