おじさん冒険者練習
セイランさん、アイリーンさん、リジーさん、エナさんの四人は「冒険者ギルド」という組織に加入している個人事業主のような「冒険者」という仕事をしており、その「冒険者」が数名~数十名で集まった団体は「冒険者パーティー」と呼ばれている。
さらに、どこに所属しているか明らかにするために、「冒険者パーティー」ごとに異なる名称を付けている。
四人は「春の風」に所属しており、四十年は続いている「冒険者パーティー」で、メンバーの引退や加入など様々な理由で所属人数の上下を繰り返し、男性のみ女性のみ男女半々、最小で一人、最大時は二十人を越える大集団でもあったらしい。
現在は四人だけで活動しており、エナさんも半年前に加入したばかりらしい。そうは見えないほど馴染んで仲が良いように見える。だから男性一人なんてゴンゾウが気にすることはない、と言ってくれた。
仕事は多岐に渡り、町中の清掃、長距離移動時の護衛、「魔物」と呼んでいる危険な動物の討伐、さらには盗賊や犯罪を犯した同業者の捕縛殺害等々、非常に多くの仕事があるらしい。
なんとかアイリーンさんに私の生活力のなさの指摘を止めてもらい、生暖かい目で見ていた三人も加えて「春の風」について聞いてみたら、そんな感じの返答だった。
そしてその「冒険者パーティー」に私は誘ってもらったようだ。
これはあれだなぁ、創作で良く出てくる『冒険者』や『探索者』だ。そんなイメージでいよう。違ったらその時認識を訂正したらいいからね。
「というわけでだ。今までも言葉の練習を兼ねて調査に同行してもらっていたが、明日からゴンゾウは今後の練習を兼ねて、改めて荷物や装備を持って同行してみないかい?」
「それはいいですねぇ。ここなら同業者も今は来ませんし、いい練習ができると思いますよぉ。障害物も多いですからぁ」
「そうね。私もいい考えだと思うわ。ここを出るときにいきなり装備を整えても、不足や不備があるかもしれないもの」
「ゴンゾウ? 明日からエナ先輩がビシバシ冒険者を教えるから、ちゃんと付いてくるッス」
「わかりました。みんな、明日、から、お願いします。いろいろ、教える、嬉しい、ありがとう」
そんな訳で翌日から「春の風」の森の調査を手伝うことになった。エナさん? エナ先輩って言わなかったからって、ビシバシ背中叩かないで?
翌日。
大きなリュックを背負って、四人に付いて行くのは問題がなかった。パワーが解決するから荷物ならもっと持てるし、疲れることもない。
途中採集していた果実や薬草、削り取って何か印をつけた木片などを持たされても、まだまだ余裕しかない。何か鉱物が混ざったような石を割ってほしいと頼まれて、割ったり抉ったりもした。
しかし、やっぱり私は不器用なんだと改めて自覚する。
「ゴンゾウ。そんなに音を立てて歩いてちゃ、狩りで獲物に逃げられちまうよ。まずは歩くときに踏む場所を意識しな。この森なら土が見えている部分がある。そうそこだ。今日はそこを踏むんだ。
状況や環境で踏んでいい場所が変わるから、また教えるよ。周囲の警戒も怠っちゃいけない。いきなり全部やれなんて言わないから、ひとつひとつできるようになるんだよ」
「ゴンゾウさんが採集物を持ってくれるのは助かりますねぇ。でも、もっと優しく持ったり積めたりしないと、せっかく採集したものが潰れちゃいますよぉ。特に果実は気をつけてくださいねぇ。変に押し付けると、すぐにダメになっちゃいますよぉ。そうそう、ここを横にしたらいいですよぉ。
あらぁ。力があるのに上手くできましたねぇ。素手なら調節ができるんですかぁ」
「ほらゴンゾウよく見て? あのきのこは踏んだら毒が舞うから、気を付けるのよ。弱い毒だけど、何日も活動するときは命取りになるわ。ここの森には生えていないけど、広く拡散する毒や、とても強力な毒もあるからまた教えるわね。
大丈夫よ。こんなに早く話せるようになったあなたならできるわ。できなかったらフォローするのが私たちよ? 焦らないの」
「周りの音をよく聴かないといけないッスよ。荷物をガチャガチャ揺らしてると、音が拾えなくて困るッスね。上半身を上下左右に動かさないように気を付けるッス。そうそう。腰から下半身を意識して、上半身を揺らさないようにするッス。
力があると重心が変にブレる? もっと肉食うッス肉。今度一緒に狩りに行ってみるッスか? エナ先輩が教えてあげるッスよ?」
「わかりました。他に、何か、ある? 練習、したい、迷惑、しない、教えて、ほしい、お願いします」
四人はとても優しく親切に、フォローまでしながら私に教えてくれる。専門用語など難しい言葉を使わないように、気を使ってもくれているだろう。パワーだけでは解決できない部分を、不器用な私がどこまで克服できるかわからない。
それでも私には貰い物だけどパワーがある。
疲労に気を取られる心配がないのが、これほどありがたいと実感出来るのは、遭難しているときには思いもしなかった。あれは心がやられていたんだなぁ、と救ってくれた四人に感謝の気持ちが込み上げてくる。
パワーで解決できるなら、私はやれるはずだ。
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