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きっと私は幸せになる  作者: ねーさん
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別れの時

店の寮に入ってからは、仕事の幅が広がった。寮には店の女の子が他にもいる。

お客さん達と昼間食事に出かけたり、ゴルフの練習に付き合ったり・・・。娘の事を忘れるためにも、私は仕事を頑張る事にした。


水商売を始めて10年以上が経っていた。お金もかなり溜まった。私は年に一度中国に帰っていたが、

この年、貯金したお金で実家を建て替えた。4階建ての豪邸だ! でも中国では豪邸を建てても2000万円くらいで建てられる。

全額は貯まっていなかったけど、1500万円程を支払い、残りは弟の名義でローンを組んだ。

だって、この家の主人は弟だもの。残りは弟が働いて返していく。手伝うからね、頑張って返していって。

念願の家を建てた。これで私は自由になれる! そう思っていた。

でも、そうはならなかた。再婚の話だ。

両親特に母親は再婚を望んでいた。勝手に再婚話を進めていて、相手を決めていた。

相手は、実家の近くに家があり、会社の社長。バツイチで息子が一人。

何度も母親とは衝突した。

「私には二人娘がいて、二人とも日本へ行ってしまった。私の老後はどうするの!?」 

母親は自分の老後の心配をしている。”私の人生は?” と聞き返したくなるけど、それは言えなかった。

日本人でここまで自分の思いを強く押し付ける親はいないだろう。でも私は中国人だ。中国人は両親には逆らえない。

中国人は、日本人よりもずっと親を大切にする。


2年程再婚の話を保留していた。相手とも会ったが、どんな人なのかもよくわからない。

ただ、私は37歳になっていた。このまま一人で生きていくつもりでいたが、再婚するとしても最後のチャンスだ。

それで母親が喜ぶのであれば、結婚してみようと思った。


話はとんとん拍子に進み、私は一旦中国へ帰る事にした。

店を辞め、中国で暮らそう。でも、娘がいるから日本から離れたくない思いもある。

新しい旦那は、会社の社長でお金も持っている。日本と中国を行き来すればよい・・と思った。


再婚を決め、まずは娘と会った。これまで月に1度会えていたのが、里親の転勤もあり、少し遠くへ行くことになった。これが再婚への最大の決定打だったかもしれない。

1日だけ時間を貰った。買い物をして、海沿いの公園や山へ行き、一日を楽しんだ。

娘は15歳になっていた。もう少し大きくなって、娘が自分で親を決められる様になったら、一緒に暮らそう。そう約束した。

娘と会えない事がこんなに辛い事だとは、別れた後に気が付いた。


7人の彼氏達ともお別れしなければならない。事情を話し、そのまま受け入れてくれる人もいた。

「彼氏じゃなかったのか!?」と怒ったり、泣き叫ぶ人もいた。

でも、娘との別れを考えたら、彼氏達と別れる事は涙も出てこなかった。


その地方都市での最後の日、友達と食事をして行き慣れた公園へ行った。ちょうど桜が舞い始める4月だった。

公園で私は泣いた。この街に来て、娘を育て、私なりに生きてきた。この街で過ごした日々を思い出し、ずっと泣いていた。


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