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第27話 ティファナ

「助けてもらって本当にありがとうございます。 何かお礼がしたいんですが、してほしいこととか手伝うこととかありますか?」


別に俺自体は大したことしてないし、特にすることがあるわけでもない

どっちにしろ今日一日はこの街から出られないわけだし


「そうですか、ならばユウさんが困ったときに助けてあげます!」


そんなに気にすることでもいないのに

まあ、善意らしいしありがたく受け取っておくか


そこに一羽の白い鳥が飛んできた

足には手紙が括り付けられている

白騎士団からの手紙だ

ここまでよくやってきたな

しかも今女になっているのに俺のことが分かるなんて賢い鳥だな


「それ、なんですか?」


ティファナが不思議な顔をして聞いてきた

答えるべきか否か

俺が考えるよりも先に新人騎士の方が話し出した

お前もうちょっとプライバシーとか考えろよ


「俺たちは白騎士団の一員なんです。 申し遅れました、私はエクエスと言います。 どうかお知りおきください」


お前、エクエスって名前だったのか

てか、なんで俺よりも先にティファナに言うんだよ

俺の方が付き合いは長いだろ?


「は、はあ」


ほら見たことか

ティファナが困ってるじゃないか

こんな奴に絡まれて可哀そうに


「……本当にユウさんなんですね」


俺たちの格好を見つつ、ティファナが言った

それもそうだろう

今は性転換の日真っ最中だからな

俺たちが性別が変わっているのは初めて見るだろう

だって当の本人の俺も見たことないし


ひらひらのスカートはいて、ご丁寧にブラまでつけさせられたし……

極めつけには、頭に大きなリボンがついてるときた


「それで、白騎士団からの手紙にはなんて書いてあるのだ?」


メランが口をはさんできた

そうだった 手紙の件をすっかり忘れていた


内容は戻って来いとの命令だった

だが、どう頑張っても今日中に帰れるはずがない

俺は白騎士団から届いた手紙の裏に、今日は帰ることができません 明日の朝一で帰ります と書いて鳥の足に括り付け飛ばした

白い鳥は、真っ直ぐ飛んで行った


「そうだ、時間があるのなら私の村に来ませんか?」


ティファナの村か

そういえば言ったことなかったし、聞いたこともなかったな

ここから近いのか?


「この先にエルフの大森林があるんです。 そこを抜ければすぐですよ」


おお、そんなに近くなのか

もし行けるんであれば行ってみたい


俺たちはティファナの後に続いて、エルフの大森林の中へ入った

中はなんだか不思議な感じがして、あまり長くとどまりたくはなかった


必死の思いでエルフの大森林を抜けると、そこには確かに村があった

だが、アイルファよりもさびれている感じがした


「ここはアイルファとは違ういわゆるハーフエルフが住んでいる場所です。 ハーフエルフというのは別名 変わらずの者 と呼ばれています。 その名の通り、この性転換の日でも性別が変化しない

なるほど それでほかのエルフから気味悪がられてこうやって隠れて住んでいるのか

どこの世界も差別ってものは、やっぱりなくならないんだな


「それでも私はハーフエルフに生まれてよかったと思ってますよ。 だって、こうしてユウさんと出会えたんですから」


ティファナが笑顔でそう言った

ティファナのその笑顔でどれだけのハーフエルフが救われるだろうか

それくらい明るい笑顔だった


「わ、私両親に話してきます! ユウさんについていくとは言いましたけども、まだ親に許可をもらってなかったですから」


ティファナは、そう言って村の奥へ去っていった

親、か……

俺の親もどこで何してるか知らないけれども、元気にしてるのかな


俺たちはティファナが戻ってくるまでハーフエルフの村を、散策することにした

ハーフエルフと普通のエルフの違いは耳の伸び方らしい

ハーフエルフは縦に長く、普通のエルフは横に長い


「そういえば、エクエスの親ってどんな人なんだ? 聞いたことなかったから今聞いても?」


「…… お前に言うのもなんだが、別に話してやらんこともない」


お、おう 話してくれるのか

いつも思うけど、なんでこいつこんなに偉そうな態度ばかり取るんだ?


「俺の父はとても真面目だった。 賭け事や女遊びなんかには一切手を出さない人だった。 俺はこの人みたいになろう、この人を目標にしたいと思い始めるようになった。 だけどそんな思いは早々に崩れ去った。 あの女が現れてから父はおかしくなった」


あの女? 誰が来たんだ?


「あの女は嫌がる父を無理やりホテルに連れ込んだ。 そこからは想像がつくだろう。 その女が父をそっちの道に進ませた。 その女が俺の父を奪ったんだ」


泣きそうな声でエクエスは言った

こらえきれなかった涙がぽたりと地面に落ちた

そんなにつらい過去があったなんて……

そりゃ、こんな言葉遣いになって当然だ


「あら? ティファナちゃんの友達かしら?」


突然おばさんに話しかけられた

俺はとっさに


「まあ、そのよ

うなものです」


とあいまいに答えた


「そうかいそうかい。 あんたにはティファナちゃんがどう見えてるのかい?」


ティファナがどんな子に見えるか、か


「ティファナさんは、自分よりも他人を優先できるいい子だと俺――私は思ってます」


「ティファナちゃんはねえ、一見強い子に見えるが心はか細くとても弱いの。 ハーフエルフだからという理由でろくな仕事に就くことができない、それでも生きていくために必死で頑張ってるとても芯の強い子ね」


ハーフエルフってそんな風に扱われてるんだ

そう考えるとティファナはよく頑張ってるな

こっちまで応援したくなってくる


「ふざけるな! 許すわけないだろ!」


突然、怒声が聞こえた

なんだなんだ?


俺たちは怒声がした方へ急いで向かう

そこにはティファナが誰かと言い合いしていた

ティファナの左頬が赤くなっていた


「今までどこにいたのかと思っていたら突然帰ってきて、また旅に出たいだなんて! 俺たちがどれだけ心配したかわかってるのか!?」


どうやらティファナの両親らしい

今怒ってるのはティファナの父親だろう

頭に白いタオルらしきものを巻いている


「分かってるよ! だからこそだよ! 私もそろそろ自立してもいいと思ってるの」


「お前にまだ一人暮らしは早いだろ! しかも俺たちは、ハーフエルフだ。 一人暮らしをしたとしてもすぐに挫折するに決まってる」


「大丈夫だって。 ちょっとは私のこと信用してよ!」


話を聞くところによると、確かに父親の言い分もわからないでもない

この世界ではハーフエルフは生きづらい

それをわかっている父親だからこその優しさなのだろう


「ちょっといいですか?」


俺は思わず口をはさんでいた

ティファナの父親は異物を見るような眼で俺を見た

俺はチビリそうになりながらも、ティファナの父親に言った


「確かにあなたの言い分もわかりますが、あなたも少しはティファナさんのことを信じてあげてはいかがですか? 子供の成長を喜ぶのも親の役目だと私は思いますが」


「き、貴様! 関係ないくせに口をはさんでくるな!」


「まあまあ、落ち着いてくださいなあなた。 ティファナだって成長したってことですよ」


そう言ったティファナの母親は茶色のエプロンをしながら俺にウインクしてきた


「…… そうか、なら勝手にしろ!」


二人から攻められたのが応えたのか、父親は家の中へ戻っていった


「あなたがティファナのお友達ね。 ティファナは世の中が知らないことだらけだと思うから、しっかり支えてあげてね」


ティファナの母親は優しく言った

そうやって、ティファナは正式に俺たちの仲間になった


「では、いろいろありましたがこれからよろしくお願いします」


ティファナは改めて俺たちに礼をした

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