第12話 奴隷の友達
俺に良くしてくれた男の子は、カセスと言った
女の子といっても、気づかないほどの女々しい顔だ
男の俺でも惚れてしまいそうになる
「俺はユウって言うんだ。 スープありがとう」
俺も自らを名乗り、二人は友達になった
とは言っても、生活自体が変わる訳ではないんだけど
カセスは、他の人とは違う方法で奴隷になったと言っていた
どんな方法か知りたかったが、言いたくなさそうだったので無理に聞かないことにした
俺とカセスは共に食事をしたり|(時には分け合ったり)、倒れそうになった時には肩を貸したりした
だが、俺は離れ離れになったメランやカルディアのことを、時折思うのだった
俺が奴隷になって数ヶ月が過ぎた
あの奴隷三人組の嫌がらせにも慣れ始めた頃、俺とカセスは女エルフに呼ばれた
俺はこれから何をされるのか分からなくドキドキしていたが、カセスの顔は青白く何をさせられるのか分かっているようだった
「カセス、大丈夫か?」
「……ああ、大丈夫だよ。 心配しないで」
そうは言っても、足取りが重いようにも見える
カセスがこんなに怖がるなんて、一体俺達は何をさせられるんだろうか?
俺とカセスが連れていかれた場所は、地下で調教所と呼ばれている
防音がしっかりしていると言っていたがそれになんの意味があるのだろうか
ここへは数ヶ月に一度、来る必要がある と女エルフが言っていた
そう女エルフが話している間も、カセスは一言も話さず、ただただ青白い顔で下を向いていた
本当に大丈夫だろうか
コツコツと鉄の床を歩く音だけが調教所内に響く
俺とカセスは違う場所で行うと言われた
カセスを担当する女エルフが手を引いているが、カセスは嫌だというように抵抗している
「辞めてあげてください! 彼、嫌がってるじゃないですか!」
俺は、声を荒らげてそう言っていた
その途端、俺は担当の女エルフに腹を思い切り殴られた
「ぐえっ!」
潰れたカエルのような声が出た
思わずうずくまる俺の頭を、足で地面に擦り付けながら女エルフは告げる
「まだ、自分の立場がわかっていないようだな」
グリグリと額に跡がつくぐらい地面に擦り付けた俺を、女エルフは無理やり立ち上がらせ
「気が変わった。 少し早いがガタリア様も許してくれるだろう。 お前にもあいつがしていることをさせる。 着いてこい」
俺は女エルフに引っ張られながら、どこかへと連れていかれた
「こ、ここは……」
そこで見た光景にユウはなんとも言えない感情になった
そこにいた奴隷達は、天井から紐で吊るされながら鞭で叩かれていた
その仕打ちに奴隷は
「ありがとうございます!」
とひたすら言っていた
そこにはあの奴隷三人組もいた
なんなんだここは!?
頭がおかしくなったのかと思った
こんな事があっていいのかと思った
これを自分がやるのだと思うと、不快感を覚えた
しかし、俺達奴隷に拒否権はない
奴隷となった者は|(物)として扱われるのだ
反抗すると、当然罰が下される
ユウも天井から紐で吊るされ、身動きが取れなくなった
パシンッ!
「──ッ!」
鞭で叩かれた
痛いのは当たり前だ
これを何度もやらされる
これになんの意味があるのだろうか
俺も最初は、痛いと泣き叫んでいた
何度も鞭で叩かれるうちに、礼を言えるようになった
体をアザだらけにしながら、ユウは調教を受けていた
長時間に及ぶ調教のうち、俺の心の中で何かが変わり始めていた
調教が終わり合流したカセスはボロボロになっていたのに対し、俺はイキイキしていた
俺の中に眠っていたドMの才能が変な所で開花してしまったようだ
それからのユウは心ここにあらずの感じで、作業も食事も集中できなくなった
意図せずユウは、あの調教の虜になってしまっていた
調教のせいで壊れてしまったユウを元に戻すため、カセスはこの施設からユウと一緒に出ることを決意した
それにはまず、壊れてしまったユウを正気に戻さないといけない
カセスはユウに語りかける
「ユウ! 君はこんなところにいていい人じゃない! 元の場所に帰らないと! 君を待っている人がいるんだろ!」
そのカセスの言葉で俺は正気を取り戻した
そうだ 俺にはカルディアが、メランが待っている
こんなところにいる場合じゃなかった!
俺とカセスは見張りの女エルフにバレないように出口を見つけようとするが、あっけなく見つかってしまった
俺とカセスは女エルフに、地面に押し付けられた
てか、女エルフってこんなに力強いの!?
俺も結構鍛えてるつもりだったんだけど
「実行犯はどっちだ」
女エルフに問いただされる
言えるわけが無い
助けてくれた、友人のカセスを裏切れるわけが無い
「言え! じゃないと、こいつみたいに足を折るぞ!」
メキメキっ
「ぐあぁぁぁ!」
骨が折れる嫌な音がした
女エルフがカセスの左脚を折った
ろくな物を食べていないせいからか、女の力でも俺たちの骨は簡単に折れてしまう
こんな事が許されてたまるか!
こんな暴挙が許されてたまるか!
俺は怒りをあらわにした
「ふざけんなぁァ!」
女エルフの拘束を振り解き、カセスを抑えている女エルフの顔を思いっきりぶん殴った
その瞬間、その場が凍りついたかと思うほど静かになった
「な、殴った、殴られたわ。 奴隷ごときが女性の顔に傷をつけるなんて⋯⋯」
カセスを掴んでいた女エルフは殴られた頬を抑えながら言った
「奴隷の分際で! 女性に楯突くなんて! 死ぬほど後悔させてやる! このクズがっ!」
ユウは女エルフにボコボコにされた
蹴られ、殴られ転がされた
せっかくガタリアのせいで腫れ上がった顔も元に戻りかけているというのにも関わらず
「すぐにガタリア様に報告しましょう! このクズを牢に閉じ込めといて!」
俺が殴った女エルフは最後にユウを蹴り飛ばして、どこかへ行った
それから俺はまた牢に閉じ込められた
どうやらここでは女性の顔に傷をつけるのは極刑らしい
男尊女卑ならぬ男卑女尊的な感じか
普通ならその場で切り捨ててもいいらしいのだが、奴隷長ガタリア=アーネストの意向で、俺には裁判を経験させたいのだとか
エルフの裁判、男卑女尊 嫌な予感しかしない⋯⋯
俺は無事に生きてカルディアやメランに会うことができるのか?
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