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第20話 裏の顔

久しぶりに会ったシスターに聞きたいことは、リガン黒騎士団長の過去よりもたくさんあったがここはぐっと我慢した


「本当にお久しぶりです! 急にいなくなるから心配しましたよ」


俺はシスターにそう言う

しかし当のシスターはなんだか答えづらそうな顔をしている

何か言えない理由でもあるのだろうか


「まあ、そんな話はあとだ。 とりあえず、シスターよ。 この勇者様に話があるんだろ?」


リガン黒騎士団長が俺を煽るように言った

つくづくこの人は人が嫌な言い方ばかりする


「ええ、実は勇者様に謝らないといけなくて」


ん? いつものカタコトは?


「実は私、普通に喋れるんです。 ただ初めての人と話すとどうしても緊張してカタコトになってしまうんです」


そうだったのか

だけどそれくらいのことじゃ、ここまで大事にはならない

つまり、ほかにもいうべきことがあるはずだ


「その顔はわかっている顔ですね。 だけどなんの事かまではわかっていないような顔ですね」


ま、まあ 全く言ってその通りなんだが


「まずはこれを見てください」


そう言ったシスターはあるものを見せてくれた

それは、俺が初めてシスターと会ったときに受け取った手紙だった


「中はこう書いていたんです」


そう言ったシスターは手紙を開封し、読み上げだした


「あなたの目の前にいるのは、神に選ばれし勇者様です。 そのお方は世界を救う勇者となるでしょう」


そ、そんなことが……

ん? でもあの時は特に問題なんて起こっていなかったような


「とにかく、私のせいでユウさんを巻き込んでしまったことを深く謝罪するためにここまでやってきました」


な、成程ねえ


「それだけか? まだあるだろ? 一番大事なことが」


リガン黒騎士団長がシスターを諭すように言う

一番大事なこと? これ以上に大事なことがあるのか?


「………… わかりました。 こっちのほうが本題ですもんね」


しばらくの間を開けた後、シスターは話し出した


「あのー 非常に言いづらいんですけど、ユウさんの持つ勇者の剣なんですけど…… 実は偽物なんです」


は? 今なんと?

俺はシスターの言っていることが理解できなかった

俺の持つこの剣が偽物? そんなはずは……


「細かな違いはいくつかありますが、大きな違いはその威力の差です。ユウさんが持つその剣は一振りで周りの木々を巻き込んだといっていましたね」


確かにそうだった

あの時はあまりの出来事にびっくりしていたから間違いない


「本物は木々を巻き込むくらいでは済まず、山を真っ二つにします」


シスターは真顔で言った

俺はその言葉に思わず吹き出した


マジか 威力が違いすぎるだろ

ていうか、ならなんであそこに偽物の剣を置いたんだ?


「偽物の剣は私が置きました。 実はその偽物の剣を抜くことこそが、勇者となる一つの試練だったのです。 偽物の勇者の剣といっても勇者にしか抜けませんから」


成程な だが、シスターに初めて会ったとき、俺はまだ異世界に来たばかりで勇者の剣は持っていなかったと思うんだが


「それは私の独断と偏見で決めました。 もしユウさんじゃなくても、ユウさんに勇者の剣は渡していましたから」


独断と偏見って…… 

勇者を選ぶのにそんなのでいいのか?


「それと、こちらが本物の勇者の剣です」


そう言うシスターは胸元に隠していたものを取り出し、俺に手渡してきた

胸元で温まっていたのか、ほんのり温かい

それよりも重っ!!

これが本物の重さか


「それよりもだ、リガンよ。 今は住民の安全を確認するのが最優先だ。 だが場所が分からないことには動きようもない」


白ベルは困ったかのように言う


「それならこの黒龍に頼めばいいんじゃないか?」


リガン黒騎士団長は、メランを指さしながら言った

確かにそう言った

リガン黒騎士団長はメランのことについて知っているらしい

まあ、ドラゴン族最強の黒龍のことを知っているのは当たり前か


しかしメランの能力まで知っているのはどうか

逆に怖くなってくる

実は俺のことは、

もう調べ尽くしていたりして……


「お前のことも知ってはいるが、そこまで大した情報はなかった」


調べた後だった!?

しかも大した情報がないとか侮辱された……

いくらリガン黒騎士団長だとしても言い方に問題があるだろ


「それで、メランといったか。 リガンの言う通り本当に住民の居場所が分かるのか?」


白ベルはメランに詰め寄りながら言った

いくら黒龍といっても、見た目は完全に女の子だ

はたから見ると、白ベルが小さな女の子をいじめているようにしか見えないのはいかがなものか


「い、一応我の千里眼で先を見通すことはできるが――」


「できるのか!」


だから近いんですって

もう少し離れましょ


メランはドキドキしつつも、千里眼を使った

ミスらないといいけど


「み、見えたぞ! 南西にギルドの人物らしき人がいる!」


失敗せずに済んでよかった

やっている本人はガチガチなんだろうけど、見ているこっちからしてもドキドキものだった


「よくやった! イリニ、馬を出せ! すぐに出発する! お前たちもついてこい」


やっぱりそうなるのか

俺たちは白ベルに連れられ、馬に乗せられた

馬に乗るのは今回が初めてだ

グラグラと安定しない

メランも乗ろうとしていたが慌てて止めた

お前は飛べるだろ

馬にドラゴンが乗るなんて前代未聞じゃないか?


メランの千里眼のおかげでギルドの人たちの居場所が分かった

湿っぽく薄暗い奇妙な洞窟だ

メランの言う通り、そこにはたくさんの人間がいた

だが、みんなどこか足取りがおかしい

まるで誰かに操られているような動きをしていた


「くっ! やめろ! 落ち着くんだ!」


白ベルが住民たちに襲われていた

魔物ならまだしも住民に襲われるとなると、うかつに手は出せないのだろう


俺の持つ勇者の剣が小刻みに震えた

近くに邪の剣があるとこの剣が告げている

無機物から声は聞こえないが、今の俺にははっきりわかった

俺は振動が強くなるほうへ進んだ


やがて、俺達は最深部までたどり着いた

俺達の前ではあのギルドで受付をしてくれた女性と長老が、一つの剣を奪い合っていた

力の差は火を見るよりも明らかだった

取り合ってい剣が、あの時受付の人に渡した剣だ

だが、初めて見たときよりも若干色が赤黒くなっている気が……


「グエツ!!」


突如、長老がうめき声をあげ倒れた

長老の胸元には邪の剣がしっかりと刺さっていた


「あはははははは!!」


女性は大きく高笑いをした

そして、俺達に向かってこう叫んだ


「私がこの世界の神となるのよ! 邪心解放!!」


邪の剣を天に掲げながら女性は自らの胸を邪の剣で刺した



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