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第11話 奴隷になりました

「ユウ様、ユウ様!  起きてください!」

 

 メランに起こされ、俺は目をこすりながら起きる

 まだ外はそう明るくない

 こんな早くに起こして、何かあったのか?

 ずいぶん急いでいる声だったが

 

「遠くから何か近づいてきます!」

 

 耳をすませてみると、遠くからドタドタと大勢の足音が聞こえる

 よく見てみると、一人の男が女達に追われていた

 男と女達は俺達の前を通り過ぎた

 

 かと、思いきや一人の女が俺の前で止まった

 

「男だああああああ!!」

 

 女はどこから取り出したのか、革袋を俺の頭に被せて連れ去った

 それはまさに一瞬の出来事だった

 メランもあまりの出来事に何も出来ず、ただただ呆然としていた

 この騒動の中、カルディアは一人スヤスヤと眠っていた

 


 気がつくと牢の中にいた

 足枷をはめられていて身動きが取れない

 これはあれか、捕まっているのか

 しかし、どうしたものか

 

 一人考えていると、そこへ女性がやってきた

 耳が長く、目鼻立ちが整っている。

 それに金髪ときた

 エルフだ エルフに間違いない

 俺を助けに来てくれたんだ

 

 そう思った俺は、その女エルフに助けを求めた

 女エルフは牢の鍵を開けて助けてくれる、と思ったらいきなり蹴飛ばされた

 

 え?  今、俺女エルフに蹴飛ばされた?

 助けに来てくれたとばかり思っていたんだが

 見当違いだったようだ

 

「ガタリア様がお呼びだ」

 

 女エルフから冷たい目で見られながら言われた

 なんだか少しゾクッとしたのはなんでだろうか

 ガタリアなんて聞いたことないぞ?

 

 足枷の鍵を外されたと思いきや、手に紐をかけられ再び自由を奪われた

 服を見てみると、ボロボロの布切れのようなものを着させられていた

 これじゃあ、奴隷みたいじゃないか

 

 そんなことを思っているユウをなんとも思わず、女エルフはずんずん先へ進んでいく

 やがて、一つの大きな鉄扉の前で止まった

 

「ガタリア様、例の者をお連れしました」

 

「入れ」

 

 中から女性の声が聞こえた

 凛々しくそれでいてどこか不気味にも思える声だった

 

 女エルフが鉄扉を開けて、紐を引っ張りながら中に入る

 紐で繋がれている俺も、強制的に中へ入ることになる

 

 鉄扉の中は、机と椅子しかない質素な部屋だった

 とても女性の部屋とは思えない

 その椅子に、一人の女エルフが後ろを向いて座っていた

 頭には軍服を思わせる帽子をかぶっていた 


「私はガタリア=アーネストと言う」

 

 そう名乗った女エルフは片方の目が赤く妖艶な女性だった

 格好も軍服に艶めかしいタイツをはいていた

 

「は、初めまして。 俺は──」

 

 俺も名乗ろうとすると、ガタリアに殴られた

 それもグーで、思いっきり

 は?  え?  訳が分からない

 

「いいか?  貴様は奴隷なんだ。 私の許可なしに行動しようと思うな。 男として生まれたことを後悔するんだな、このクズがっ!」

 

 また、殴られた

 奴隷?  この人は何を言ってるんだ?

 

「いいか?  私の一言で、貴様の人格を破壊することなんて造作もないんだ。 それを分かった上で行動しろ。このクズがっ!」

 

 それから、俺はガタリアによって主従関係をしっかり叩き込まれた

 終わる頃、俺の顔は元の顔が分からないくらいに腫れ上がっていた


 話から察するに、俺は奴隷としてここへ連れてこられた

 それからこの何度も俺のことを殴ってくる軍服のエルフが、この奴隷施設の第一責任者

 つまり、奴隷長というわけだ

 

 翌日から、俺は物のようにこき使われた

 地下鉱山を掘ったり、小さな部品を組み立てたり、膨大な土地の畑を耕すように言われたり

 毎日クタクタになるまで働かされた

 これじゃあ、フリーターの時と同じ いや、フリーターの方がマシか

 

 食事なんて、夕食しかないときた

 しかも、食堂自体が異様なほど汚い

 あちこちによく分からない動物の死体や、赤黒い染みがありとても食事ができる場所とは思えない

 他の奴隷達は気にならないのか、それとも諦めているのか何も言わず疲れ果てたような眼をしていた


 食堂の異様さに、驚いていると、後ろから早く入れ と急かされた

 夕食は茶色い豆が二、三個浮いたうっすいスープと、クソ硬いパン半切れだけ

 パンはスープにつけないと硬くて、とても食べれたものじゃないくらいだ

 こんなので、腹が満たされるわけが無い

 女エルフに抗議しに行こうとすると、近くにいた男が止めた

 

「止めとけ。 あいつらに関わってもまともに聞いちゃくれないさ」

 

 その男の人は奴隷になってからの時間が長いのか、俺がしようとする事が分かっていたようだ

 顎に少しだけ生えている髭がかっこいいおじさんだ

 

「諦めて食べろ。 生きるにはそうするしかない。 俺たち奴隷に選択肢はないんだ」

 

 そう言っておじさんは適当な席に座り食べ始めた

 他の人たちも同様に、何も言わず黙々と食べている

 こんなところにいたら、何もかもがおかしく思えてくる

 

 考えるのを辞め、俺も食べようと適当な席に座りスプーンに手をかけると、俺の手元からスープが消えた


 どこへ行ったかと探していると、俺の隣に三人組の男達がいて俺のスープを手にしていた

 俺はその三人組を見て嫌な予感がした

 

「お前、新入りだろ」

 

 と、ガリガリの男

 

「新入りごときが一丁前に食ってんじゃねーよ」

 

 と、チビデブ男

 

「新入りにはこれで十分なんだよっ!」

 

 と、ガタイのでかい男が俺のスープを頭からぶっかけてきた

 うーん……

 嫌な奴に絡まれてしまった

 

「ハハッ!  せいぜい頑張って生きろよ、新米」

 

 三人組の男は、俺を笑いながら去っていった

 頭からスープを被ってびしょびしょになった俺のお腹が、キュウと悲しく鳴った

 

 俺はちょっとやそっとの事じゃ、怒らないようにしている

 大事になるのが嫌いだからだ

 なるべく我慢を心がけている

 

 しかし、どうしたものか

 このままでは、この硬いパンを食べることが出来ない

 仕方ない、今日は諦めるか

 一日抜いたところで死にはしないだろ

 いや、明日のことを考えるとちょっとやばいかもしれないなあ

 

 そう思い立ち上がろうとしたユウの前に、スープがあった

 どこからと周りを見てみると、俺と同じくらいの男の子が、タオルを差し出してくれていた

 おじさんや嫌な三人組しかいないと思っていたこの場所に、こんな心優しい人がいるなんて!

 優しい なんて優しいんだ!

 

「あのー、大丈夫ですか?  良ければ私のスープ飲んでください。 私は大丈夫ですから」

 

 そう言って男の子は、スープで濡れた俺の頭を自分のタオルで拭いてくれた

 男の子がくれたスープはすっかり冷めていたが、俺の心は男の人のおかげでほんのり温かくなった

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