#4 癒しの将来を今思い馳せる過保護兄
「ただいま……」
玄関から落ち着いた声が聞こえてきて四葉がリビングから顔を出す
それ主婦の母親がやる事なんだよな…と思った声の主に首を傾げながら、四葉がほんわか声をかける
「あ、おかえり千陽……」
「………ほの、また熱出たの、抱っこしてるけど」
昼寝を終え、四葉が起きた際、離れたがらなかった穂乃果を話すのも可哀想だとそのまま抱えていたら千陽が帰って来るまで抱っこ強請りが続いていただけである
穂乃果に甘いのと穂乃果が甘えん坊過ぎるだけである
そして千陽の甘えん坊グセが減ったのは、自分も最近まで甘えん坊癖があったが、人から見るとああなんだな…と控えようとしているからである
ただ、ガッツリ寝ぼけていると普通に甘えるし、ボケっとしていると昔からの癖で甘えているので今更甘えん坊が治らないような気もする
「あーいや、抱っこして欲しいらしくて……」
「あんまり甘やかすと、穂乃夏の為にならないからね、もう中学生なんだし躊躇い持たせなよ」
これを千陽の幼馴染に聞かれた場合“お前寝ぼけてる時兄貴の名前しか出さねえじゃん”と言われるのである
そう、林間学校でやらかした
先生に泣き出したというのも複雑だっただろうに、泣き出した千陽の為に家に電話を掛ける許可をもらい教師のスマホで電話を掛けるという珍事を起こした千陽
でも寝ぼけていたから覚えていない
そしてクラスメイトも茶化すなと幼馴染に言われ(脅され)当人は全く知らないが、以来やたらと甘やかされるようになった(というか、イジメようものなら千陽過激派の幼馴染に物理で殺されかねない)
「うぅ……だっていつか結婚して出ていくのかと思うと……」
半分寝ている穂乃果を抱えながらその場に座り込む四葉
「戻ってくるだろうが……後、父さん以上に父さんみたいな事言うのやめなよ…父さんも泣いてたケド…」
ちなみに、千陽でも号泣できる自身がある四葉
まあ、千陽は人間に対する不信感が人一倍強いので、他人といえば幼馴染がいない場合、寝ぼけることは愚か、幼馴染が居ないと“絶対話さないし寝ない”子である
まあ、でも四葉や穂乃果、両親の前だと気が緩んで饒舌になる為、そんな事を言われても誰も信じてくれなかったりする
そして中学の千陽の担任が千陽の声を聞いたのは中学2年生になってからという無口ぶりである
「千陽くぅん……」
「ふん……」
「千陽くぅぅぅんっ」
四葉は千陽を後ろから穂乃果を抱えたまま抱きしめてその後長時間嘆いていたのだった…