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第10話 火の精霊

「だが、一つ方法がある。 この世界には五つの精霊がいる。 その精霊たちに協力してもらえば姫様の中の魔物だけを浄化することができる」


そうは言っても、ペルルに害がないなら放っておいてもいいのでは?


「それも一度は考えた。 だがその案はあまりにも危険すぎる。 今は姫様の方が力が上だからまだ外に出てきていないだけで、もし魔物の力が上になったら姫様が悪魔化する可能性がある。 それだけは何としてでも避けたい。 騎士としてでも、人間としてでも」


リガン騎士団長はいたって真面目な顔で言った

やるときはホントにやる


「あっしとリガンは他にやることがある。 だからついていくことはできないがいつでも連絡を取れるようにしておくから、心配は無用だ」


ウィルキー副団長は俺の冒険者カードをいつの間にか取っており、勝手にリガン騎士団長とウィルキー副団長の連絡先を登録した

全く、いつの間に取ったんだ?


「このことは他言無用で頼むぞ。 もちろん姫様にも、な」


と、リガン騎士団長は釘を刺してきた

いうはずがない、言えるわけがない


俺達はリガン騎士団長とウィルキー副団長と別れた

とりあえずは、ペルルを起こして何とか五つの精霊と会わないといけない


「あいつらに任せていいのか?」


完全にユウたちが出て行ったのを見たリガンが呟いた


「今は信じて待つしかない。 それよりもあっしらにはもっと重大な件があるじゃないか」


そう言ったウィルキーは、どこからか紙の束を取り出した

リガンもその紙の束をみて、難しい顔をしていた

その紙の束の表紙には『アペイロン崩壊阻止計画』と書かれていた


「さて、一体どうしたものか……」


ウィルキーは頭を抱えた

リガンは一人、大きなため息をついた


俺達が戻っても、まだ眠っているペルルを起こすことにした


「んんん…… まだ眠いよ……」


まだそんなことを言っているのか

いい加減に起こさないと、手遅れになってしまうかもしれない


「ほら、早く起きろよ。 起きないと黄金パンもう買ってあげないぞ」


俺がそう言ったとき、ペルルはものすごい勢いで起き上がった

そんなに好きなのか、黄金パンが


「黄金パンは? どこなの?」


ペルルが起き、周りをきょろきょろ見回す


「黄金パンはここにはないぞ」


俺がペルルにそう告げると、また寝ようとしたので止めた


「分かった分かった。 ちゃんと起きたら買ってやるから、起きてくれ」


俺が仕方なく言うと、ペルルはだるそうに起きた

ホント、こいつ一回ぶん殴ってやりたい


ウィルキー副団長によると火の精霊は火山の中に、水の精霊は深海に、地の精霊は地中深くにいると言っていた

光と闇の精霊は幻の泉に現れるというかなりレアな精霊だ

精霊についてはまだまだ分かっていないことが多いため、あまり刺激しないようにともいわれた


「幻の泉に関しては、当分先の話だな。 まずは火と水と地の精霊から見つけるのが先決だろう」


メランがそう言った

幻の泉について知りたかったが、ここで聞くのもどうかと思ったため聞かなかった


「ここアペイロンで火山と言えば、一つしかない。 カロル火山だ。 だが、最近活性化してきて危ないって聞いたが大丈夫なのか?」


結構やばいところなのか

そんなところに俺たちは行かないといけないのか

なんか、複雑な気持ちになるな


こうして、メランに乗ってカロル火山までやってきたわけだが


「思った以上だったな」


「ああ、ここまでとは我も知らなかった」

カロル火山は、予想の何倍もこえるくらいに活性化してた

このまま入れば、確実に無事では済まないだろう

中に入らなければ、精霊には会えないから何とかして入らないと

一体どうしたものか……


ん? そういえばシスターがなんか気になる魔法を使っていたな

もしかしたら俺にもあれが使えるかもしれないな


「光の精霊よ、今一度顕現し我に光の力を与え給え!」


俺がそう唱えると、俺達を囲むように光の球体ができた

シスターのものよりもいくらか小さいが、ちゃんとできてよかった


「これ大丈夫なんでしょうね?」


ペルルが不安そうに聞いてくる

元はというとお前のためなんだからな


俺達は光の球体に包まれながら、火山の中へ降りていった

最初は順調に降りていっていた

だが、事件は途中で起きた


ミシッ


「「あ」」


決して鳴っちゃいけない音が聞こえた

よくよく見てみると、光の球体に少しだがヒビが入っていた

これは普通にヤバイかもしれない


「ちょっと!! 本当に大丈夫なんでしょうね!! 今嫌な音がしたのだけど!?」


ペルルが焦り始めた

ちっ ペルルにも聞こえてしまったか

めんどくさくなってきた

何とか持ってくれよ! おれの魔法!


俺は全神経を球体に集中させる

そうして下へ下へ降りていくうち、ようやく広いところに出てきた

地面に着いたときに、タイミングよく光の球体が壊れた

俺は、ひとまずホッとした

地面は意外と涼しかった


「うおおおおおおおおおおおお!!!」


どこからか男の声が聞こえた

声と場所からしてここにいるということは、火の精霊か

それにしても、何事だろう

俺達は声がした方へ行ってみることにした


声がしたと思われる場所では、おそらく火の精霊なのだろう

頭が燃えていて、全身が赤い姿でいかにも熱そうなやつだった

火の精霊は一人で何かを作っているようだった


「うわあああああああああああ!!!」


え、うるさ

こんなに近くにいるのに気づかないなんてあるか?

俺は意を決し声をかけてみることにした


「あ、あのー 君が火の精霊かな?」


「うわっ!! なんだ貴様らたちは! どこから入ってきたんだ!!」


思った以上に驚いて、こっちがビックリした


「何してたの?」


「き、貴様らには関係ないだろ! 行った行った!」


火の精霊は俺達を追い払うような仕草をした

それを見たペルルが


「誰かへの贈り物?」


と、かなり切り込んだ話をした


「は、はあ!? ち、ちげぇし!! 何言ってんだよ!」


ん? なんか焦ってる?

これは図星なのか?


「誰にそのプレゼントを贈るの?」


ペルルがめちゃくちゃ責めている

本人は悪気はないんだろうが、かなり効いているみたいだった


「ねえねえ、誰に送るの? 頭文字だけでいいから!」


「ああああ!! 分かった分かった! 教えるから静かにしろ!」


ついに根負けしたか

少女の勢い、恐るべし


「俺はファイロだ。 貴様たちが思っている通り火の精霊の一人だ。 俺は水の精霊にこのプレゼントをあげようと思っているんだが、貴様らが来たせいで全然集中できないじゃないか!」


と、自己紹介と現状を話しながら俺たちに逆切れしてきた

その件については謝るよ


だが、それと俺たちがここに来た理由は別だ

俺は火の精霊の耳元で話す


「…………ということで、君に頼みたいんだけどどうかな?」


「だめだ、俺は水の精霊にあげるプレゼント作りで忙しいって言ってるだろ。 そんなことで俺の貴重な時間を割くことはできない」


やはりそうか

ここまで簡単に断られたら、何もできないじゃないか

困ったな、これからどうしようか


てか、ファイロは何を作っているんだ?

水の精霊に送るって言ってるけど、物については全く教えてくれない


「ねえ、何を作っているの? 俺たちにできることがあれば何でも言ってくれ」


「貴様らにできること? うーん……」


ファイロはしばらく考えていたが、ふと思い出したかのように言う


「そうだ 炎の精霊王のところへ行って、そいつの飼っている犬のケルベロスの毛を十本ほど取ってこい」


何だ、その命令口調は

まあいい これで協力してくれるかもしれないんだ

ここは黙っていうことを聞いておこう


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