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第19話 アペイロンの伝承

特に大きな収穫もなかった俺たちは、白騎士団の本部へ戻ってきていた

着くと急いで出て行った白ベルが戻ってきていた

もう用事はすんだのだろうか


「戻ってきたか。 電報はしかと受け取った」


あの鳥は白ベルに向けて送ったものだったのか

疑問が少し晴れてよかった


イリニ先輩が白ベルに耳打ちする


「……!! それは本当なんだな?」


白ベルが珍しく声を荒げて言った

多分さっきあったことを言ったのだろう


「ふむぅ……」


白ベルが頭を抱える

急用と合わさって大変なことになっているのかもしれない


「とにかく災難だったな。 ユウとメランよ、しばらく休んでいくといい」


白ベルは残念そうに俺たちに言った

そんなに心配することはしてないけども


「カルディアのことは、俺達に任せておくといい」


結局カルディアは、あの洞穴の中にはいなかった

早く探したい気持ちはやまやまだけども、手掛かりが一つもない

ここは白騎士団に任せておくのが最善だろう


「それよりもユウよ、少し話をしないか。 ここ、アペイロンの伝承などどうだ?」


気を利かせてか、白ベルがそう告げた

そうだな

この世界について知るいい機会かもしれない

白ベルは一息ついてから話し始めた


この世界、アペイロンには二対の剣が存在する

一つはユウが持つ聖の剣、もう一つは邪の剣といわれている

聖の剣は悪を斬り、世界を癒し正しき方向へ動かす剣

邪の剣は全てに怒り、全てを憎み破滅へと導く剣

二対の剣は二つ合わせて聖邪の剣と呼ばれ、世界を見守っているのだとか

二対の剣は二つそろわないと本来の力を発揮できない

特に邪の剣は人間が扱うには危険が伴う、最悪の場合死に至ることもある呪われた剣らしい


ん? 邪の剣かどうかは分からないが邪悪な剣なら、魔王を倒した時に見たような……

あの剣は確か、ギルドの人に預かってもらっていたはず


「そ、それは本当か?」


白ベルが食い気味に言い寄ってきた


「え、ええ。 二つもいらないかと思って一つはギルドの人に――」


「イリニ! 今すぐギルドへ向かってくれ! 一刻も早くだ!」


俺の言葉をさえぎって、白ベルが叫んだ

異常事態なのかもしれない

イリニ先輩は風のようにでていった


やってしまったか……

で、でもあの時は何も分からなかったんだからしょうがないだろ?


「そ、そういえばリガン黒騎士団長ってどんな人なんですか?」


なんとなく気まずい空気を変えるため、俺は話題を振る


「ああ、リガンか。 リガンとは昔からの腐れ縁でな。 ようは幼馴染ってやつだ。 あいつは昔から何も変わっていない。 もちろんいい意味でな。 俺が知る限りあいつより強い人間は見たことがない」


それから、白ベルは日ごろから思っているリガンへの鬱憤を晴らすかのような勢いでまくし立てた


「あいつは黒騎士団の団長だというのに、面倒なことは俺に全部押し付けてくるわ戦っている最中だというにも関わらずヘラヘラ笑いながら戦っている! それで騎士団全体の士気が下がったらどうするつもりだ! それでもあいつの戦闘に対する威勢は異常だ。 あいつに目をつけられた魔物が生きていたことは俺が見た限りだと一度もなかった」


戦いに固執しているってことか

それに比べて俺は魔物がいても一人では何もできない

かろうじて勇者の剣があるから戦えるだけであって、あの時リガン黒騎士団長が言っていた通りこの剣がなければ俺は無力なんだ、と改めて突き付けられた感じがした


「戦闘に関してはなにも文句はないし、こちらとしては何も言えないのだが、もう少し黒騎士団長としての自覚を持ってほしいと俺は思っている」


メランも白ベルの話を静かに聞いている

だが、心なしかメランがプルプル震えているような感じがした


「それだけの戦闘スキル、リガン黒騎士団長はどこで身に付けたんですかね。 何か師匠的な人にでも教えてもらったんですかね?」


俺は何のけなしにそう言った

俺がそう言ったとき、白ベルはとっさに外へ目を向けた

どこか言いたくないような、そんな気がしていた


「……ここで言うのも一つの案かもしれないな」


白ベルはそう言い、固く結んでいた口を開いた


「リガンがあれほどまでに戦いに集中しているのには訳があるんだ。 そのわけは――」


「只今戻りました!」


話の途中でイリニ先輩が返ってきた

つくづくタイミングが悪いことだ


「おお、戻ってきたか! で、結果はどうだった?」


白ベルはイリニ先輩に急いで聞く


「あなたの考えていた通りです。 ギルドに邪の剣はなく、それにギルドの職員も何人かいなくなっていました。 おかげで帰るのが少し遅くなってしまいました」


そりゃあ、この街で一番大きな施設の人員が足りなくなったともなれば騎士団が助けに行くほかない


「くっ…… 一足遅かったか」


「すみません。 俺がもう少し考えてから邪の剣を渡していればこんなことには」


「いや、君のせいじゃない。 いつかは起こりうることだったんだ。 それが少しばかり早くなっただけだ。 そんなに気にするな」


「そうだ。ユウ様が悪い訳では無いぞ! 悪いのはその剣を持って逃げた奴らだ!」


メランも落ち込む俺の頭をなでてくれている

そうは言ったが、白ベルの表情はまだ晴れない


「一体どうしたものか……」


白ベルが頭を抱えていると、部屋の扉が勢いよく開いた


「よう、白ベル。 なんだか浮かない顔してるじゃないか。 何かあったのか? 俺でよかったら相談に乗るぜ?」


そこには初めて会った時と同じ格好のリガン黒騎士団長がいた

その後ろに誰かが隠れるように立っている


「お、久しぶりって程でもないか勇者様よお。 あれから、ちいとは強くなったか?」


そう俺をあおるように言ったリガン黒騎士団長の後ろには、本当に久しぶりに見る顔があった


「勇者様 久しぶり」


あのシスターがそこにはいた

カタコトなのは相変わらずだったが……

カタコトなのも愛くるしい

良かったら評価の方よろしくお願いします!

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