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ユウとエウカリスの秘密のお茶会

気がつくと俺は不思議な空間にいた

本当にここがどこか分からない

周りは綺麗な花に囲まれている


「ここは?」


俺は誰もいないと思い、一人呟いた


「いらっしゃい」


声がした

声の主はエウカリスだった

いたのか


エウカリスは呑気に紅茶を飲んでいる

ご丁寧に俺の分まで用意してあるようだ


「あなたも飲む?」


エウカリスは聞いてきた

飲んでみたい気持ちはあるが、なんだか怖くもある


「私が飲んでるんだから、何も入ってないわよ」


そ、そうだよな

俺は覚悟を決め、紅茶に手をつける

なんだ、普通に美味いじゃないか

疑って損した


「ところでここはどこなんだ? なんで俺はこんなところにいるんだ?」


俺は気になっていることを全て聞くことにした

俺は中途半端が一番嫌いだ

教えてくれるのなら、全て教えてほしいものだ

俺がそう言うと、エウカリスは紅茶を一気に飲み干し話し出した


「ここはアペイロンからも神界からも隔絶された世界よ。 この場所にはあなたと私しかいないの」


「で、どうして俺はここに連れてこられたんだ?」


「私はあなたに伝えていなかったことが幾つかある。 それをこの場に来たら少しずつ話していこうと思うの。でも、ここで私に聞けることは一つだけよ?」


続けてエウカリスは言う


「ちなみにこの場所は来ようと思って来れるような簡単な場所では無いわ。 ユウの精神が落ち着いた時にここへ来ることができるの」


なるほど

ここはそんなに特殊な場所なのか


「それで、私に何が聞きたいの?」


エウカリスは俺の顔を覗き込むようにして言った

この女神、可愛すぎる


「さ、最初に気になっていたあの、女神の恩恵ってやつ? あれを教えてくれませんか?」


つい丁寧語になってしまった

だが、エウカリスはそんなの気にしないといった風に話し始める


「そうね、すっかり忘れていたわ。 あんなことがあったんだもの。 言うのを忘れてたってしょうがないわ」


「······」


俺は冷ややかな目でエウカリスを見た

俺はこの女神が心配になってきた

本当に大丈夫なんだろうな


「で、女神の恩恵の話よね? ユウに授けた女神の恩恵は全部で四つあるわ」


そう言ったエウカリスは、ユウにチョンっと触れた

すると、ユウ達の目の前に小さな画面が表示された

この表示されているのがエウカリスの言う女神の恩恵とやらなのだろう


「ん? 1、2、3······ あれ?」


俺は不思議なことに気づいた

一つ多いのだ

どう数えても画面に映っているのは五つだ

四つなわけが無い


「んん? 確かに一つ多いわね? 何なのかしら?」


エウカリスも異変に気づいたようだ


「ま、気にしてたら話は進まないわ。 とりあえず私がユウに授けた四つの恩恵について話すわね」


まず、一つ目

絶対防御 (ぜったいぼうぎょ)

不意打ちや闇討ちなど幅広く使える

初めての魔王戦でも大活躍した

だが、これにも難点があって防御できるダメージ量が決まっているらしい

まあ、成長と共に防御できるダメージ量が増えていくらしい


二つ目

飛躍の精神 (ひやくのせいしん)

一時的にすべての能力が上昇する

その代わり、体に大きな負担がかかってしまう

一時的というのは三十秒間らしく、終わると強烈な倦怠感が襲ってくる


三つ目

成長促進 (せいちょうそくしん)

これはその名の通り、成長スピードが他の人よりも早くなる

単純なものだが、非常に役立つものだ

俺の魔法の習得や体術がすぐに身についたのはこのおかげ

ただ、毒とかを受けるとその毒自体の成長を促進してしまうため、そこは注意が必要らしい

これは、毒耐性を持っていれば問題ないだろう


四つ目

言語習得 (げんごしゅうとく)

これも名前の通り、異世界の言語が分かるもの

多少言語に訛りがあっても、耳に入ってくるのはエウカリスによって修正されたもの

しかし、未知の生物や特殊な生物には効果がないかもしれないという

そこまでカバーしてないのか


「さて、私があなたに授けた女神の恩恵はこの四つよ。 一応五つ目も見ておきましょう」


エウカリスはそう言いながら、画面に顔を近づける


「んんん······· これは、文字化けしてて読めないわね。 何なのかしら? 私にも分からないわ」


怖いんだが

エウカリスにも分からない何かを持っている自分が怖くなってきた


自己嫌悪に陥りそうになる俺をエウカリスが励ますように言った


「大丈夫よ! 見た感じではそんなに危険なものじゃないみたいだし」


そうか? そう言われてもっと気になったんだが······


すると、俺の体が透けてきた

どうやら、エウカリスに一つ質問をしたから俺はこの場所にいられないのだそう


俺は何だか悲しくなってきた


「そんな悲しそうな顔をしないでよ また、時が来れば会えるわよ!」


エウカリスは元気に言ったが、表情はどこかくもり気味だった


「そういえば、これをユウにあげるわ」


エウカリスは俺に一個の石がついたペンダントをくれた


「これは?」


エウカリスが渡してきたペンダントは赤くひし形をしていた


「これは、神石(しんせき)と言って神界でしか取れないとっても貴重な物なの」


そんな高価な物をどうして俺に?

そんな疑問をエウカリスは一掃した


「あなたには、この世界で生き残ってほしいの! 初めに言った通り、私はあなたに普通の生活を求めた。 だけどあなたは私との約束を破って勇者となり危険な道を自ら進んでいく。 ユウには辛い、苦しい思いはしてほしくないの! 勇者なんてやめて平和な生活をしてほしいの!」


エウカリスにそう投げかけられたが、俺はキッパリ断った


「俺はこの世界に必要とされている。 この世界の人達に信頼、信用されているんだ。 そして、この世界にはまだまだ困っている人達がいることだろう。 その人達を俺は助けてあげないといけない」


「で、でもユウがしなくても誰かがしてくれるわよ! ユウだけが頑張らなくても他の人に少しは頼っても──」


「それじゃあ、ダメなんだ!」


俺は声を荒らげて言った


「どうして、他人のためにそんなに一生懸命になれるの?」


エウカリスは優しい声で俺に言う

声を荒らげたのはまずかっただろうか


「他人のためだからだよ。 前に生きていた世界では自分のことで精いっぱいだった。 だけど、この異世界では違ったんだ。 あの女の子を助けるために死んだことも、今では後悔していない。 むしろ誇らしく思えるんだ。  普通の人とは違う、ちょっと変わった人助けの仕方だったかもしれない。 でも、俺は安心したんだ。 自分は死んでしまったけども、あの女の子が助かったことにホッとしている自分も心の中にいた。 自分は人を助けることができる、世界に貢献することができる、そう思うとわくわくが止まらないんだ!」


俺は、長文を一気に話し終えた

息が切れているが、続けて言う


「俺を、元の世界 アペイロンに戻してくれないか?」


俺がそういうと、エウカリスは一瞬だけ悲しそうな顔をした

だが、すぐに笑顔になって


「そう、頑張って」


と、一言だけ伝えて魔法陣を発動させた

なんか、あっけないな


「では、ユウさんを元の世界 アペイロンに戻します」


ユウは魔法陣に乗り、アペイロンに戻った


エウカリスはユウがいなくなった世界で、一人空を見上げていた


「君はきっと後悔するよ。 これからもずっと……」


そう一人でつぶやくと、スッと消えた


誰も居なくなった世界でカロスがいた


「あの子も大変だな……」


カロスは小さくため息をつく


「ま、楽しんでるならいいか」


そう言い、カロスはどこかへ歩いて行った

どこへ行ったのか、それは本当の神のみぞ知るところである


これで第一章はおしまいです

ですが、この後もユウたちの冒険は続いていきます

第二章も出来次第投稿するので温かい目で見守っててください

ここまで読んで下さりありがとうございます!

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