第24話 性転換の日
翌朝、目が覚めると体が思っている以上に重かった
昨日の疲れが抜けてないのかとも思ったが、そう動いてない
ならば、この体のだるさは一体なんだ
俺はベットから起き上がった
「え」
俺は驚いた
驚いたのも無理はない
俺の胸元には、男には無いものが二つもぶら下がっていたからだ
「な、なんじゃこりゃーーーー!!!」
そう叫んだ俺の声も何オクターブか上がっていた
俺はどうやら女になってしまったらしい
「大変なのだ!! ユウ様……って誰だ!?」
メランが扉を突き破って入ってきた
こりゃまた豪快に
「俺だよ、ユウだよ。ほら」
俺はメランの誤解を解こうと必死に弁護するがなかなか分かってくれない
ドラゴン族最強の割には、知能が悪すぎないか?
「一体何の騒ぎだい」
ヤ、ヤバイ!!
この状態で入ってこられたらメランみたいに誤解されてしまう!
俺が何かするが早いか、老エルフは俺の部屋の扉を開けていた
「あ、どうも……」
老エルフはきょとんとした顔を一瞬したがすぐに状況を理解したようだった
このご老人、メランより頭いいぞ
「今日は年に一度の性転換の日なんじゃ。 その日一日だけ男は女に、女は男になってしまうんじゃ」
でも、今老エルフは女の姿のままだけれどもそれは何でなんだ?
「ああ、私は今日のために事前に開発した薬を飲んでいるから大丈夫なの」
そ、そんなのってありかよ!?
そ男の姿に戻れるなら俺にも一口もらいたいんだが
「残念。 この薬は事前に飲んでおかないと意味がないの。 だから今から飲んだとしても元の男の姿に戻れないよ?」
あ、バレてたのか
あ、そうか 性転換の日に女になっているということはもともとは男だとゆうに想像できる
「スー― スー― ……」
この騒ぎの中、俺と同じく女になった新人騎士はまだ自分の身に起こったことを知らずに眠っていた
全く、こいつはいつまで寝ているんだか
それにしても、女ってこんなに体が重たくなるもんなんだな
こんな体で動ける女の人ってすげー
俺は女になった自分の体をペタペタと触った
胸は大きくなっており、下半身にあるものがなくなっていた
不思議な感覚だ なんだか自分の体じゃないみたいだ
ちなみにメランも男になっているらしい
どこが変わったのかわからないが
「フワアアアア……」
ようやく新人騎士が起きた
ちょっと意地悪してやろう
起きなかったお前が悪いんだからな
「あれエ? あなた誰ですか?」
くっ!! 俺よりかわいいじゃねえか!?
なんてことだ……
もしも、俺が男のまんまだったら襲っていたかもしれない
「あらあら、ようやくお目覚めですか? あ・な・た」
俺は出せる一番高く甘えた声で言った
まだ寝ぼけているみたいで新人騎士は自分の姿が分かっていない
つまり、まだ男の姿だと思っているはずだ
「え? え? ど、どういうこと?」
予想通り混乱している
ここでさらにたたみかけるか
「昨日はあんなに優しくしてくれたのに、もう忘れてしまったのですか?」
「は? き、昨日って何の話をしているんだ!?」
そろそろメランが笑いをこらえきれないようだ
もう少し反応を見てみたい気もするが、ここらへんでやめておこう
俺は、新人騎士に性転換の日について教えてもらったことを伝えた
新人騎士は、あんまり驚かなかった
ちぇっ つまんないの
「で、この性転換の日はいつになったら終わるんだ?」
俺は老エルフに聞いた
「今日一日は性転換の日になっている。 だから、明日になれば元通りに戻っているはずじゃ」
「ならこの街から一刻も早く出た方がいいのか」
またいつ性転換の日に巻き込まれるかわからないし、エルフの街にはあまりいい思い出がない
「性転換の日にこの街から出るのは不可能じゃ」
へ? 今なんて言った?
「性転換の日にこの街にいて性別が変わった者はこの街から出ることができない。 別に出られない話ではない。 だが、この街から生きて帰りたいなら明日まで待つんじゃ」
ど、どういうことだ?
「簡単に言うと、性転換している者はこの街から出た瞬間、謎の発作によって……死ぬ」
そんな物騒な
「性転換の日はそういうデメリットばかりではない。 もともと男だった者に対しては大きなメリットにもなる。 ここエルフの街 アイルファは男卑女尊の街。 ということは、性別が逆転している今なら動きやすくなっているということじゃ」
男卑女尊、か
確かに今の状況では使えるかもしれない
しかも、帰るにしても明日にならないと帰れないときた
ここはエルフの街を観光するいい機会じゃないか?
「だが、それにも少しだけ問題があって今 女ということはもともと男だということ。 つまり明日になった瞬間、性別が元に戻った瞬間捕まって奴隷にされてしまう可能性がある」
つまり、明日になった瞬間すぐに出れば大丈夫ということか
確かに、それが賢明な判断と言えよう
メランは今男になっているらしいが、奴隷にされる心配はないのか
ドラゴンは奴隷の対象外にでもなっているのかもしれない
ここから関所までは少し遠い
もう少し近い場所に移動したほうがいいだろう
「ということで、ここを出ることにした」
「そうかい。 寂しいが私も久しぶりに人と話せてうれしかったよ また、いつか会う時があれば魔法の話でもしよう」
老エルフは若干悲しそうな顔をして言った
確かにこんなところに好き好んで足を運ぶ奴らはそういないだろう
この老エルフは実は一人で寂しかったのかもしれない
また、来る機会があれば寄らせてもらうことにしよう
こうして俺たちは老エルフのもとを後にした
あの老エルフにはたくさんのことを教えてもらった
いつかまた、恩返しするためにもきっと来よう
そう決めた俺だった
「さて、どうしたものか」
なるべく早く帰れる場所とは言ったものの、全く当てがない
そもそもエルフの街について知らないんだから仕方がない
「ん? あれは……」
俺は懐かしい後ろ姿を見つけた
あの後ろ姿は間違いない カルディアだ
俺が駆け寄ろうとすると、新人騎士に止められた
「あの女の子がお前の知り合いに似ているのはよくわかる。 だが今日は性転換の日だ。 今、女だということはあの子は男という可能性が高い。 その子があの老エルフみたいな薬を飲んでいる確率はほぼないに等しい。といううことは、あの子はもともと男だということに他ならない」
論破されてしまった
こいつ、こんなに喋るやつだったか?
「あ、あいつはカセスじゃないか!!」
そう、俺は初めて奴隷になったときに助けてもらったカセスと再会した
良かったら評価の方よろしくお願いします!