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第6話 魔王討伐しました

 ユウ、カルディア、メランの三人はそれぞれ顔を見合う

 俺はゴクリと息を飲み、扉に手をかける

 

 ギギギ⋯⋯

 

 重い音が鳴り、ゆっくりと扉が開いていく

 三人は中を見て驚いた

 

 中には魔物がうじゃうじゃいた

 街では見なかったものまでいる

 ま、魔王城だからいるのは当然か

 にしても、数が多すぎる!

 

「メラン、カルディア!  ここは任せてもいいか?」

 

 俺は二人に言った

 

「任せてくれ!  これくらいドラゴン族最強の我にかかれば造作もないことだ」

 

 頼もしい限りだ

 

「私に、できるでしょうか?」

 

 カルディアはブルブルと震えながら答えた

 そりゃそうか

 俺も人のことは言えないが、魔物に対して何も出来なかったから怖いんだ

 

 自分が死んだらどうしよう、怪我して治らなかったらどうしよう

 そんな思いが、カルディアの頭の中をぐるぐる渦巻いているのだろう


 俺はカルディアの頭にポンと手を置いて言う


「大丈夫だ。 君にならできる。 なんてったってこの俺でもできたんだから」


 続いて俺はメランに小声で言う

 

「メラン、カルディアを守ってやってくれよ」

 

「がってん!」

 

 それはいくらなんでも古いと思うが⋯⋯

 ま、ドラゴン族最強のメランなら任せても大丈夫だろう

 

「では、道を開けるぞ!」

 

 メランが大きく息を吸う

 

「ごあぁぁぁあああ!」

 

 目の前にいた数多の魔物達が、メランのブレスによって跡形もなく消えていく

 これがあの時のブレスか

 これをまともに食らっていたらと思うと恐ろしい


「ユウ様!  ご健闘を!」

 

「け、怪我だけしないでくださいねぇーー!」

 

 二人の言葉を背に、俺は急いで魔王の元へ向かう

 どうやら魔物はあそこ一帯にしかいなかったのだろう

 上は魔物がおらずがらんとしていた

 

 階段を駆け上がり、俺は魔王の元へ辿り着いた

 ご丁寧に扉には (まおうのへや) とひらがなで書かれてあった

 魔王何歳だよ

 

 俺は、バンッと扉を開けた

 魔王の部屋だというのに、中には誰もいなかった

 護衛とかも必要ないのか?

 いや、それだけ魔王が強いのかもしれない

 油断せずに慎重にいこう


 魔王が使っているであろう机の上に、一本の剣と(いしょ)と書かれた手紙が置いてあった

 俺はその いしょ とやらを読んでみることにした


「勇者よ、ここまでご苦労だった だが、儂はもうこの国にはいない 儂は自分の死期が近いのを察して、この国を出ることにした もう、世界征服などという大それたことも今となってはできない そこでだ 儂が討伐されたことにしてはくれないだろうか?  そばに置いてある剣は儂が持っていたものだ それを持っていけば、討伐の証になるだろう よろしく頼む まおう」

 

 そうか、魔王も死ぬ事が怖いんだな

 生きとし生けるものに、必ず死は訪れる

 それは魔王とて例外ではない

 

 俺は魔王の剣を手に取った

 剣の柄から剣先まで真っ黒の剣だ

 俺は剣を持ち、その場を去ろうとした

 その時だった

 

 後ろに邪悪な気配を感じた

 まさか!

 

 キィーン!

 

「ま、魔王?」

 

 魔王らしき人物は大きなマントをはおり、今まさにこの俺を切り裂こうとしていた

 頭には大きな角が二本生えており、鋭く尖っている

 顔には仮面をつけていて素性が分からなかった

 

 魔王はこの国から出たのではなかったのか!

 初めからここにいて、俺が背を向けるのを待っていたというのか!

 つくづく魔王のやりそうな事だ

 

「なっ!」

 

 魔王による不意打ち作戦は、女神の恩恵とやらの力のおかげか防ぐことができた

 ふぅ、これくらいエウカレスもあらかじめ教えてくれても良かったのに

 

「儂の奇襲作戦が失敗しただと?」

 

 てか、そんな卑怯な手を使うなんてお前何歳だよ

 

「すまない!  さっきの奇襲攻撃のことは忘れてくれ!  儂も出来れば戦いたくはないのじゃ」

 

 それは俺も同感だが、討伐してくれと言われたしな

 いやはやどうしたものか

 

「隙ありっ!」

 

 魔王が俺に向かって炎弾を放ってきた

 

 だーかーらー……


「卑怯な事せずに、正々堂々と戦えばいいだろ!」

 

 俺は若干イラつきながら勇者の剣を振った

 魔王は自ら放った炎弾もろとも、真っ二つになった

 

「くぅー!  勇者よ、これで終わりだと思うなよ 儂は必ず蘇りお主の首を今度こそ斬ってやるからな!  首を洗って待っていろ!」

 

 そう言って、魔王は散っていった

 なんか、大人げなかったな

 

 その時、ユウは気づいていなかった

 ユウの持つ勇者の剣と魔王の剣が共鳴するように光っていることに

 

 

「きゃあああああああ!」

 

 魔王を倒して数秒後、下から物凄い叫び声が聞こえた

 俺は魔王の剣を待ち、急いで階段を駆け降りる

 

 下の階には魔物は一匹たりともいなかった

 メラン(とカルディア)が倒してくれたのだろう

 それより、さっきの叫び声は誰だ?

 

「ユウ様、無事だったか!」

 

「メラン、さっきの叫び声は誰なんだ?」

 

 俺はメランに聞く

 しかし、メランは言いにくそうにしている

 その腕の中にはカルディアが気を失って眠っていた 


「なんと言っていいのか、カルディアにツノが生えて⋯⋯」

 

 ツノだって?

 カルディアは人間の女の子だ

 ツノなんて生えているわけないだろ

 だが、メランが嘘をついているようにも思えない

 俺は気を失っているカルディアの前髪をあげる

 

「……何も無いじゃないか」

 

「そ、そんなはずは無いのだが」

 

 メランが慌てて取り繕う

 戦い疲れて、カルディアにツノが生えた幻覚でも見えたのだろう

 俺はカルディアを背負い、魔王城を後にする

 もちろん、腰に二つの剣をぶら下げながら

 

 メランはブツブツ言いながら、物陰に行き服を脱ぐ

 これもだいぶ慣れてきた

 

 メランがドラゴンの姿になり、後ろにカルディアを背負った俺が乗る

 メランは俺が乗っても、まだブツブツ言っていた

 別に責めているわけじゃないのに

 

 メランは大きく翼を広げて飛ぶ

 魔王討伐なんて、できっこないと思っていたが案外何とかなるものだ

 やってもいないのに、できないと決めつけるのはよくない

 俺は異世界で改めてそう思った

 

 数分飛んで、街に戻ってきた

 長老に魔王討伐の証の剣を見せると

 

「その剣はまさしく魔王の持つ剣!  本当に勇者様だったのですな!」

 

 と、褒め称えられた

 俺は苦笑いで答えた

 

「ささ、その剣はこちらでお預かり致しますので、勇者様は王都へお向かい下さい」

 

 長老が剣を預かるように手を出してくる

 そうだな、剣が二本あっても使えないんだから預かってもらった方がいいだろう

 俺は魔王の剣を長老に渡す

 

「確かに、お預かりしました」

 

 長老は後ろにいた人に魔王の剣を渡した

 その長老の様子がおかしいように見えたが気のせいだろうか

 

 それよりも、また王都へ行かないといけないのか

 あの王様、人は良さそうなんだけどなんか絡みづらいというかなんというか

 

 あまり乗り気ではないが、どこへ行ってもホウレンソウ(報連相)は大事だもんな

 それが第一責任者となれば尚更だ

 

 気を失っているカルディアも連れていくわけにはいかないのでメランに見守ってもらうことにした

 

「絶対ツノ生えてた絶対ツノ生えてた絶対ツノ生えてた絶対ツノ生えてた……」

 

 まだ言ってるのか

 そんなに気に病まなくてもいいんだけど

 俺は長老と一緒に王都へ向かった

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