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第13話 有罪率99%のエルフ裁判

 月明かりだけが牢を明るく照らす

 俺は女性を傷つけた罪で牢に閉じ込められていた

 そして、これから裁判にかけられるらしい

 

 コツコツコツ……

 

 足音が静かな牢獄内に響く

 誰か歩いてくる

 

 エルフの女性だった

 エルフは牢の鍵を開け、

 

「飯だ。 食え」

 

 と、言い放った

 率直に言うと、奴隷になっていた時よりもいささか豪華な気がする

 ま、どんぐりの背比べだがな

 

 食べ終わった後、エルフはキッと俺を睨んで去っていった

 牢の中ではすることがない

 だって、何もないからだ

 ただ眠ることしか出来ない

 俺は牢に入ってから何度目か分からない眠りについた

 

 そして朝

 起きると牢の前には、あの奴隷長ガタリア=アーネストがいた

 

「やっと目覚めたか、このクズ。 わざわざ私が出向いてきたというのに、なんの反応もなしか。 喋る気力もないのか!  それはすまなかったな!  ハッハッハッ!」

 

 ガタリアは大きく高笑いした

 めちゃくちゃ煽ってくるが反論するのも今となってはめんどくさく感じる

 

「明日がクズ、貴様の命日だ。 よって今日が貴様が生きれる最後の日だ。 味わって食うといい」

 

 そう言って、ガタリアはユウに向かって食器を投げつけた

 もちろん食器は割れ、中身はこぼれる

 床に散らばるよく分からない液体と物体

 食べられるのかすらも分からない

 

「食え」

 

 ガタリアはそう言って、帰っていった

 ついに明日か……

 最後くらい、カルディアやメランに会いたかったな

 

 ここで死ぬ訳にはいかない

 でも、俺に出来ることなんて……

 俺は牢の中で、一人絶望していた

 


 そして、いよいよ運命の日

 俺が裁判にかけられる日だ

 意外と怖さはなかった

 それを考える余裕すらないのかもしれない

 

 俺が入っている牢がゆっくりと開いた

 目の前には最初に会ったエルフの女性が、手錠をもって立っていた

 

「両手を出せ」

 

 俺は指示通りに両手を出す

 逆らうと何をされるかわかったもんじゃない

 どういう目に合うか想像もしたくない

 俺の両手に手錠がはめられた

 

 エルフの女性は、手錠に紐をつけ引っ張っていく

 俺も強制的に、歩かざるを得ない

 

 二人の足音以外、何も聞こえない

 ただただ、二人分の歩く音だけが響く

 そして、大きな扉の前に立つ

 

「この先がエルフ裁判の会場だ。 ここから私語は禁ずる。 一言でも発した場合、エルフ長の指示を待たずに首をはねる」

 

 ひ、ヒィ!

 想像しただけで鳥肌が立つ!

 絶対に喋らないようにしよう

 なるべく長く生きていたいし

 俺はゴクリと唾を飲み込み、覚悟を決める

 

 裁判の会場の扉が開く

 俺の今後を決める裁判が、これからはじまる

 

 中では数多のエルフたちが、ザワザワと騒いでいた

 もちろん全員女性だ

 男性なんて奴隷の時にしか見たことがない

 

 俺が入って来たのを見た女性エルフ達は、ザワつきだす

 空気が、変わった音がした

 

 心臓が早鐘を打つ

 女性エルフ達の見る目が痛い

 口々に言い合いながら、みんな俺の方を指さしている

 

「静粛に!」

 

 一番高い位置にいる老エルフが言った

 おそらくあの人がエルフ長だろう

 その隣にはあの奴隷長ガタリア=アーネストもいた

 あいつ、ふんぞり返って俺の方を見下すかのような顔で見ている

 

「フッ!」

 

 ガタリアは俺を見ると、鼻で笑った

 まるで、これからどうなるかわかっているかのように

 

 俺の首に紐が付けられた首輪がはめられた

 これでユウは異論を唱えることは出来なくなった

 

「これよりエルフ裁判を始める!  奴隷よ、前へ!」

 

 俺は首輪に付けられた紐を引っ張られ、強制的に前に進む

 

「この奴隷は、このエルフの街 アイルファでの最大の罪を犯した!  それも奴隷にもかかわらずだ!」

 

 老エルフがそう告げると、周りの女性エルフ達がそうだそうだと口々に騒ぎ立てる

 俺は慌てて異論を唱える

 

「ち、違います!  俺は── グエッ!」

 

 隣にいる女性エルフが紐を引っ張った

 異論は許さないと言ったはずだ、と言いたげな表情でこちらをじっと見ている

 腰につけている剣を抜こうとする女エルフをガタリアが止めた

 

「良い良い。 エルフよ、喋らせてやれ」

 

「ガタリア様!  ですが⋯⋯」

 

「私がいいと言っている。 この意味が分かるな?」

 

「は、はい⋯⋯」

 

 女性エルフはガタリアの言う通りに、いまだにピンッと張っている紐を緩めた

 

「どうせ結果は分かりきっている。 少しくらい良いだろう?  エルフ長様?」

 

「……構わぬ」

 

 ガタリアめ……

 勝ち確だと思ってやがる

 このまま有罪になってたまるか!

 

「んんっ!  先に手を出してきたのはエルフの方です!  正当防衛なんです!  俺はカセスを守るために──」

 

「そのカセスとやらは奴隷施設から脱出しようとしていたらしいが?  脱獄犯を止めるためにエルフは罰を与えた。 そう考えるのが妥当じゃないのか?」

 

 ガタリアが俺を問いつめる

 確かに、カセスと一緒に俺は脱出しようとしていた

 それは揺らぎようのない真実だ

 そこを突かれると、ぐうの音も出ない

 

「おやおや?  あんなに元気いっぱいに喋っていたのにもうおしまいでちゅかあ?  全く張合いがないなぁ」

 

 ガタリアが俺のことを再び煽ってくる

 何か、何かないのか?

 この絶望的な状況を打ち砕くような物は!?

 

「あのーー、ちょーっとよろしいですかあ?」

 

 ピリピリした空気の中、気の抜けた声が聞こえた

 それも男の声だ

 

「き、貴様は、何者だ!」

 

 エルフ長が男に聞く

 

「えっーと、この姿を見てわからないですかねえ?」

 

 そう言って男はユウの前に突如として現れた

 その男は全身真っ黒な鎧に身を包んでいた

 

「き、貴様は黒騎士団!」

 

「わーお、ご名答」

 

 男は全く緊張感のない声で言った

 ほんと何者だこいつ

 

「く、黒騎士団がエルフ裁判に何のようで?」

 

 エルフ長が男に尋ねる

 

「えーっとですね…… そこの少年をこちらで引き取りたいと思っているのですが、そこんところどうでしょう?」

 

「「はあ?」」

 

 老エルフとガタリアが口を揃えて言った

 

「いやー、僕もね、詳しくは教えてもらってないんですけどね。 何か黒騎士団長の指示らしくて」

 

 黒騎士団の男はそう言ったが


「却下だ却下。 黒騎士団とは言えども、罪人をこのまま返すわけには行かない」

 

 エルフ長にあっさり却下されてしまった

 そりゃそうだろ

 

「あー、えーっと ならばウィルキー副団長がそう言ってました」

 

「「う、ウィルキー副団長が!?」」

 

 エルフ長とガタリアの顔色が変わった

 ガタリアとエルフ長は二人でこそこそ話をしていた

 周りも少し騒がしくなってきた

 しばらく悩んでいたエルフ長は、こう言った

 

「ウィルキー副団長様の指示なら仕方ありません。 どうぞ連れて行ってください」

 

 いいのかそれで!?

 名前を出すだけでこの場を収めるなんて、ウィルキー副団長って人はどんな人なんだ?

 

「よろしい!  トラブルがあったものの、これにてエルフ裁判は閉幕とする!」

 

 エルフ長の口からそう告げられた

 女性エルフ達は、みんな不満そうな顔をして去っていく

 た、助かったのか?

 

「次会った時は覚えてろよ。 このクズがっ!」

 

 ガタリアは俺にそう言い放って、裁判の場を去った

 命が繋がってほっとしたユウであった

評価の方是非ともよろしくお願いします!

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