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第4話 仲間ができた

 王都から戻ると、助けた女の子は起きて食べ物にがっついていた

 お腹が空いていたのか

 ボロボロだった服もきれいなワンピース調の服になっていた

 きれいになった女の子の近くには、大量のお皿が乱雑に置いてあった

 一体、小さい体のどこにこの量が入るんだ?

 お金とかは大丈夫そうだけれども、コック的な人が不気味なほどに笑顔だった

 ちょっとは空気を読んだらどうだ……

 

「君、名前は?」

 

 俺は驚かせないよう声のトーンを落としつつ、女の子に名前を聞いた

 

「ふぁるひあでふ」

 

 う……

 ごめん、今のは俺が悪かった

 口の中のものを飲み込んでから、話してもらうことにした

 

「ん…… 私はカルディアって言うの。 見ず知らずの私を助けてくれてありがとう、勇者様」

 

 あ そうだ 俺、勇者になったんだった

 それはともかく、カルディアと名乗った女の子は、ここら辺ではあまり見ないきれいな長い金髪に青い瞳を持ち、なんでも噛み砕きそうな鋭い歯を持っていた

 

「カルディアちゃん、はどうして魔物に襲われそうになっていたの?  お父さんやお母さんは?」

 

 俺はカルディアに優しく問いかける

 一応小さな女の子だから、できる限り優しくね

 

「私ね、両親のことを全く覚えていないの。 両親の記憶だけ、ポッカリ穴が空いているみたいで…… 気がついたら魔物と一緒にいました。 私、怖くて怖くて夜のうちにその場から逃げ出したんです。 だけど、見張りに見つかっちゃって、それから一心不乱に走っていたらここにたどり着いたんです」

 

 うーん

 これはまためんどくさい、いや大変なことになったな

 

「ねえ、勇者様」

 

 カルディアが、甘えた声で俺を勇者様と呼ぶ

 

「俺は別に勇者じゃないんだ。 確かに勇者の剣を抜いたから、そう呼ばれても仕方がないのかもしれない。 だからって別に改まって勇者なんて呼ばなくても、普通にユウって呼んでもらって構わないよ」

 

「じゃあ、ユウさんって呼びますね。 ユウさんはこの国に魔王が復活したのはもちろん知ってますよね?」

 

 王様から話は聞いている

 別に俺自身が何かされたって訳じゃないけども、王様から直々に討伐を頼まれちゃったからには引き受けないとね

 倒せるかどうかは別としてだけど

 

「そのせいで、普段は大人しい魔物も活発化しちゃったんです」

 

 なるほど

 魔王といえば、魔物達の王だからな

 魔物達が盛り上がったり騒いだりするのも無理はない

 

「その魔王を倒すためにユウさんは魔王討伐に行くんですよね?」

 

 ん?  なんか嫌な予感がする

 

「あの⋯⋯ その魔王討伐に私も連れて行ってはもらえないでしょうか?」

 

 ほらきた

 勇者様のお役に立ちたい!  とかそんな所だろ

 助けてもらった恩返し!  とか言い出しそうだ


 いや、待てよ

 今考えると、この超絶美少女と二人きりになるってことか?

 それもあながち悪くはないかもしれないなァ!

 

「んんっ 仕方ない。 そこまで言うのなら連れていくのを許可しよう。 だけど、俺も強くはないからそれだけは覚えておいて」

 

 自分で言っておいて悲しくなってくる

 女の子に、こんなこと言うのもどうかと思うけど

 でも、この勇者の剣があれば魔王討伐なんて楽勝だろ

 それにしても魔物を初めて倒した時の威力といえば、凄まじかったなぁ

 

「じゃあ、今日はもう遅いし明日の朝出発しよう」

 

 帰るとき、ギルドの人の視線がめちゃめちゃ刺さる……

 す、すいません 俺がこの大食いを助けたばかりに

 お金はいつかきっと返しますので!


 その後、俺はギルド支給のテントが魔物たちによって壊されたため、適当に宿を借りカルディアと一夜を過ごした

 ベ、別に変な意味じゃないからね! 

 誤解されたら困るから先に言っておくよ?

 

 翌日

 宿を後にした俺とカルディアは、魔王城へ向かうため街を出ることになった

 街を出る時に、最初にお世話になった教会へ挨拶でもと思っていたのだが、不思議なことになくなっていた

 おかしい 前はここにあったはずなんだけど⋯⋯

 

「ユウさん?  どうかしました?」

 

 カルディアが服の裾を引っ張ってくる

 

「いや、なんでもないよ」

 

 ま、考えても答えは出ないか

 今は魔王討伐に集中しないと

 

「よし、じゃあ改めて出発だ!」

 

 俺たちは意気揚々と街を出た

 そんな二人を、物陰からこっそりと覗く人影があった

 

 この街唯一の移動手段の馬車が、あの魔物達の騒動で壊されてしまっていた

 仕方なく徒歩で向かわざるを得ない

 だが、いくらなんでも魔王城まで徒歩はきつい

 何か他の移動手段を考えないと

 

「そういえば、カルディア。 勇者の剣って知ってる?」

 

 俺はふと思い立ち、カルディアに聞いた

 

「知ってるも何も、知らない人はこの世界にいませんよ!」

 

 カルディアが勢いよくそう言う

 じゃあ、俺は世界にいないことになるのか⋯⋯

 一人、自虐ネタを挟む

 そうとは知らず、カルディアは昔話のように話しだした

 

「今から数千年前、この世界は魔王によって支配されていました。 人々は皆苦しみ、嘆いていました。 この状態を悪く見た一人の青年が、一人で魔王を倒すと言いました。 みんな青年にも無理だと言いましたが、青年の目は本気でした。青年は本当に一人で、剣一本で魔王と戦っていました」

 

 その青年とやら、よくやるなぁ

 俺だったら絶対にしないというかできないけど

 

「しかし魔王は強く、人間一人の力では到底かなう敵ではありませんでした。 それでも青年は、諦めず何度も何度も深い傷を負いながらも魔王に挑み続けました。 長く続いた魔王との戦いの末、ついに青年は魔王を封印することに成功しました。 青年のおかげで世界は救われたのです。 その功績を称え、その青年が持つ剣を勇者の剣として青年が最期に息絶えた森の中に立てていたのでした」

 

 長々とカルディアは昔話のように話し終えた

 つまり、俺の持つこの剣は魔王を倒した剣だって言うことか

 だとしたら、めちゃくちゃ重くね?

 

「す、すみません!  長々と話してしまって」

 

「いや、俺もあんまり知らなかったから。 詳しく聞けて良かったよ」

 

 俺は、すかさずカルディアにフォローを入れる

 これくらいは知ってて当たり前なのかなぁ

 てか、魔王は封印されたって言ってたけどもそう簡単に復活できるものなのか?

 

 物思いにふけっている俺とカルディアの上を、黒い大きな影が横切った

 その大きな影は、俺の目の前に降り立った

 

「ひ、ひぃ!」

 

 カルディアが、女の子らしい悲鳴をあげた

 俺も、全身に鳥肌が立ち悲鳴をあげそうになった


 それもそう、俺達の目の前に全身が真っ黒のドラゴンがいたからだ

 威圧感が尋常じゃない 体からあふれんばかりのオーラが出ている

 俺とカルディアの体が、ビリビリと震える

 

「お主が勇者か。 勇者が再臨したと聞いたものでな。 一度手合わせ願いたい」

 

 ドラゴンはそう言った 確かにそう言った

 は?  俺がドラゴンと戦えってこと?

 いやいやいや、無理に決まってるじゃんか

 百万回やっても百万回負ける自信しかないんだけど

 なんでか、ドラゴンの方はやる気満々みたいだけど

 

「どうした?  かかってこんのか?  勇者のくせに怖気付いたのか?」

 

 おいおいおい これでもかというくらい煽ってくんじゃん

 やるしかないのか……

 カルディアは、俺から遠く離れたところでガッツポーズをしていた

 よーし、やるか! 

 かわい子ちゃんに応援されちゃあ、やるしかないっしょ!

 こうして俺は、ドラゴンと一対一の戦いを始めるのだった

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