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おじさん香木の分布調査

 彼女たち四人の仕事は、燃やすと魔物が忌避する煙を発生させる香木の分布調査だ。


 この香木は希少なものではなく、買おうと思えば簡単に購入出来るそうなのだが、特別安価なものでもないらしい。近辺では輸入に頼っているので、近場で採れるならそれに越したことがなく、輸出出来る量があるなら万々歳とのこと。


 川までは身軽な彼女たちなら町を早朝に出て昼前には到着出来るのだが、一般人が装備を整えて早朝に出ても到着するには深夜から明け方になってしまうらしい。


 今は煙でいないが魔物も出るためさらに時間がかかる。などの理由があり、川周辺に香木が密集していることが知られていなかった。


「春の風」が最初に受けた依頼が「森の外周に魔物が出るから奥で何か起こっていないか」の確認。


・でかすぎるシールドボアがいたこと(牙の現物有り)

・香木の群生が確認できたこと(香木の現物有り)

・拠点を築ける豊富な水量の川があること

・推定「稀人」がいること


 などをギルドに報告し、ギルドと滞在している冒険者で一番ランク評価の高いセイランさん率いる「春の風」で協議したところ。


・香木の分布調査

・脅威になるシールドボアがいた場合の討伐

・おまけで「稀人」との接触と、言葉の習得補助


 脅威になる魔物がまだ潜んでいる可能性があるため、滞在している冒険者で一番戦闘力評価の高いセイランさん率いる「春の風」に、二ヶ月の長期の依頼が出され、今に至る。


 他の冒険者は何かあったときの後詰めで、森外周の魔物の討伐を嬉々としてやっているらしい。


 アイリーンさん達「春の風」は戦闘力の高い斥候の役目だったのだろうか? あの猪はシールドボアって言うのか。


 私の起こした煙で被害が! と思ったのだが、ギルドや地元の冒険者としては、


「町に被害はない。むしろ森の中まで入らないといけない、低ランク冒険者の稼ぎになる魔物が、近くまで来るならありがたい。もっと来い」


 シールドボアの被害にあって亡くなった彼については、


「依頼中の事故については哀しく惜しいことだが、簡易であれ危険を承知で受けた調査依頼であれば冒険者の自己責任。稀人に責任は問わない。遺体の埋葬と遺品の返還に感謝する」


とのことだった。考え方脳筋過ぎんか? と思うのだが、私のせいで間接的に人が亡くなったのは間違いない。改めて彼の冥福を祈り、忘れないようにしようと心に誓う。


「稀人」である私との接触は、特に捕縛やら殺害ではなく、


「へぇ稀人いたんだ? 初めて見るから縁起がいいのかね。香木が産業になるくらい分布してるなら開拓団入れるけど、力があるの? それなら雇うけど。彼がどうしたいかも聞いてね? あ、言葉がわからないかぁどうする?」


程度の軽い感じだったらしい。


 憔悴していた私を心配したアイリーンさんが、「稀人捕縛してこいとか変なこと言ったらぶっ殺す」と言わんばかりの、子を守る母のような剣幕で協議に挑んでいたらしい。


「迫力すごかったッス」


「気合い入ってましたねぇ」


「あのアイリーンにはあたいも気圧されたねぇ」


「ゴンゾウ? あなた本当に死んじゃいそうな顔してたのよ!?」


 本当にアイリーンさんに出会えて良かった。女神のような慈悲深さである。



 そんな「春の風」の香木分布調査を冒険者の練習として同行させてもらっているときに、私たちの移動速度で拠点からは人里と逆方向に半日ほどで、私の愛車を見付けることができた。


 引火して炎上したのか見るも無惨になっており、金属パーツしか残っていない。小さなシールドボアが突き刺さったまま黒焦げになっている。


 森林火災になっていないのが不思議なほど火災の痕跡があるのだが、延焼はしなかったらしい。


 なんで炎上してんの? シールドボアが突き刺して引火? なんで火災広がってないの? いや広がってほしくはないけどなんで? 雨? ガソリン少なかった?


 ここでの焚き火も、周辺は角スコップで掘ったが全然延焼しなかったな。生木を燃やすには火力が無かった?


 理解できなかったから思考を放棄した。


 四人は愛車だったものを見てなんだこれ? って顔して警戒してるけど、一緒に転移してきた向こうの乗り物であることを伝えると、不思議そうに調べていた。


 結果、車の何もかもがボロボロで、「売ってもゴンゾウが金を取られるから止めときな」とセイランさんに言われ、愛車の残骸を撫でて別れを告げる。


 そして黒焦げの小さなシールドボアである。つくづく縁があるなこいつら。全長は私程度か? かなり小さいこいつと軽トラよりもでかい個体の中間が一般的で、あれは異常にデカイとのことだ。


 大きさに比例して牙も大きく頑丈になるらしく「いい値段で売れたッス」とは、いい笑顔のエナさん談。


 確かに焼け残った牙も石よりはかなり硬いが、全力で握ると砕くことができた。


 全員の「こいつやりやがった」的な視線が突き刺さる。


 ごめんなさい。



お読みいただきありがとうございます。


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