第33話 災厄の予兆
俺たちが炎鉱石を探している間、ナノスも探してくれていたようだ
経緯を言うと、ある商人から安値で買えたらしい
名前までは聞けなかったらしいが、高価な炎鉱石を安値で売ってくれたとなれば優しい人に違いない
「まだいるかもしれない! 探しに行ってくる!」
俺はティファナやメランが止めるのを聞かずに、外へ駆け出した
外に出ると子供たちに出会った
棒を振り回して遊んでいた男の子に俺は声をかけた
「なあ、ここら辺で物を売り歩いている人を見なくかった?」
「いや、見てないよ? その人がどうかしたの?」
見てないのか もう帰ってしまったのだろうか
「いや、見てないならいいんだ」
「そう? それならお兄ちゃん遊ぼうよ!」
子供たちが俺に詰め寄ってきた
いやあ 子供って本当に無邪気だなぁ
「ごめんね、今日は遊べないんだ。 今やってることが落ち着いたら、また遊んであげるから」
そこへ、ティファナが慌てた顔でやってきた
「ユウさん! 急に出て行かないでください! まだ完全に回復したわけじゃないんですから!」
ああ、そうだった
俺は前の戦いで倒れたんだった
そりゃ、心配されるか
子供たちに別れを告げ、ティファナに連れていかれるがままナノスの家に戻った
家ではメランとナノスが待っていた
「突然出て行くからびっくりしましたよ! 大丈夫ですか?」
「それで、炎鉱石を売っていた商人は見つかったのか?」
俺は、首を横に振る
いつかあったら、お礼をしないといけないな
どんな姿をしているのかはわからないけども
「どれくらいの値段がかかったかわからないが、とにかくありがとう」
俺はナノスから炎鉱石を渡してもらった
炎鉱石は紅く輝いており、炎のような形をしていた
「いやいや、前に来た時子供たちの相手をしてくれたお礼ですよ。 全然気にしないでください」
子供たちの相手をしただけで炎鉱石が貰えるなんて、とても申し訳なくなってくる
「さて、あとは竜の盾と獅子の冠だけだな。 みんな何か心当たりはあるか?」
俺はみんなに聞いた
ナノスは分からないと言った風に顔を横に振る
「あ、あのー ちょっといいか」
メランが珍しく、自信の無い声で言った
どうしたのだろう
「竜の盾は名前の通り、我が故郷ドラガオンにあるのだが。 少々問題があってだな⋯⋯」
なんか回りくどい言い方だな
何か理由があるのだろう
俺はメランに話の続きを促した
「確かに竜の盾は我も見たことがあるし、実際にこの手で触れたこともある。 なんと言ったって、竜の盾はドラゴン族最強の黒龍が持つ習わしになっているのだ」
あ、そういえばこいつドラゴン族最強だったな
すっかり忘れていた
「我が持っていないということは、今は我の実家にあるのだが⋯⋯ はぁ⋯⋯」
メランは大きなため息をついた
まだ話さないといけないか、という目でこちらを見てくる
あまり話したくないようだ
でも、こちらとしては話して貰いたい
それが、竜の盾をもらう手がかりになるかもしれないからだ
「メラン、頼む。 続きを話してくれないか?」
「⋯⋯うむ、わかった」
メランはいやいや返事をした
よっぽど嫌なのか?
「実はだな、我の母上と父上が竜の盾を持っているのだ。 しかし、その竜の盾が今どこにあるかまではさっぱりなのだ」
はい?
なんで分からないの?
メランの実家にあるのなら、それこそ簡単に見つかると思っていたのだが
「ええい! 回りくどいことはなしだ! 本当のことを話す。 我の父上ミータが母上トルミとの思い出の品をどこかに無くしてしまったと言うんだ。 そのせいで母上は竜の盾を持ってどこかへ出ていってしまった。 慌てて我は追いかけたのだが、母上も黒龍。 今の我の力では止めることすら叶わなかった」
な、なるほどな
夫婦喧嘩か⋯⋯
異世界でもそういうのはあるんだな
「その母親との思い出の品っていうのは何か心当たりがあるのか?」
俺はメランに聞く
メランは首を横に振った
知らないのか⋯⋯
うーん これは困ったことになったぞ
一体どうしたものか
「一応、メランの実家に行ってみるのもありかもしれないな」
俺がそう言うと、メランが止めてきた
もちろん、ティファナも同様に止めてきた
「まだ全回復してないんですから、もう少し寝てなきゃいけないですよ!」
「そうだぞ 時間はそんなにあるわけではないが、今はユウ様の体調が大事だぞ!」
二人から心配を受けた
そんなに心配しなくとも、俺は全然大丈夫なんだが
「だ・め・で・す! また途中で倒れたら大変じゃないですか! ちゃんと休養してください」
ティファナからさらに念を押された
これはマジの顔だ
ここはおとなしく従っておくべきか
俺はティファナたちに心配されながら再び眠りについた
ふと気がつくと、俺は村の外にいた
村はボロボロで何があったのか俺にはさっぱりだった
近くに人の姿をしたメランが倒れていた
慌てて抱き起すがもう息をしていなかった
「め、メラン? なんで、どうしてこんなことに……」
俺は一人呟いた
周りにも多くの人が倒れていた
一体この村で何があったんだ?
遠くに人影が見えた
まだ生きている人がいるのかもしれないと思い、俺は急いで駆け寄った
「そこの君! 一体この村で何が起きたのか知ってる……か……?」
その姿を見て俺は思わず驚愕した
「カルディアじゃないか! 今までどこにいたんだ!?」
そう、そこには久しぶりに見るカルディアの姿があった
久しぶりの再会で聞きたいことがあったが、今はそれどころじゃなかった
「そんなところにいたら危ないぞ。 早くこっちに来るんだ」
俺はカルディアの肩に手を置いた
「熱ッ!!」
カルディアは体から高熱を出していた
俺は思わず手をひっこめる
「…………」
カルディアが俺に聞こえない声で何かを言っていた
「やめて…… 私の力が……」
俺は息をのみ、カルディアにもう一度話しかけようとする
「やめてッ!!」
カルディアは、俺が出した手を払いのけた
あまりの変わりように、俺は思わず後ずさった
「いやあああああ!!」
カルディアが叫んだ
その直後、現れた闇にカルディアはその闇に飲み込まれた
「カルディア!!」
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