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第二章 第1話 王族の願い

俺は、王様が言ったことをオウム返しした


「俺が、姫様の教育係に? 一体なぜですか?」


「ユウ殿はあの破壊神 ヘレスを討伐したのだ。 そんなお主になら、それだけ強いお主なら我が娘を託してもよい

かと思ったのじゃ」


そうか 

俺は全く覚えていないが、そういうことになってるんだった

その功績が称えられたのだろう

覚えてないことは黙っておこう


「改めて紹介しよう。 我が娘、エスコルピオ=パシリスだ」


そう紹介された女の子は、瞳は真珠のように白く透き通って顔だちもどこか幼さを残しつつ凛とした感じだった

背丈は俺よりも小さいが、それ以上の何かを持っている気がする


王女の俺を見る目が険しい

あまりよく思われていないみたいだ

これは幸先が不安だ


「お久しぶりです。 俺は星宮勇と言います。 気軽にユウと呼んでもらって構いません」


「そう、よろしく くそボケ」


え? 今 俺悪口言われた?

くそボケって言われた?

何で? 俺何かしたっけ?

身に覚えがない


「おい、いくら王女だからと言ってユウ様を侮辱するのは許さんぞ」


メランが少しイラついている

いくらイラっと来たとしても、王たちの前だ

ここはぐっとこらえてほしいものだ


「こら、勇者様になんて口の利き方をするか! 勇者様に謝らんか!」


王も怒った

娘がそんな口の利き方したら、そりゃ怒るか


「………… はいすみませんお父様」


王に怒られ、シュンとする王女

でも、相変わらず俺の顔を睨みつけたままだ

王女に嫌われるようなことしたのか?

俺が知らないうちに


「そうだ、ユウ殿 もう一度冒険者カードを貸してもらえないか?」


王に言われ、俺は冒険者カードを渡す


「この際だ。 もう一つ機能を開放しておいた方がよいと思ってな」


もう一つ開放してくれるのか!

どんなものなのか楽しみだ


「これで良しっと。 これでずいぶん使いやすくなったと思うぞ」


王はそう言って、俺に冒険者カードを返した

新しく追加された機能はっと……


「今回追加したのは、通信機能じゃ。 これで相手がどこにいようと冒険者カードを持っていればその相手と話すことができる。 儂も、ほれ」


王は俺に一枚のカードを見せた

俺が持っているカードとはちょっと違う

周りが金色に縁どられている


「このカードは王族のみが持つことを許されている特別なカードなのじゃ 残念ながら、ユウ殿に渡しているものとは違いすべての機能が開放されている優れモノじゃ」


お? 自慢か? 自慢なのか?

喧嘩なら買うぞ?

ま、嘘だけど

王族なら仕方ない


ん? ということはだな

王族が持っているということは、パシリス王女も持っているのか


「もちろん我が娘も持っておるぞ。 肌身離さず持っておくよう言ってあるからな」


それだけ大事な物なのか

そうか、自分の身分を示すのに必要だもんな

失くしたら大事になる

って、ギルドのお姉さんも言ってたな


「そこでだ。 本題に戻ろう」


そうだった

本題はパシリス王女の教育係になってほしいとのことだったな

具体的にはどうすればいいんだ?


「簡単な話だ。 娘に普通の暮らしを教えてほしいのだ」


普通の暮らし?

俺も普通の暮らしをしていた覚えはないんだけど

ずっと戦ってた気がするんだけども


「確かにユウ殿は他の人たちと比べて、普通の生活はしていないかもしれない。 だが、破壊神を倒した力を持つユウ殿になら娘を任せてもよいかと思ったのじゃ」


な、なるほどな

他のあまり信用できない者に娘は任せられないということか


「いつか王位を継ぐものとして、この国を守っていくにはこの国のことをよく知っておかないといけない。 だが、我が娘は好んで外に出る性格ではなく外の世界のことに疎いのだ」


それで、俺に頼んだ訳か

王女が俺を見る目が、さっきと変わってないんだが


「だから、ユウ殿が冒険者としてやってきたことを娘に教えてあげてほしいのだ」


王女は見事な作り笑いで、俺の顔を見ていた

雲行きが怪しくなってきたなあ


「だが、王族のまま外に出るのはいくら何でも危険だ。 名前を変える必要があるかもしれない。 新しく名前をつければ、王女だと知らない者は王女だと分からないようになるしな」


そんな便利な機能もあるのか!

確かに、王様が言うことも一理ある

もし、王族だとバレてしまったら周りが大騒ぎになる可能性があるだろうし

と、言われてもとっさに思いつくわけもなく


「うーん…… 真珠のように白く透き通る目、パール、 ペルルとかどうかな。 そんなにいる名前でも無いと思うんですけど」


俺がそう提案すると、王は目を大きく開いた


「ペルルか、いいんじゃないか」


王は俺が即考えた王女の名前を気に入ったみたいだった

王女の方もまんざらでもない様子だった

俺に対する目は相変わらず嫌そうな目だったがな


「決めたぞ! 我が娘の冒険者としての名前は ペルル だ! これから冒険者としてのペルルをよろしく頼んだぞ、ユウ殿!」


王も自分のことじゃないからか、気合十分だ

王女 じゃなくてペルルは王にばれないように、ため息をついた


「では、早速行きましょう! ペルル、これからよろしくな!」


俺は気分を上げるために、ペルルに話しかける


「何馴れ馴れしく話しかけてくるの? これでも王女よ? 下民ごときが私に話しかけないでもらえるかしら? これだから勇者は一人で十分なのよ」


勇者は一人で? どういうことだ?


「娘よ! その話は他言無用と言ったはずだが?」


王様がお怒りになられている

機密情報と言ったものだろうか

あまり、深く掘り下げない方が良さそうだ


「·······それについては謝ります。 ですが、こんなヘナチョコに私を任せるなんてお父様はどうかしてます!」


うっ……

ど正論なんだが……

だが、腐っても勇者だ

ここで王女だからと言って、なめられては困る

どちらが上か、はっきりさせないと


「おい、いくら王女だからと言っていい事と悪いことがあるぞ! 嫌なのは分かるがここは一つ言うことを聞いてくれませんか?」


だんだん尻つぼみになっていく自分に腹が立つ

どうしてはっきり言えないんだろうか

俺はまだ自分に自信が持てていないのだろうか


「わ、分かったわよ。 あんたがそこまで言うならいうこと聞いてやろうじゃないの」


え?

今ので納得してくれたの?

ま、まあ これでやっと話が進む


「では、改めて出発したいと思います! いいですか、王様?」


「お、おう そうだな。 あ、ユウ殿にだけ話がある。 少し残ってくれないか」


王に呼び止められた

また何かしてしまっただろうか

した覚えはないが


「は、はい 分かりました。 メラン、ペルルのことちょっと頼む」


俺がそう言うと、メランはあからさまに嫌そうな顔をした

少しの間だ、我慢してくれ


「それで、俺に用事というのはなんですか?」


「うむ、この地下であの少女が眠っている。 あの破壊神と共にいた少女だ」


カルディアのことだろうか

何か回りくどい言い方をするなあ


「そう、あの少女はどこか危険だ。 体全体から尋常じゃないほどの瘴気を放っていると治療師は言っていた。 国一番の治療師が言うのだから本当なのだろう。 始末してしまおうという案も出たほどだ」


カルディアを!?

べ、別にそこまでしなくてもいいだろうに


「杞憂かもしれないが、そこまでのものをあの少女は持っているのだ。 あの少女が目覚めるまではこちらで監視をつけさせてもらう。 ユウ殿には悪いが分かってくれ」


お、おう 分かった

カルディアには悪いがそう判断するのも王の責務なのだろう


こうして一抹の不安を抱えた俺は、王女ならぬペルルの教育係に任命された


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