表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/73

第3話 俺が勇者?

 俺はゲートから現れた魔物達から逃げ回っていた

 途中、足を掴まれたり、服を引っかかれたりしたが命に関わる怪我はしなくて、ほんと良かった

 何とか魔物たちを撒いて、街に戻ることができ一安心だ

 

 安心したのも、つかの間

 戻ってきた街にも、多数の魔物が暴れてまわっていた

 戦える者は戦っていたが、久しく魔物と戦っていなかったのだろう 押されている

 一体この世界で何が起きているんだ?

 長老やエウカリスの言っていた通り、この街は平和じゃなかったのか?

 

 そんなことを考えていると、一人の女の子が魔物に襲われそうになっていた

 女の子は遠いところから来たのか、ボロボロの衣服を身に着けていた

 その子の服と顔は泥や傷だらけだった

 魔物は女の子に何か言っているようだが、ここからじゃ遠すぎて聞こえない

 女の子は、この街の中で一番大きな森へ魔物に追われるがまま、入っていってしまった

 

 俺は森を見て、転生前にエウカリスが言っていたことを思い出した

 

 (あなたがこれから行く街には、一際目立つ大きな森があるんです。 その中には絶対に入らないでくださいね!  絶対にですよ! )

 

 そうは言われたが⋯⋯

 あの女の子は、魔物に襲われ困っていそうだった

 男として、助けない訳にはいかないだろ!

 こんな状況で放っておくわけにはいかない

 

 エウカリスさん、ごめんなさいっ!

 エウカリスに心の中で謝って、森へ入った

 

 森の中は、木に囲まれ鬱蒼としていたが、特に変わった様子はなかった

 静かで時間があれば、森林浴とかもしてみたくなってくる


 森の奥から叫び声が聞こえた

 おそらくあの女の子の声だろう

 俺は声を頼りに、森の奥へと進んだ

 

 女の子は手に持つ短剣を魔物に向かってブンブン振り回していたが、全く当たっていない

 魔物も女の子にはあまり近寄ってこない

 魔物は何がしたいのだろうか

 女の子は素人目で見ても、戦い慣れていないように見える

 そんな俺も人の事は言えないが

 

 のんきに考えているとき、魔物が女の子に飛びかかった

 女の子はいやいやとひたすらに首を横に振っている

 何か武器はないかと探していると、不自然に置いてある岩に一本の剣が刺さっているのを見つけた

 こういうのってだいたい抜けないんだよな、と思いながらも両手で持ち、力を入れる

 

 スポツ と間抜けな音を立ててその剣は抜けた

 抜けてしまった

 慌てて戻そうとするがうまく刺さらない


 「……」

 

 抜けてしまったものは仕方ない

 俺はその剣を魔物に向かって真っすぐ


振り下ろした

 その時、ものすごい爆風が起き魔物は散った

 魔物は散り際に何か言った気がしたが、剣を振った時の爆風で聞こえなかった

 剣を振った爆風により、魔物の周りの木々も何本か巻き込んでしまい、メキメキと音を立てて倒れる

 

 やばいやばいやばい!

 やってしまったとばかりに、その場にそっと剣を置き、立ち去ろうとした

 そんな俺の服を、あの女の子が引っ張って止めた

 その女の子を顔を見て、俺はこう思った

 

 この子は百人中、百人全員が超絶美少女と呼ぶ可愛さだと

 

 その女の子は、俺のことを (勇者様) と呼び上目遣いで涙ぐみながら震える声で

 

「もう少し、早く、来なさいよ バカ……」

 

 と言って気を失った

 

 なんなんだ?

 なんかすごい言いようだな

 早くても遅くても助けたんだから、お礼の一つくらいあってもいいような って気を失ってる子に言っても意味無いか

 てか、助けた人にバカはないだろバカは

 

 とりあえず気を失っている女の子は放ってはおけず、一応ギルドでみてもらうことにした

 俺は女の子を背負い、ギルドへ戻る

 軽っ!  体重が無いみたいだ

 いや、実際はあるんだろうけど

 

 ギルドへ戻り、女の子を休ませると長老が呼び止めてきた

 長老は魔物が現れた時に、安全な場所へ避難していたようだ

 良かったような、ずるいような 不思議な感じだ

 まあ、長老ともなればそれぐらいはあるか

 

「おお!  その剣は、まさしく勇者の剣ではありませんか!」

 

 長老が、出せる最大の声で言った

 ユウの腰には、森に置いてきたはずのあの剣がぶら下がっていた

 どうしてここに?

 

「あなたが勇者様でしたか!  これは王様にお知らせしないと!  一緒に来てくださいますね、勇者様(・・・)

 

 と、強引に迫られ俺は王都へ向かうことになった

 一本の剣でずいぶん大きなことになってしまったな

 それよりも、あの超絶可愛い女の子の方が心配になる

 大丈夫だろうか

 

 長老に連れられるがまま、馬車で王都へ行き、城に入る

 王都でも魔物が現れているようだ

 街だけでなく国全体に魔物が出現しているっていうのか?

 そして俺は城の中へ入り、王様の前に案内された

 

 目の前には、立派なヒゲをこしらえた王が座っていた

 とても威厳があり、王で間違いないだろう

 

「お主が勇者か。 ふむ、その腰にある剣は紛れもなく勇者の剣であるな」

 

 王のエスコルピオ=バシレウス三世は、俺の腰にぶら下がっている剣を見ながら言う

 

「勇者殿、お主には復活した魔王を討ち滅ぼして欲しいのだ」

 

 待て待て待て

 なんか壮大な話になってきたぞ?

 

「この国に魔物が現れたのは何百年も前に封印された魔王が復活したからだ。そしてお主の持つ勇者の剣は勇者にしか抜けない伝説の剣。 その剣を抜いたお主になら、いやお主にしか魔王は倒せないのだ。 どうか頼む。 この国を救ってはくれないだろうか」

 

 王が俺に頭を下げた

 それはそれは深々と丁寧に

 

 確かに、勇者の剣を抜いたのは俺だ

 だからといって、魔王を倒せとなると話は変わってくる

 それより何より、戦ったことなんて一度もないんだが

 フリーター 無職が魔王を倒したって話聞いたことあるか?

 そんな俺が魔王と戦うなんて無茶にも程がある

 

 そんなことを考えている間も、王は頭を下げ続けていた

 どうやら承諾するまで頭を上げてはくれないらしい

 俺は小さく息を吐いた


「分かりましたから、顔を上げてください。 王様」

 

 そう言うと、王は勢いよく顔を上げた

 

「ということはつまり?」

 

 王が聞いてきた

 俺は息を飲み、言った

 言うしか無かった

 

「……魔王討伐に行かせてもらいます」

 

 王はホッと胸を撫で下ろした

 安心しているところ悪いけど、倒せるかどうかは別の話ね

 倒せなかったらそこまでってことで

 問題は、この勇者の剣がどこまで使えるか

 それが、魔王を倒せるかどうかの決定打になる

 

「では、勇者よ。 お主が必ずや、憎き魔王を倒しこの国を救ってくれることを、ここで祈って待っている。 国を代表して言わせてもらおう」

 

 そうでございますか⋯⋯

 この異世界では、スローライフできるって聞いたんだけど

 あの時、森に入っていなければスローライフできていたのかもしれないけど、仕方ないか

 てか、また女の子を助けたせいでめんどくさいことになってない!?


 ま、これも悪くはないかもしれないな

 心躍る冒険も異世界ならでは って感じだし!

 

 王都から戻った俺は、ギルドへ戻ってあの超絶美少女の様子を見に行くことにした

 誰かに悪いことされてないといいけど 

 べ、別に俺の知り合いとかじゃないけども、気になるだけだからな!

良かったら評価の方お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ