おじさんパワーを知る
荷物持ちとして四人の仕事を手伝いながら、私の冒険者練習をさせていただく日々。
薄暗い早朝に朝食を取り、食休み兼打ち合わせが終わってから活動開始。
昼は拠点に戻ることもあるし、現地で保存食を食べることもある。
まだ明るい時間に拠点に戻り、夕食の準備や装備の点検整備、収集物の確認、翌日の準備などなど日が暮れる前にやることは多々ある。
その後、夕食前後に仕事の報告連絡相談などを含めた談笑。
夜間の見張りの練習も兼ねて、二交代で見張りと就寝。
人里にいる三日間で四人は休養を取る。
パワーのおかげで疲労もなく余裕がある私は、すぐに彼女たちの活動に慣れることができた。
やはりパワーが解決してくれるな?
まだまだ明るい時間に拠点に戻り、少し暑く感じるようになったお日様の下、各自装備の点検整備をしていたときである。
「それにしてもゴンゾウ。あんたの腕力やら持久力やらはどうなってんだろうね? あたいにゃ強力な身体強化魔術か魔法に見えるんだが、魔力の放出が一切感じられない。どう思うリジー?」
「ゴンゾウさん? 魔力を測りたいのでぇ、手をいいですかぁ?」
「はい。オレも、知りたい」
「……うぅん? 今まで私が関知できた中で一番の魔力量? 密度? えぇ? なんでこんな魔力量で、一切放出や漏れがないんですかぁ?」
「稀人って噂や言い伝えで一番知られているのは、魔力が使えず非力で言葉が通じない。だったわね。魔力を使えないんじゃなくて、放出することが出来ないんじゃないかしら?
リジー。そのままゴンゾウの魔力に干渉できる?」
「あらぁ? 魔力を感じるのに弾かれますねぇ? ゴンゾウさん頭とお腹と足を触りますねぇ」
「わかりました。オレが、何か、すること、ありますか?」
「ゴンゾウはじっとしてるッスよ。そこに横になるッス。にしても、魔力が使えないって稀人は大変ッスね。火も簡単に起こせないじゃないッスか。話に聞く稀人って非力だったし。非力? ゴンゾウってもしかして超稀人? なんかかっこいいッスね!!」
「超稀人かいエナ。そりゃいいね。春の風も超稀人ゴンゾウ加入で国一番になっちまうかもね」
「ふふ、そうなったら楽しいわね。ゴンゾウ? 変に気負わなくていいわ。セイランとエナの言っていることは冗談よ。少しずつ冒険者に慣れていきましょうね」
「ありがとうアイリーンさん。超稀人? なれるように、がんばる」
「……ゴンゾウさんの全身満遍なく魔力があるぅ? 巡っているぅ? この枝握り潰してくださいぃ。……魔力の動きは身体強化魔術と似てますねぇ。でもやっぱり放出して消費している感じが一切ないですねぇ。面白いですねぇ。身体強化魔術よりも魔法なのかもしれませんねぇ。消費せずに常に強化されている感じでしょうかぁ」
「なんの躊躇もなく握り潰すのも慣れたッスね。ってリジー先輩!? 魔力を消費しない身体強化ッスか!? それ反則じゃないッスか!」
「ゴンゾウあんた滅茶苦茶だね? 中身の減らない水筒みたいなもんじゃないか。とんでもない持久力があるはずだよ」
「今まで来ていた稀人も、使えないだけで魔力は有ったのかしら? 魔力量が少なくて、ゴンゾウみたいな腕力がなかっただけ? もしかしたら過去の同じような稀人が、眉唾な噂や伝説になっていたの?」
「ゴンゾウさん起き上がっていいですよぉ。まぁまぁ皆さんいいじゃないですかぁ。ここで考えても答えはでないですよぉ。ただ力が強いだけですよぉ。ゴンゾウさんがゴンゾウさんならいいのではぁ?」
「リジーさんありがとう。オレの、力の、秘密が、わかって、良かった。みんなも、何かわかったら、教えて、ほしい、お願いします」
こんな感じで、私のパワーの謎が解き明かされた。魔力という不思議パワーが放出されることなく体内を巡ることで、この異常な腕力を実現しているらしいが、何も感じることができない。
魔力を感じることができたら、私も皆が使っているような火を起こしたり、水を出したり出来るようになるのかな?
やはり四人というよりは異世界の人々の考えや視点は地球人とは見えているものが違うのか、着眼点などが違い普段の何気ない会話から私の認識を一気に変える物事が多々あるようだ。
着眼点や常識が違うことは新たな発見があって、とても助かっている。
助かっているのだ。
常識が違うとはわかっているのだ。
でも、なんで脱ぐんですかねぇ?
え? 暑くなってきたから川で水浴び?
そうだよね。最近暑くなってきたから、仕事の後の水浴び気持ちいいよね。
わかるわかる……じゃねぇよ!
いや水浴びはいいんだよ! なんで躊躇なく服脱いじゃうんだよ!
これで何度目だよ!
こっちじゃ男女で水浴びは珍しくない?
私にはない常識ですねぇ!
羞恥心! 羞恥心を持って!
ここに! おじさんが! いるんですよ!
なんで目の前で脱ぐのさ!
私がいなくなってからでいいじゃん!
アイリーンさんとリジーさんは、少し恥ずかしがってるじゃん!
恥ずかしがるなら脱ぐなよ! 服! 着てよ!
そんな私を気にせず川に入っていく、アイリーンさんとリジーさんとエナさん。
ニヤニヤいい笑顔のセイランさんに、肩を叩かれ警戒する私。
踏ん張ろうとする力を利用されている!?
川まで吹っ飛ばすんじゃねぇよ! どうなってんだよあんたの謎技はさぁ!?
アイリーンさんも服洗っちゃいなさい? じゃないよ!
目の! やり場に! 困るんだよ!
え? なに? 私がおかしいの?
ちょ!? エナさぁぁぁん!? 下着まで脱ごうとしないで!!
リジーさん止めてあげて!!
え? 下着が邪魔ッス?
そうじゃねぇんだよなぁぁぁ!!!
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