第21話 エダフォスの決意
さ、サラマンダーの鱗だって!?
サラマンダーの鱗ってことは、あのサラマンダーに会いに行かないといけないのか
だが、もし戦うとなれば勝ち目はない
サラマンダーの強さは俺も分かっている
それに関しては何も言えない
だけどもそんな危険を冒してまでも取りに行く必要があるのか?
他のもので代わりにできたりしないのか?
エダフォスに聞いてみる
「はい、それじゃあダメなんです 僕には夢があるんです」
夢? 精霊にも夢があるのか
「僕は人間になりたいんです」
「「「ににに、人間に!?!?」」」
エダフォスの言ったことにみんなが驚愕した
まさか人間になりたいと言い出すとは思わなかった
てか、精霊が人間になれたりするのか?
「もちろん人間以外の生物は、人間になることができるんだ それは精霊だって例外じゃない 魔物もエルフも人間になれる 精霊は精霊王によって人間になれる」
そして、エダフォスはソルを見て言った
「もし、僕がサラマンダーの鱗を採ってこれた暁には人間にしてください」
エダフォスはそう言い切った
「本当にそれでいいのか!? 人間になるとすぐに死んでしまうぞ! 精霊のままなら、人間よりも長生きできる それでも人間になるのを選ぶのか!?」
ソルは大声で言った
そう言うのも無理はない
精霊王からすれば、そんな考え自体信じられないだろう
確かに俺みたいな人間はケガをすれば簡単に死んでしまう
傷もすぐには治らないし、魔法を使うにしても自身の魔力を消費して疲労する
メリットどころかデメリットしかないとしか言えない
でも、エダフォスの意思は固かった
「でも、人間は精霊よりも魔力を持っています 自分は精霊としてではなく人間として死にたいんです」
エダフォスは声高らかに言った
それだけエダフォスは人間になりたかったのだ
精霊よりも俺達人間の方が魔力の量が大きいんだ
「そうなんです 僕たち精霊も確かにそれなりに魔力は持っています ですが、普通の生活では魔法を使うことはほとんどありません そのため、体内にある魔力量はあまりありません だから、人間となってちゃんと魔法を使った生活をしたいんです」
「それは精霊王である俺を侮辱していると取っていいんだな そうか そんなに言うならいいだろう ただし、サラマンダーの鱗を採ってこられたらな」
ソルは舌打ちしながら、そう反論して奥に戻っていった
ソルが戻ったのを確認したリーノは慌ててエダフォスに駆け寄った
リーノが赤く腫れたエダフォスの頬を優しくなでる
おそらく怒ったときに、ソルが殴ったのだろう
それにしてもひどいあざが残っている
「それでこれからどうするんだ? まさかサラマンダーの鱗を採りに行くのか?」
俺は半信半疑で聞いてみた
まさかそんなことはしないと思うけど
「もちろんサラマンダーのもとに行くよ 僕は本気で人間になりたいんだから」
エダフォスはいたって真剣な表情で言った
「大丈夫だ 心配せずとも何の考えなしに行動するわけじゃないから安心して 僕にもある考えがあるんだ」
俺の頭に、はてなマークが浮かんだ
「ははは そう大したことじゃないよ 君たちには関係ない話だから」
そう言って、エダフォスは去っていった
その後を、リーノがルンルンな足取りでエダフォスの後をついていった
本当にリーノはエダフォスのことが好きなんだな
こうしちゃいられない
俺たちも後をついていかないと
俺たちはメランにドラゴン化してもらい、慌てて後を追いかける
「なあ、メラン エダフォスの言う考えってなんだと思う?」
俺はエダフォスの考えについて、全く見当がつかないためメランに尋ねてみた
「我もなんとなくは察しがついているが、おそらく――」
メランから話を聞こうとしたとき、ペルルが話に割り込んできた
「ええーー?? ユウったらまだわからないのー? そんなのでよく勇者とか名乗れたもんだわ!」
こいつ・・・!
言わせておけば言いたい放題言いやがって
「そういうお前は分かるんだな?」
俺は若干前のめりになって聞いてみた
するとペルルは無駄に大きな胸を強調しながら
「きっとエダフォスはサラマンダーと仲がいいの だから、話し合って解決するんだわ!」
また、素っ頓狂な考えを持ったお姫様だ
第一、サラマンダーが喋るわけないだろうに
俺はペルルの答えを鼻で笑った
一方、メランは一人驚いたような顔をしていた
「これは…… より一層気を付けて観察しないといけないな」
メランは誰にも聞こえないくらいの声で言った
「何よ! 私の答えが馬鹿馬鹿しいっていうの? そんなわけないじゃない! サラマンダーだって喋るかもしれないじゃない! 何でもかんでも現実にとらわれているからそういう考えしかできないんだわ!」
ペルルは一気にまくし立てた
この野郎、言っていい事と言っちゃいけないことの区別がつけれてないな
これはもう少し教育が必要だな
俺はペルルをの頭を叩こうとした
俺が叩こうとしたのを察したペルルがいち早く避けた
そのせいでかバランスを崩したペルルがメランから落ちそうになった
メランがあわてて体制を立て直すが、間に合わない
俺は思わず目をつぶった
だが、ペルルは
「わー 危なかった もう、びっくりしたじゃない!」
ペルルはけがの一つもなく戻ってきた
俺とメランはお互い顔を見合わせた
何がどうなったんだ?