招かれざる客
いらん客はいらん客を呼ぶ。
アナスタシア様のことではない。
私たちの恩赦(受けてないけど)を聞いて、王都から騎士団長の孫がキタ。
ハルト様の側近候補だったけど、ふしだらなイリーナ・オルコットに熱を上げ、婚約者をないがしろにして婚約破棄された人その1だ。その5までいる。ウザい。
わたしはハルト様のお友達だと思っていたけど、ハルト様はそう思ってなかったとか。友情にも片思いってあるんだね。
扉をドンドンされたので、地下食料庫に逃げた。施錠は完璧だけど、いかんせん掘立て小屋だ。相手は武器を持った馬鹿力だ。
案の定、扉をやぶられ、地下庫まで探しにきやがった。
ワインが少し残った樽に隠れておいてよかった。
樽の底の蛇口をひねって空樽とわかるなり、即座に破壊したからね!
「迎えに来た! 結婚するぞ!」って、叫んでた。「照れてないで出て来い!」「足の骨を砕いてやる!」とも。怖い。
ちなみに、その2以降も続々と登場予定らしい。
賭けで勝った順にプロポーズしに来るんだとか。
わたしには夫を選ぶ権利があって、「みんなで」仲良く暮らすんだそうな。
何故かハルト様も頭数に入ってるって言ってた。なんで? 超怖い。
あと、エリザベート様と和解して、「愛の巣」を下賜されたって!!!
いやもう、あの人、わたしになんの恨みがあるわけ?! 超超超超超怖い!!!!
やがて、足枷をジャラジャラしながらハルト様が帰ってきた。樽の前でいろいろ説得してたけど、王族じゃなくなったハルト様に、彼奴を止める権力はない。
「オレたちは悪辣な婚約者から解放され、天使の共有を許されたんだ。喜べよ、リーンハルト」って100%の善意を向けられたら。再会を喜んで肩を叩かれたら。もう絶句するしかないよね。
食事を運ぶおかみさんが「恩赦の時に、本人の強い希望で女子修道院に入りました」と、機転をきかせてくれた。
その1、がっくりきてたよ。
「まさか、俺たちへの愛を捨てるなんて」って、その思考回路がまさかだよ。
ちなみに、おかみさんはエリザベート様の諜報員なんだけど、最近アナスタシア様に鞍替えしたんだって。うん、そんな気はしてた。
市井で花を売っていたわたしは、お母さんの死後、よく花を買ってくれた男爵様にひきとられた。男爵様は、公娼になるか、メイドになるか、選ばせてくれた。
メイドになっても孤児じゃ、結婚相手を選べない。でも、公娼なら、ある程度は自分で客を選べる。だから、公娼にした。
たまたま勉強が向いていたみたいで、箔付けの為に貴族の学園に通うことになった。
そこで将来の顧客たちにまさかのロックオンされて、王子さまにかくまってもらえて。
その王子さまと冤罪をでっち上げられて、辺境に追放された。辺境では、ひたすらレース編み。今度は、女子修道院かあ。
我ながら、やたら流転の人生だな。なんか……気持ち悪い。




