第34話 龍の里 ドラガオン
「カルディア!」
俺は思わずそう叫んでいた
目の前にはメランがいた
ああ、あれは夢だったのか
夢で本当に良かった
「ユウ様、ずいぶんとうなされていた様子でしたが大丈夫ですか?」
メランが心配して駆け寄ってきた
「カルディアか、懐かしいな。 今頃どこで何をしているんだろうな」
メランが悲しそうな目で遠くを見た
本当にカルディアはどこにいるのだろうか
「あ、ユウさん。 起きましたか?」
ティファナが俺のいる部屋へ入ってきた
ティファナが俺の額に頭を当ててきた
「……うん、だいぶ良くなったみたいね。ってどうしたの? 顔が赤くなってるけど」
そりゃあ、女の子にいきなり顔を近づけられたら緊張するに決まってるだろ
「べ、別にこれくらい大したことないよ」
「そう? ならいいんだけど」
ティファナはよくわかってないようだった
そんなことってあるか
「そうだ、メラン。 お前の故郷の龍の里について教えてくれよ」
「そ、そうだな もうそろそろ話してもいいのかもしれないな」
メランは笑いを我慢しながら答えた
「んんっ 我の故郷は父上が領主を務めているのだ。 上から黒龍、赤龍、白龍、緑龍の順で分けられている。 とは言っても口で言うよりも実際に見に行った方が早いだろう」
と言ってメランは立ち去ろうとする
「お、おい どこに行くんだよ!」
俺は一人どこかに行こうとするメランを呼び止めた
「決まってるじゃないか。 我の故郷、ドラガオンにだ!」
メランはそう言って、家の外へ出て行った
俺は慌てて追いかける
「ま、待てよ! メラン!」
外ではメランがドラゴン化し、待機していた
準備が早いことだ
「ユウさん! 早く行きましょうよ!」
ティファナも、もうメランの背中に乗っている
準備できてないのは俺だけってわけか
「分かったよ、行くから待てよ」
俺はナノスに別れの挨拶を言うためにナノスのもとへ行く
「いろいろと世話になったな ナノス」
「いえいえ、こちらこそですよ。 前に来たときは忙しくてあまり話せませんでしたし。 それの恩返しができたと思えば安いものですよ」
こいつはどこまでいいやつなんだ
俺の方が悪者に思えてしまう
「そうか、それならよかった。 それじゃあな。 村のこと大変だと思うけど頑張れよ」
「はい!」
そう言って俺たちはドワーフの村を離れた
「メラン、ドラガオンってここからどれくらい離れてるんだ?」
俺は気になって聞いた
「そうだな、いつも飛んでたから詳しい距離とかはわからないが、普通のドラゴンなら三日はかかるだろうな」
み、三日!?
そんなにかかるのか?
「まあ、我はドラゴン族最強の黒龍だぞ? そんな距離なんぞ半日で着くわ!」
そうなのか
とはいっても無理だけはしてほしくないな
ドラガオンへ向かう途中、二匹の龍に出会った
その二匹は緑龍で、ドラゴン族の中で一番力がないものと言われている
「またお前たちか、全くいつまでも懲りないやつらだな」
メランの知り合いのようだ
それもそうか、メランはドラゴン族最強なんだっけな
「そうだ! 俺たちは黒龍のことが大嫌いなんだ!」
「そうだそうだ! 黒龍が一番偉いのが俺たちは気に入らないんだ!」
はああ よく見ればまだまだ子供にも見える
「こいつらは何かと我にかかわってくる緑龍、ヴェルデ兄弟だ」
「おい、俺たちを無視するな!」
「そうだそうだ! 俺たちの話を聞け!」
緑龍のヴェルデ兄弟は騒ぎ立てている
「それで会うたびいつもいつも関わってくるが、今度は何の用だ」
メランはあきれたように言う
「メランを倒しに来た!」
また出来もしないことを……
「ユウ様、ティファナ、少し耳をふさいでおいてくれ」
「お おう、そうか」
メランの言う通りに俺とティファナは耳をふさいだ
メランは大きく息を吸った
「ゴワアアぁぁぁぁあ!!」
メランは大きく息を吐き、吠えた
「うわあああ!!」
ヴェルデ兄弟はメランの勢いに圧倒されて逃げ帰った
あいつらは本当に何がしたかったんだ?
「我の同種が迷惑をかけたようですまないな。 まあ、いつものことだ。 そこまで気にすることでもあるまい」
黒龍に勝てるわけもないのに、よくも何度も挑戦してくるものだ
そうこうしているうちに、メランの故郷ドラガオンに着いた
俺とティファナはメランから降りた
空にはドラゴンが飛んでおり、地には人型化したドラゴンたちが歩いていた
「我らドラゴン族は魔物とは違う。 我らドラゴン族は神聖な種族なのだ」
そうか、それはすごいことだ
「おお! メランじゃないか! 久しぶりだな!」
俺たちに赤龍が話しかけてきた
「おう、ルベルじゃないか!」
そういえば、初めてシデラスに行ったときに赤龍に出会ったな
それが、確かルベルとか言ってたか
ルベルは、メランの前できれいな土下座を見せた
「あの時は本当にすまなかった! 操られていたとはいえ、襲ってしまったことを深く謝罪申したい ん? あの時のかわいいお嬢ちゃんはどうしたんだ?」
おそらくカルディアのことを言っているのだろう
「実はヘルパトウではぐれてしまって、そのまま今まで会えていないんだ」
俺はそう言った
「そうか、ヘルパトウで か。 それは大変だな。 こちらも探してみるよ。 それじゃあ、俺も急いでいるからこのへんで! 本当にすまなかった」
「あ、ちょっと! 龍の盾について知ってないか?」
俺は帰りそうになるルベルを慌てて呼び止めた
「龍の盾? それならメランの方がよく知ってるんじゃないのか?」
「それがだな……」
メランは自分の親の夫婦喧嘩のことを話した
「そうか、メランも大変だな」
「全くだ」
メランは大きなため息をつきながら言った
「だが、残念なことに龍の盾についてはほとんど知らないんだ。 すまないな」
そう言ったルベルは、今度こそ去っていった
あまり知られてない物なのかもしれない
「では、我の実家に行くとするか」
メランが先導して俺たちはメランの実家へ行くことになった
「ただいまー」
メランが挨拶すると、中には一人の男がいた
いや、正確に言うと一匹のドラゴンがいた
「お、メランじゃないか! よく帰ってきたな!」
そこには、メランの父ミータがいた
くたびれたスーツに身を包み丸メガネをかけたドラゴンなんて、初めて見たかもしれない
「まあ、せっかく帰ってきたんだ。 ゆっくりしていきなさい」
ミータは俺たちにそう言い、お茶をすすめてきた
俺たちは椅子に座りすすめられたお茶を飲みつつ、ミータの話を聞くのだった
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