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第10話 星が輝く夜に

 ドワーフの村から出た時には、もう外は暗くなっていた

 暗い時に動いても何だから、今日は野営をすることにした

 森の中なら安全だろうと、森の開けた場所を拠点にすることにした

 空には幾多の星が輝いており、沈んだ俺達の心を励ましているように見えた

 

「野営をするのか?  なら、居城を構えなければな!」

 

 いやいや、そこまでしなくても

 夜を明かすだけだから、別に家とか必要ないし

 

 俺は近くから木の枝を集めてきた

 あ、火どうやってつけるんだろ

 

「火なら我がお付けいたしましょう!」

 

 そうだった メランはドラゴンなんだった

 フゥーッとメランが木の枝に火を吹いた

 うわぁー 楽チンだぁ

 

「ユウさん、これどうします?」

 

 カルディアは結構な量の食料を持っていた

 ドワーフの村から出る時に、ナノスや他の村人から野菜とか果物みたいなのを貰ったんだよな

 特に村の発展に貢献したわけでもないんだが

 ドワーフ達は、全くお人よしが過ぎるぜ 

 カルディアによると、問題なく食べられるみたいだけど

 

「あ、あのーカルディアさん?  それはなんですか?」

 

 カルディアが取り出したのは鍋

 誰がどう見ても鍋だった

 土鍋というよりかは、中華鍋といったほうが適切だろう

 

「これですか?  これも貰ったんです、ドワーフのお母さん達から」

 

 いい人達だぁ

 見ず知らずの人に鍋をくれるなんて

 ありがたく使わせてもらいましょうか

 あの鍛冶バカのドワーフが作った鍋だ

 使えないわけがない

 

 鍋に川からくんできた水を入れて沸騰させる

 沸騰してきたら、その中にメランとカルディアが切ってくれた野菜や果物を入れていく

 

 ほとんどの具材から、出汁は取れるんだけど⋯⋯

 なんというか、無いのは分かっているけどしょうゆが欲しいなぁ

 と、思っている俺の目の前でカルディアがポーションを取り出した

 

「え、え?  あのーカルディアさん?  それってポーションじゃないんです?」

 

「えっと、これはポーションの製造中に失敗したもので、ここでは調味料として結構使われてるんですよ。 実はこれもドワーフの村で、いくつかもらったものです」

 

 へ、へー そうなんだ

 色はしょうゆに近いけれども味は⋯⋯

 

「しょうゆだ、ん?  トンカツソースか?  いや、オイスターソースにも思えてきたぞ?」

 

 なんだなんだ、この不思議なポーションは?

 いや、ポーションの製造中に失敗したやつだから正確にはポーションでは無いのか

 

「ショーユ ってなんですか?」

 

 カルディアが聞いてくる

 

「俺の故郷に伝わる調味料だよ。 この調味料がしょうゆに似た味だったから思い出したんだ」

 

「そうだったんですか」

 

 カルディアはそう言った俺を悲しそうな目で見てきた

 そうか、カルディアも両親のことを思い出したいんだったな

 なんか手がかりになるようなものは無いだろうか

 

「いい匂いがしてきたぞ!」

 

 メランが鼻をヒクヒクさせながらやってきた

 メランは外に敵|(魔物)がいないか探索してくれていた

 ほんと役に立ってくれている

 

「出来ましたァ!」

 

 カルディアはそう言って、|(これも貰ったのだろう)お椀を取り出して三人分取り分けていく

 

「いただきまーす」

 

 ……美味すぎるだろ!

 俺の知らない食材からこんなに美味い出汁がとれるのか?

 その食材から出た出汁が、しょうゆポーションと絶妙に絡まり合いクセのない味を生み出している!

 ただの煮物にしては旨すぎる!

 

「はあーー 食った食った」

 

 俺達はあっという間に鍋いっぱいだった料理を平らげた

 いやー、ほんとに美味かった

 

「そう言ってもらえて、作ったかいがありました。 ふわァァ」

 

 カルディアは大きなあくびをした

 顔がみるみるうちに赤くなる

 

「カルディア、眠たいのか?」

 

「い、いえ!  全然です!」

 

「無理するなよ。 あとは任せてくれ。 カルディアは先に休んでいろ」

 

 もちろんこれは本心だ

 女の子にあまり無理強いはしたくない

 メランはドラゴンだから、また違う話になってくるかもしれないけれども

 

「……ではお言葉に甘えまして」


 俺はすぐに眠ったカルディアに、毛布をかけてあげた

 そういえば、メランはまだ外で見張りをしてくれているのだろうか

 少し様子を見に行ってみるか

 

 メランは、高台からドラゴンの姿で夜空を見上げていた

 そんなメランに話しかける

 

「綺麗な星空だな」

 

「そうだな」

 

 俺が初めてメランに会った時に斬ってしまった左の角も、まだ完全にでは無いが少しづつ伸びているようで安心した

 

「メランは、魔王のこと知ってるのか?」

 

 ふと気になったので聞いてみた

 

「知ってるぞ。 一応人の分類では我々ドラゴンも魔物の内に入るらしいからな。 それぐらい知ってても不思議はない」

 

 そ、そうか

 なんか複雑なんだな

 

「実は魔王には子供がいたんだ」

 

 子供?  そんなのいたか?

 

「魔王は神の誰かとつがいになって、子供を授かった。だが、その子供がどこで誰と何をしているかまでは我にもわからぬ」

 

 そうか⋯⋯

 魔王にも子供がいたのか

 なんか悪いことしちゃったみたいだな

 

「別にユウ様を責めている訳では無いぞ!  ただの世間話と思ってくれていい」

 

 ほんと気が利くドラゴンだこと

 

「それよりも、ユウ様の故郷の話をしてくれないか?  あの食事の時に言っていたショーユとやらの話とか」

 

 えー しょうゆであんまり話、膨らまないんだけども

 俺は他の世界から来た事は伏せておいて、自分の住んでいた世界の事を教えてあげた

 

「ほぉー 世界には我の知らないものがまだまだあるのだな!  一度行ってみたいものだ!」

 

 無理無理!  来たら大事件になっちゃうから!

 

「それで、メランの方はどうなんだ?  メランの故郷の話とか面白そうじゃないか」

 

「我の故郷の話なんかしても、面白くないだろ」

 

 い、いやそんなことないと思うぞ?

 ドラゴン族なんて、滅多に見ないし

 

「そうか? だが今話すのもあれだから、来るべき時が来たら話すことにしよう」

 

 メランはそう言って、見張りに戻った

 うーん…… 何かあったのか?

 深く掘り下げるのも、メランが嫌がるだろうし

 気にはなるが、しばらくそっとしておこう

 

「そ、そうか メランもあまり無理はするなよ」

 

「分かっている」

 

 俺は首を傾げながらも、カルディアの元へ戻った

 ほんとに可愛い寝顔だな

 スマホがあったら待ち受けにしたいぐらいだ

 

 俺は何かの拍子にカルディアに変なことをしないよう、いくらか離れたところで眠ることにした

 あくまでも、保険である

 

 ユウが完全に寝た後、一匹の蝶が飛んできた

 

「心配で見に来ちゃったけど、特に問題はなさそうね」

 

 お忍びでエウカリスが、蝶の姿でユウの様子を見に来たのだ

 

「このまま何も起こらないといいんだけども⋯⋯」

 

 そう言って、エウカリスは去っていった

 その言葉通り、何も起きない はずはなかった

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