第16話 ペルルの覚醒
暴れだした黄金の怪鳥に俺とペルルは戸惑ってしまう
視覚を奪っているから、周りが見えていない
そのせいで大切な卵を踏みつけてしまう恐れがある
これは早めに対処しないとな
俺はふとペルルの方を向いた
ペルルの頭の上にキラキラ光るものが浮いていた
それはまさしく俺たちが求めていた黄金の怪鳥の卵だ
だが、なぜそんなところにあるのか
まさか と思いメランの方を向くとメランはゆっくり頷いている
メランには、黒い手が見えていた
ペルルの中にいる悪魔のせいなのか?
たまにこうして助けてくれることがあるが、中の魔物は何を考えているのだろう
宙に浮いている卵は、ゆっくりとペルルの手のひらに降りてきた
大きさ的にはそこまで大きくはないが、確かに金色に輝いている
メランによるとこの金色の卵は高値で取引されているのだとか
でも、今は特段お金に困っているわけでもないし、そのままギルドへもっていっても良さそうだな
黄金の怪鳥自体を倒さなくても、十分な強さが認められるのだとか
俺とペルルの冒険者カードがピロンッ と鳴った
更新されたか
見てみると、Aランクの試練クリア と表示されていた
ところで、何か忘れているような気がしなくもないが思い出せないということは大したことない事だったか
俺たちはギルドへ向かい、Aランクの試練を達成したことを伝えることにした
メランに乗ってギルドへ向かっている途中、俺の冒険者カードが震えた
電話だ もちろん相手はあの人しかない
「もしもし?」
「おお、ユウ殿か。 こちらは王様だが進捗はどんなもんだい?」
そろそろ気になる頃かと思っていたところだ
俺は精霊と出会い、今さっきAランクの試練を突破したと伝えた
「おう、それは見事だな。 我が娘はそれほどまでに成長したのか! さすが我が娘だ!」
王様は、自分の娘をべた褒めしている
なるほどな この父ありのこの子ありってことか
「それで、本題なんだが……」
これが本題じゃないんかーい!
俺は心の中で突っ込みを入れた
しかし、やけに真剣そうな話だ
「破壊神と一緒にいた少女の話なのだが――」
カルディアが何かあったのか!?
俺は途端に心配になってきた
メランも静かに話を聞いている
「あれからもう何度か治療師や医師が調べたそうで、その結果不思議なことが分かったんじゃ」
不思議なこと?
俺は唾を飲み込んで、よくよく耳を澄ませる
「あの少女には三種類の血が混ざっていたんじゃ」
三種類の血!?
「どんなものかは現在調査中とのことだが、このことはユウ殿にも伝えておいた方がいいのではないかと思ってな」
「わざわざありがとうございます」
俺は素直に礼を言った
でも、俺の心は晴れなかった
「心配するでない。 我が治療師と医師は優れた者しか集めておらん。 じきに答えも出ることじゃろう」
王様が励ましてくれて、少しだけ元気が出た
今俺がカルディアにできることはない
ここは医師や治療師に任せておこう
「それでは、娘のことよろしく頼むぞ。 ではな」
電話は切れた
カルディアのことも気になるが、今目の前のことを片付けないと
俺は気合を入れるため、自分の両頬を叩いた
すると、ペルルが俺の頬を思い切り叩いてきた
「いきなり何をするんだ!」
俺はペルルに対して怒った
「え、だって自分の頬を叩いてたから叩いてほしいのかなって思って……」
は? 何を言ってるんだこいつは
確かにペルルみたいな子に叩いてほしいという個性派集団は探せばいるかもしれない
が、俺は断じてそっち方面ではない
「今のは気合を入れるために叩いただけであって、別に叩きたくて叩いたわけじゃないからな」
俺がそう言うと、ペルルがきょとんとした顔で
「変なの」
と、一言だけ言った
謝れよーー!!
まあ、そんなこんなでギルドにたどり着いた俺達
ギルドに入ってすぐに、ペルルがまるでバーゲンの始まりかと思うくらいの勢いで、受付に向かっていった
おいおい、そんなに焦らなくても、Aランクの試練はクリアしてるんだからもうちょっとおとなしくいこうぜ
「ほら! ユウも早く早く!!」
先に受付についたペルルが俺のことを急かしてくる
そんなに急いで何があるっていうんだ
「ああ、Aランクの試練の合格者様ですね。 少々お待ちください」
受付の人は、一度奥へ引っ込んでいった
しばらくすると、また戻ってきた
「はい、お待たせしました。 お二人様ですね 念のため冒険者カードの提示をお願いします」
俺とペルルは受付の人に冒険者カードを見せた
「はい、ありがとうございます。 Aランクの試練クリアおめでとうございます。 これで晴れて立派な冒険者の一人です。 ですが、油断は禁物ですよ? Aランクになるとできることも増えるため、より高難易度のものと戦う必要が出てくるかもしれませんので、十分に気を付けて行動してください」
俺とペルルの冒険者カードが一瞬光った
前にBと書いていたところが、今はAになっていた
やることも終わったしこれからどうしようかと考えていると、どこかで見た三人組が絡んできた
「俺らのこと、覚えてっか?」
「まあ、そんな女の子たちに囲まれてちゃあ、頭も悪くなるわなあ」
「前は俺達似たような奴隷だったのになあ どこで変わっちまったんだろうな」
思い出した
こいつら俺が奴隷として生きてた頃に、何かと絡んできた三人組だ
話から察するに、自分たちよりも後に入ったのに先に出たことに対して怒っているのだろう
全く、しょうもない
「金、出せや」
三人組の一人が言った
何だ、金目当てか
それくらいなら、別にどうってことはない
俺が金を出そうとすると、ペルルが止めてきた
どうしたんだ?
「ああん? 嬢ちゃんには関係ねえよ 引っ込んでな」
男にそう言われても一歩も引かないペルル
直立不動で立っている
「退けって言ってんだろ!!」
男の一人がペルルに殴り掛かろうとした
その時、メランが一言 「あ」 と言った
その瞬間、三人組の一人が壁にたたきつけられた
あまりの衝撃音にギルド内がざわつきだした
「てめえ、何してくれてんだ!」
残りの男の一人がペルルの胸倉をつかんで、持ち上げた
だが、その男の方がペルルよりも上の高さでもがき苦しんでいた
そしてそのまま、気を失い堕ちた
「ひ、ひいいいいい!!」
一部始終を見ていた最後の一人が、倒れている二人を抱え出て行った
そして、男たちが出て行ったあとペルルも倒れた
これはメランに聞くまでもない 魔物の仕業だ
俺は壁の修理代としてG金貨を数枚置いて、ギルドを後にした