第14話 騎士団
「なんで助けてくれたんですか?」
俺は黒騎士団の男に尋ねた
「助けたわけじゃない。 俺は命令に従ったまでだ」
裁判の後やってきた馬車に乗りながら、俺は謎の黒騎士団の男と話していた
この黒騎士団の人、いつ見ても難しい顔してて話しかけづらいんだよな
めちゃくちゃ気まずい……
そんなぶっきらぼうな黒騎士団の男と一緒に、馬車に揺られること数十分
「ここだ」
馬車が急に止まり、黒騎士団の男が指さしながら言った
指さす方には、上から下まで真っ黒な建物がそびえ立っていた
「入れ。 くれぐれもウィルキー副団長に粗相のないようにな」
そう言った黒騎士団の男は扉を開け中へ入っていった
俺も遅れないように慌てて入る
建物の中に入って、俺は驚いた
外観だけでなく、内観まで黒一色に統一されていたからだ
おそらく上へと繋がっているであろう階段から、どこへつながっているのか分からないほどある扉まで、どこもかしこも真っ黒だった
そんなことは分かりきっている、日常茶飯事だと言わんがばかりに、黒騎士団の男はずんずん先へ進む
真っ黒な階段を登り、一つの扉の前に立ち扉を叩いた
コンコンッ
「ウィルキー副団長、例の者を連れてきました」
黒騎士団の男が扉を開ける
中には二人いて、小さな女の子と全身真っ黒な服を着た男がチェスで遊んでいた
あの男の人がウィルキー副団長かな?
小さい女の子の相手をしてあげているなんて、とてもいい人じゃないか
「ウィルキー副団長」
「え?」
俺は思わず声を上げた
黒騎士団の男が肩を叩いて言ったのは、小さな女の子に向けて言ったからだ
訳が分からない⋯⋯
この小さい女の子がウィルキー副団長なのか?
「あ、君は初めましてだったな。 あっしはウィルキー=アートン 気軽にウィルキー副団長と呼んでくれたまえ」
あ、あっし? 今、あっし って言った?
「ふむふむ⋯⋯ なるほどなぁ⋯⋯」
そう思っている俺を置き去りにして、ウィルキー副団長は俺の体をジロジロと眺めていた
一通り見終わって満足したのか一言、よしっ と言った
何がよしっなのか全く分からないが……
いつの間にか部屋にぶっきらぼうな黒騎士団の男はいなくなっており、二人きりになっていた
空気がなんとなく重い……
「お主はユウと言ったな? ユウよ、白騎士団に入りたくはないか?」
「へ?」
突然ウィルキー副団長に言われ、思わず声が出た
し、白騎士団!?
白騎士団って言った!?
ここって黒騎士団の本部だよな?
なのにどうして白騎士団の名前が出てくるんだ?
「お主の言うことはごもっともだ。しかし、あっしはお主を白騎士団に入らせようとしているのだ」
え、声が漏れてたか?
声出したつもりないんだがな
「大丈夫だ。 あっしが勝手にお主の心の中を読んだだけだから安心しろ」
は? そう言われて安心出来るわけないんだが……
てか心の中勝手に読むなよ
「すまんな。 あっし達は代々そういう世代なんじゃ」
そういう世代って、どういう世代だよ
「兎にも角にも! あっしはお主を白騎士団に入団させると言っておるのじゃ。 それだけわかっておれば良い」
と言われても⋯⋯
ていうかなんでそんな白騎士団を推してくるんだ?
「それはだな──」
「勝手に人の心の中読まないでもらえますか!?」
俺は思わず叫んだ
だが、ウィルキー副団長は俺なんて怖くないといった顔で続けて言う
もう、勝手にしてくれ……
「結論から言うと、黒騎士団ではお主を扱うことが出来ない」
へ? それってどういう意味?
「つまりだな、お主がまだあっしらのレベルに辿りついていない 率直に言うと弱いというわけじゃ」
あ、そっちの方ね
わ、分かってたけどこう正面から言われるとグサッってくるな
「そういうことで、まずは自分を鍛えるために白騎士団に入団してこいと言っておるのじゃ」
論破されてしまった
確かに、他人から言われると思い当たる節がいくつかある
「ま、お主があっしらレベルまで強くなったら黒騎士団に入団することも考えないでもないがな」
ウィルキー副団長は、俺を嘲笑うかのような表情で言った
それを見て、俺は決心した
絶対に、白騎士団で成果を上げていつかこのウィルキー副団長を見返してやると!
「その心意気、なお良し! 強くなって戻ってくる日を楽しみにしておるぞ!」
また心の中を読まれてる……
どうせできないと思っているだろう
何が何でも帰ってきて見返してやる!
それから三日後
ウィルキー副団長の紹介で俺は白騎士団の本部の前にいた
この本部も、上から下まで真っ白だ
創った人のセンスを疑ってしまう
おそらく黒騎士団の建物を作った人と同一人物だろう
まあ、そんなことは置いといて俺は大きく深呼吸して真っ白な扉に手をかける
「──!」
俺は扉に触れた時、かすかに殺気的なものを感じた
怖いがここまで来たら開けるしかない
俺は思い切って、白騎士団本部の扉を開けた
「うおっ!」
開けた途端、白騎士団と思われる男の人が俺に向かって斬りかかってきた
真剣ではなく木剣だったが当たっていたら無事では済まなかっただろう
俺は、その攻撃を紙一重でかわした
「見事だ。 儂の剣を見切るとは⋯⋯ 鍛えがいがある。 さあ、剣をも持て」
そう言って、白騎士団の男は木剣を俺に投げ渡した
ここで戦えとでも言うのだろうか
なんでこう血気盛んな人達ばかりなのだろうか
「い、いや 俺は──」
「言わずとも分かる! ハンデがありすぎるというのだろ?」
この人全く分かってない……
「ならば儂はこの場所から一歩も動かない! それでどうだ?」
俺を無視したまま話がどんどん進んでいく
ていうか、入り口で戦わないでもらえますか?
どうしようかと迷っていると、白騎士団の男の後ろに人影が見えた
「おい、そこら辺にしておいたらどうだ?」
「し、白騎士団長!?」
この人が白騎士団の団長か⋯⋯
どんな人だろうと、身構えていたが優しそうで良かった
「あれほど一般人に勝負を持ちかけるなと言ったばかりだろ」
「は、はぁ……」
白騎士団の男は小さく言った
「先程は私の部下が失礼をした。 私からよく言い聞かせておく」
「ちょっと驚いただけだから大丈夫ですよ」
俺は大事にならないようやんわりと答える
「そうか。 ならば改めて私から。 白騎士団へようこそ、ユウよ。 私は、イロアス=ヒューゲルベルク。 皆からは『白ベル』と呼ばれている」
自らを白ベルと名乗った団長は俺に手を差し出してきた
「これからよろしく頼む」
俺は差し出された手をギュッと握った
これから俺の騎士団としての人生が始まるんだ!
評価の方よろしくお願いします!