第8話 ドワーフの村
メランに乗って数十分、俺達はドワーフの村 シデラスに着いた
村のあちこちからカンカンと鉄を打つような音がしているし、この村には鉄の匂いが染みついていた
鍛冶のみに力を入れているせいか、道はほとんど舗装されておらず草が生え散らかっている
俺達の前を一人のドワーフが通りかかった
年齢は俺と同じくらいだろうか
俺は意を決して話しかけた
「あ、あのー この剣の鞘を作って欲しいんだけど⋯⋯」
ドワーフの子は少し首を傾げたが、納得したかのように話し出す
「ああ、剣の鞘を作成して欲しいとぉ?(↑)」
ん? イントネーションがおかしいな
言葉は通じるみたいだけど、なんか違和感があるというか
ドワーフ独特の訛りがあるのだろうか
変なところで上がったり下がったりしている
ま、言葉は通じるから気にするほどでもないか
「そ、そうなんだよ。 できる?」
「ちょっと、貸してくれるぅ?(↓)」
うーん 違和感しかないな
ユウは勇者の剣をドワーフの子に渡した
「⋯⋯⋯⋯はぁ!? これ勇者の剣じゃないのぉ!?(↑)」
ドワーフの子は突然そう言った
勇者の剣だから、鍛冶に強いドワーフに頼んでるんだけど
「勇者の剣ってあの勇者の剣なのか?」
ドワーフの子は繰り返し言う
他に何があるっていうんだ?
「勇者の剣といえば伝説中の伝説じゃないか! そんな代物僕みたい素人には扱えないよ。 ソンチョなら出来るかもしれないけど」
それもそうか
勇者の剣ともなれば、簡単に扱えるわけがないよな
俺達はドワーフの子に案内されて、ドワーフの村長ことソンチョさんに会いに行った
村長の家は他の家と大差なかった
いくら村長といっても、豪華な家に住んでいるわけじゃないんだな
「ここがソンチョの家です。 くれぐれも粗相のないようお願いします」
ソンチョがさっきからめちゃくちゃ気になるんだけど⋯⋯
「この方がソンチョです」
ソンチョと呼ばれた老人はいかにも頑固オヤジという雰囲気を出していた
眉間にしわを寄せて考え込んでいる
ちょっとやそっとじゃ作ってくれないのかもしれない
「ソンチョ、ちょっと話が⋯⋯」
ドワーフの子がソンチョに耳打ちする
話をしているうちに、ソンチョの顔色がみるみると変わっていくのが分かった
「おお、旅のお方よ。 その勇者の剣とやらを見せてくれないか?」
ソンチョは俺にた聞いた
俺もソンチョに勇者の剣を見せてあげた
「ほぉー ふむふむ なるほど ほぇー」
数分唸りながら見回して、ソンチョは勇者の剣から顔を上げた
「儂も勇者の剣は初めて見た。 本物は見たことがないがこの輝き、本物に違いないだろう」
ドワーフのお墨付きときた
これはいい感じだ
「勇者の剣と分かれば、今すぐにでも取り掛かろう。 おい、行くぞ」
「ソンチョ!? 危険ですからやめてくださいってあれほど言ったじゃないですか!」
ん? なにか訳ありなのか?
「ああ、実は勇者の剣に必要な素材を取りに行く場所に、最近凶悪な魔物が出現したんです」
あ、また嫌な予感がする
「ドワーフの村では滅多に見ない魔物で、皆怖がって近づこうとしないのです。 それだと言うのに、ソンチョは行くといって聞かないんですよォ」
となれば、出る答えは一つしかないだろう
「勇者様さえ良ければ、素材を取ってきてはもらえませんか?」
ほら来た
ね? 予想通りでしょ?
「要らぬ! 勇者様は忙しいんだ! 儂が取りに行く!」
「だからやめてくださいって!」
あーあ 喧嘩始めちゃった
ユウはため息をつく
「あ、あのーよければ行きましょうか? 特に急ぐような用事もありませんし」
「いいんですかァ!」
いまだに名前を知らないドワーフの子が言った
食い気味なのが少し気になるけど
ま、そんなこんなで勇者の剣の鞘を作ってもらうだけなのに、結構大きなことになってしまった
なんでも引き受けてしまう俺も悪いんだけどな
ドワーフの子に言われた場所へ行くと、確かに魔物がいた
ん? よく見るとドラゴンじゃないか?
「なんだ、凶悪な魔物ってルベルの事だったのか」
メランが言った
ルベル? メランの知り合いか?
「ルベルはドラゴン族の中でも黒龍の次に強い赤龍なのだ。 少し話をすれば退いてくれるだろう」
メランがいうにはドラゴン族は上から黒龍、赤龍、白龍、緑龍の順に強さが決まっているのだとか
メランの知り合いなら安心だ
メランに説得は任せよう
メランはルベルとしばらく話していた
何か様子がおかしいぞ?
「おい、ルベル! どうしたんだ! 話を聞いてくれ!」
なんだなんだ?
ルベルがどうかしたのか?
「大変だユウ様! ルベルが、ルベルが我の話を聞いてくれないのだ!」
「ごああああああああ!!」
これは大変だ! 炎を吐いている
このままだと周りに被害が出てしまう!
何とかして止めないと!
「行くぞ、カルディア!」
「は、はい!」
俺とカルディアは、ルベルを止めるために駆け出した
それにしても、メランの知り合いはこんなに暴れ者だったのか?
「元々赤龍は血気盛んな種族なんだが、ここまで暴れることは今までに一度もなかった!」
メランがルベルの猛攻を抑えながら言う
もしかすると、誰かに操られているのかもしれないな
「ユウさん! 今です!」
メランとカルディアが作ってくれた隙に、俺が勇者の剣で斬る
一瞬バリアのようなものが張られた気がしたが、抑えきれなかったのか破れ散った
ルベルはそのままドーンとと大きな音を立てて倒れた
気を失っているだけのようだ
「チッ 使えんヤツめ」
ルベルの後ろからそう聞こえた気がした
俺はすぐさま見に行くが、そこには誰もいなかった
暴走が止まったルベルをメランが手当してくれている
ドラゴンの怪我はドラゴンが一番詳しいだろう
「……はっ!」
気を失っていたルベルが目を覚ました
やはり誰かに操られていたみたいだ
「メランか。 久しぶりの再会を喜びたいところだが、先に謝らせてほしい。 ホントに申し訳ない」
記憶は残っているタイプか
ルベルは深々と頭を下げた
もちろん、ドラゴンの姿のままで
「いやいや、君以外誰も怪我しなかったんだから良かったじゃないか。 あまり自分を責めるなよ」
俺は落ち込んでいるルベルに言った
「ホントにすまなかった。 ここの素材がいるのだろう? いくらでも持って行ってくれ」
そう言って、大きく翼を広げて去っていった
ルベルが去った後に残ったのは、虹色に輝く鉱石だった
一悶着あったが、これで勇者の剣の鞘が作れる
早く持って帰ってソンチョさんに作ってもらわないと
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