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第37話 龍の盾

眠りから覚めようとしているのは、四炎龍の中で一番危ないといわれている邪炎龍 別名 死龍と呼ばれている

昔のアペイロン大戦争では、一番犠牲を出した恐るべき龍だ

空を飛べば死の霧を撒き、一度吠えれば生き物はきれいさっぱり消滅する


「まだ完全に目覚めてはいないが、このまま放っておくと最悪世界が滅びかねない。 再封印をする必要があるんだ」


メランがそう言ってうちにも、邪炎龍の石化が少しづつ解けかけている

パラパラと、上から石の破片が落ちてくる

いつまでもこうしているわけにはいかない


「再封印には、莫大な魔力と強力な魔法が必要になるのだ。 しかし、我には邪炎龍を再封印するほどの力はない。 確かに我には他の種族とは桁外れの魔力を持っている。 だが、それをもってしてもこの邪炎龍を再封印する力は持っていない。 莫大な魔力と強力な魔法、この二つを一度に使えるのがユウ様なのだ」


な、なんと!

俺にしかできないこと

それが今だっていうのか


「我がユウ様に魔法の呪文を教える。 ティファナには、もしもの時の補助をお願いする」


「わ、わかりました!」


ティファナが光の魔法で防御の姿勢をとる

メランが再封印の魔法の呪文を俺に教えてくれた

なかなか難しいことだ


「永きに眠りし者よ、目覚めるにはまだ早い、再びお眠りください」


俺はその呪文を、今まさに目覚めようとしている邪炎龍に向けて魔法を放った

力がどんどん吸い取られる感じがする

この感じ、気分が悪くなってくる


しばらくして、再び邪炎龍の石化が始まった

再封印は問題なくできたようだ

ホッとした俺は、力が抜けその場に座り込んだ

その場に座り込んだ俺を見て、ティファナが慌てて駆け寄ってきてくれた


「大丈夫だ。 ちょっとめまいがするくらいだから安心してくれ」


俺はティファナにそう告げた

まだ気分は優れなかったが、あまり心配かけたくないからな


「そうですか? ならいいんですけど」


ティファナは不思議そうな顔で俺を見てきた

メランがヴェルデ兄弟が落として行った龍の盾を拾い上げる

しかし、その表情は決して明るくはなかった

まだ、両親のことが気にかかるのだろう


「早く父親と母親に仲直りしてもらいたいよな」


俺は気分がだいぶ落ち着いたため、メランにそう言う


「そうだな、いつまででもあの調子のままじゃ我も気が気でない」


メランも心配になっている事だし、早く戻るか

それにしてもヴェルデ兄弟は面倒事しか運んでこないな

いつもメランに迷惑をかけているのだろう


龍の盾を取り戻した俺たちはトルミの元へ戻ることにした

まだ仲違いしているだろうと思い扉を開けると、そこにはトルミとミータが抱き合っていた

それも、両方とも笑顔でだ


「あれー?」


俺は思わず叫んだ

俺たちが帰ってきてることすら気づかずにトルミとミータは二人抱き合っていた


「あら、おかえり 早かったわね」


いやいやいや!

君たちの仲直りの速さよりかは明らかに遅いよ!

この短時間で何があったんだよ


「いやー 実を言うとだな、君たちが出ていった後僕は必死になんだったか思い出そうとしていたんだ。 必死に必死に考えてようやく思い出したんだ! このネックレスは、トルミと僕の結婚祝いに自分で買ったものだったんだ! いやー 自分で買ったものを思い出せないなんてとんだバカだよなぁ」


ペラペラと喋ってはいるがお前、とんでもないこと言ってるぞ

けど、トルミの機嫌が直ったみたいでよかったよかった


「ところでメラン、龍の盾は?」


「も、もちろんここに」


と、メランは龍の盾をミータとトルミに見せた


「メランにも大切な仲間ができてお父さんは嬉しいよ」


ミータが涙を流しながら言った

そこまで泣くことか


「昔はあんなにはっちゃけていたのに、今では立派な黒龍に育って私は嬉しいわ」


トルミが一人呟いた

そういえばミータも言っていたな

俺にはよくわからないが、両親からしてみればすごい成長なのだろう


「両親、か。 今頃何をしているのかな」


俺は残してきた両親のことをなぜか思い出していた

いつも怒ってばかりの父親 それをなだめる母親

いつの間にか俺の目から涙が零れ落ちていた


「ユウ? なんで泣いてるの?」


ティファナが心配したのか、声をかけてきた

俺は慌てて涙をぬぐい、ティファナに言う


「ううん、何でもないよ。 ただちょっと寂しくなっただけ。 だけどもう大丈夫、心配しないで」


ティファナは性格上、心配性な面があるからな

それがティファナのいいところともいえるのだけれど


「その龍の盾はメランが持つにふさわしいよ」


ミータはメランが持つ龍の盾を見ながら言った

ミータは俺の手を取って、トルミはティファナの手を取って


「ふつつかな娘ですが、どうぞよろしくお願いします」


と、言った

メランが顔を赤くして怒鳴っている


「もう、やめてよ!」


黒龍でも恥ずかしいのだろう

恥ずかしがるメラン以外の全員が笑っていた


「とにかく、あとは獅子の冠だけか」


顔を赤くしているメランを放っておいて、俺は話を進める


「獅子の冠なら獣人王国 カシャ―ムだろ」


カシャ―ム? 獣人王国?

それはどこにあるんだ?


「ここドラガオンから、北へずっと行った場所にある一つの王国だ。 そこには血気盛んな奴らがいるから気をつけろよ」


ミータがそう言った

それに対してトルミが、なぜか反論した


「ちょっと! なんでカシャ―ムに血気盛んな人たちがいることを知ってるの?」


「仕事で行っただけじゃないか。 別に大したことじゃないだろ?」


「嘘よ! どうせカシャ―ムの女たちとイチャイチャしてたんでしょ!」


メランはまた始まったとばかりに、大きくため息をつく


「何もそんな言い方しなくたっていいじゃないか!」


「そんな言い方にもなるわよ! あなたはいつもそうやって……」


「お前も少しは僕のことを信じてくれよ! あーだこーだ……」


また喧嘩し始めた 

ま、どうせすぐに仲直りするんだろうがな


俺たちは喧嘩している二人を放っておいて、獅子の冠を探しに北の獣人王国カシャ―ムへ向かうことにした





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