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第15話 黒騎士団長 リガン=ヒードリッヒ

 白ベルの案内で白騎士団本部をまわっていると、懐かしい顔に出会った

 

「あ!  ユウだァ!」

 

「ユウ様っ!  ご無事だったか!」

 

 カルディアとメランだ

 

 カルディアは俺に泣きながら胸に飛び込んできた

 

「もぅ…… めちゃくちゃ心配したんですからね」

 

 カルディアが頬を膨らませながら言う

 メランも俺の体に怪我がないか、上から下まで舐めるように見ている

 余程心配されていたのだろう

 まあ、奴隷の時に受けた傷は魔法で直してもらったから特に問題はない

 

「知り合いか?」

 

 白ベルが俺に聞いてきた

 

「ま、まぁ そんなものです」

 

「そうか、無事出会えて良かったな」

 

 白ベルも安心した顔で言った

 

「でも、二人ともどうしてここに?」

 

 俺は気になって聞いた

 

「拉致されたユウを探し回ってここまで辿り着いたんです!  そこにユウがいるなんて!」

 

 カルディアは興奮気味に言う

 鼻息が荒い

 俺が連れ去られた時、寝てたやつがよく言うよ

 

「ユウ様こそどうしてここに?」

 

 メランが俺に尋ねてきた

 

 俺は拉致された後、奴隷にされ処されそうだった所を黒騎士団に助けてもらい、そのまま白騎士団に預けられたことを話した

 

「そんなことが…… でも、ユウさんが弱いなんて私信じられません!」

 

 カルディアが白ベルに向かって言った

 勇気あるなぁ……

 

「確かに、ドラゴン族一番の黒龍の私を倒したのだから決して弱いはずないのだが」

 

 メランまで言い出した

 こんなに信頼されていたのか

 あれ、目から水が――

 

「黒龍を倒したのは認めよう。 だが、それは勇者の剣があったからだろう。 ユウ自身の力では無いはずだ。 それは勇者の剣がなければ、戦うこともままならないということにもなるだろう」

 

 白ベルが俺に向かって厳しく言い放った

 言い方が少し悪く感じるが、今思えばそうだったかもしれない

 メランと初めて会った時も、勇者の剣があったからこそ突然の勝負に勝てたし、ドワーフ達にも勇者の剣を見せると騒いでいた

 

 てか、奴隷になってた時、勇者の剣ってどこにあったんだろう

 俺の手にはなかったはずだが⋯⋯

 

「……それはそうかもですけど。 いくら白騎士団長だからといってユウさんをけなすのは私が許しませんよ!」

 

 カルディアが無謀な勝負を白ベルに持ちかけていた

 やめなさい 君が勝てるような相手ではない

 怪我したら大変じゃないか

 

「女性を傷つけるのは騎士道に反するのだがな」

 

 白ベルは呆れたと言わんばかりに、大きく息をはく

 

「まあまあ、カルディアも落ち着いて」

 

「ユウさんは馬鹿にされたままでいいんですか?」

 

 カルディアの言っていることもわかるが、そこまでして否定したい訳じゃない

 現に自分が弱いのは自分がよく分かっている

 それに、ここは建物の中だ

 暴れるのはやめておいた方がいいだろう

 人がなんの騒ぎだとばかりに集まってきた

 

「少しいいか?」

 

 人混みの中から男の声がした

 特に目立った格好もしていない普通の騎士だ

 顔だけフードで隠れてよく見えない

 

「勇者がどれくらいの強さなのか知りたい。 ユウと言ったか。 手合わせ願おう」

 

「へ?」

 

 突如現れた騎士にそう言われ唖然とした

 

「おい、そこの騎士。 木剣をこっちに渡せ」

 

 俺に勝負を挑んできた騎士に言った

 言われた騎士は、素直に従った

 フードの騎士は木剣を片手で持ち一閃した

 

「まずまずか。 これくらいのハンデはやらないとな」

 

「怪我だけするなよ」

 

 白ベルがフードの騎士に言った

 知り合いなのだろうか?

 

「こんな奴に遅れをとる俺じゃないさ。 心配するだけ無駄だ」

 

「相変わらずだな、お前は」

 

 白ベルと話しあったフードの騎士はさらにこう言った

 

「俺は木剣で戦おう。 お前はその勇者の剣とやらで戦えばいい。 なぁに、心配するな 周りに危害は加えないから」

 

 そう言ってフードの騎士は木剣を構えた

 注目の的になっている俺はここで逃げる訳にはいかないと思い慌てて勇者の剣を構える

 先手必勝とばかりに、俺はフードの騎士に勇者の剣を一振した

 

「!?」

 

 完全に当たったと思っていた剣筋は、いとも簡単に避けられた

 

「やはりな。 白ベルの言っていた通りだ」

 

 そう言ったフードの騎士は木剣で向かってきた

 俺はとっさに勇者の剣でガードする

 

 カンッ!  トスッ

 

 ユウの後ろには勇者の剣が刺さっていた

 馬鹿な!  木剣だぞ?  勇者の剣をこうも簡単に跳ね返せるわけがない!

 

「戦いに来たわけではなかろう、リガン(・・・)よ」

 

 リガン(・・・)

 その名前を白ベルが口にした時、辺りがざわつきだした

 カルディアとメランも動揺している

 フードの騎士の体が、一瞬黒いモヤに包まれた

 モヤが晴れた後には全身真っ黒の騎士がいた

 この人がリガン、黒騎士団長らしい

 

 白騎士団は表立って行動する騎士団

 それに対し、黒騎士団は裏で手を回す 要は暗躍部隊と言われている

 あまり表に出ることの無い黒騎士団、それの長が出てきたとなればそりゃ大騒ぎにもなるだろう

 

「で、わざわざここまで来たということは何かしらあるのだろう?」

 

 黒騎士団長のリガンはメランの方をじっと見つめて、いや睨みつけていた

 しかし、それもつかの間 リガンは頭を掻きながら白ベルに謝った


「いやあ、ここまでするつもりじゃなかったんだけどなあ。 思った以上に弱すぎて」


う…… 痛いところを突いてくる……


「それで、本題はなんだ?」


白ベルがリガンに訊いた

それを言われたリガンは、白ベルにこっそり耳打ちした

何を言っていたかまでは聞こえなかったが、白ベルが驚いた表情をしていたからよほどのことなのだろう


「それは本当なんだろうな?」


白ベルの問いに対してリガンはへらへら笑いながら頷いた


「イリニ! イリニはいるか!」


白ベルがそう叫んだ

リガンとは反対に、血相を変えている


「はっ。 ここに」


全身を真っ白な鎧に身を包んだ男が白ベルの前に現れた


「急用ができた。 後のことは任せたぞ。」


白ベルはそう言ってどこかへ出かけて行った

何か焦っているように見えたが……


「承知しました。 どうかご武運を」


「さてと、俺も帰るとするか。 ま、がんばれや 勇者様」


そう言い放ってリガンは黒い靄に包まれ消えた

リガン なかなか気が合わなそうな人だ


「それでは行きましょうか。今日の宿も確保できていないみたいですし」


滅相もない……


俺とカルディアとメランは白騎士団の休憩所で夜を明かすのだった

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