第二話:歴史
「化け猫ながら、あなたに惚れてしまったんですよ。まだ、私と結婚したいと思えますか?」
時は1200年、猫又180才。
生まれたときは普通の猫だったが、100年以上生きたことで神通力を得て、人の姿になるなどの能力を持った。そして...人に恋をした。
相手は武士の娘。猫又(当時はミケと呼ばれていたので以下ミケ)がよく出入りしていた横山という武士の家の娘で、
よくミケをひざにのせてなでたり、汚れていたらたらいで洗ったりしていた。
…そして、ある日。ミケは決意した。人の姿をして、その娘を訪ねた。そして、段々と親しくなっていった。
ミケが猫の姿のとき、寿子(その娘の名)はこんなことを言った。
「あのねミケ。私、もうすぐ結婚するかもしれないの。私を好きなように見える人がいてね、私もその人を好きだから。」
それは、ミケが猫であったから言えたのだろう。
しかし、当然だが、どうしてもミケと薬師与一学徳(ミケが人の姿の時の名)は顔をあわせることはない。
あるとき、寿子は言った。
「あなたに会わせたい猫がいるんです。よくこの家にくる三毛猫なんだけど、オスらしいの。珍しいんですって。」
これは、何と答えるべきだろうか。
「あ、もしかして猫は嫌い?」
そんなわけないだろう。猫なんだから。まあ、猫より好きな人間はいるが。
「いえ、その猫を知っていると思っただけです。」
「あら、そうなの。」
その一言の間に決心がついた。
「ちょっと見ていていただきたい。」
そして、寿子の前で猫の姿になった。
「……」
何も言えなくなっているようだ。
「私がミケです。」
人の姿に戻って言った。
「……」
「化け猫ながら、あなたに惚れてしまったんですよ。まだ、私と結婚したいと思えますか?」
…墓穴を掘っている。寿子は猫と結婚しようなどとは思わないだろう。
「…ええ。」
なに?
「あなたが猫だとしても、私はあなたが好きです。結婚も、…あなたが望むなら。」
そして、より関係は親密になり、学徳(ミケが人の姿の時の名)は横山に頭を下げ倒して、二人は結婚した。
その第一子(男)の幼名は隼人。やがて猫神家初代当主、猫神太郎泰幸となる。
「…って感じで猫神家は出来た。」
「つっこみ所満載だな。」
「そうか?」
「ああ!!まず、『長くいられない』とか言ってたくせに、なんで長話してんだ?」
「ああ、あれはあの場所だと人目につくからという意味で...」
「おいおい...あと、俺はお前の子孫なのか?」
「そうだ。」
「かんべんしてくれよ。あと、物理的に人間と猫の間に子供ってできるのか?」
「化け猫だから。」
「ラスト。お前染色体異常?」
「…たぶんな。」