#2 お兄ちゃんでお母さんで聖母で呑気
「…はぁ……」
幼い頃から人との付き合いは上手くなかった…
元々陰気な性格をしていて、手紙でなら難なく話せるのに、現実での会話は実に酷く拙いのだ…
それが、ゲームでサイハと名乗り、現実では、ため息を付いたこの見た目は中学生位なのに実年齢二十歳超えのフリーゲーム製作者にしてプログラマーの緋景四葉だった…
妹からは【よぅちゃん】なんて呼ばれている
妹も兄のオドオドした態度に煮え切らない気持ちもある…が、原因があるので何も言えない
弟もいるが、弟は結構四葉に対して冷たい
まあ、それは妹の前では見せていないらしいので、面倒な兄弟である…
妹が生まれた時はすでに中学生だった四葉は、弟の面倒を見慣れていた事もあってか、実母や実父よりも子供の扱いに長けていた
妹が1歳になった頃からのお風呂やらを一人で入れていて、弟もそこに混じって四葉っが面倒を見ている程だったのだ…
勿論、親も妹を育てる事は当然していたが、如何せん四葉が出来すぎた
その為出る幕がなくて弟が多々両親に拉致されている姿がよく見られたのだ…
四葉は首を傾げるだけで、弟に良かったね、と微笑むばかり
当時はまだ子供らしかった弟は四葉にベッタリで両親よりも四葉!!だった………
それが変わったのが、高校に入る前の四葉が自室に籠もり気味になり始めた頃の事…
後になって、小学生の頃からイジメられていた事実を知った
子供というのは実に残酷な存在だと両親は嘆いた…
イジメられるようになった原因は、四葉は普通よりも女子のような見た目だったが、妹ができて髪を切る余裕が四葉にはなかったのだが、それがまず1つ目の原因だそうで…
まあ、要は女子からは妬み、男子からは中学生特有の面倒くさいタイプの仲良くなりたいけど無理だわ、みたいなそれである…
後は自分たちと見た目が違う、である
それでも、四葉にとって妹と弟がいれば自分は二の次という性格だった為だ…
まあ、閉じ籠もるなんて言っても、ストレス発散=料理&家族でいること!!だった四葉にとって何よりも自宅が一番のいやし空間だった
それを知ってからというもの、両親は無意識に甘えようとする四葉を甘やかした
やる事はちゃんとやる
悪い事はきちんと謝る
そう理解できている四葉が悪い事をする事は全く無かった…だけど…
だけれど…それでも日に日に陰湿なイジメから分かりやすいイジメにまで発展し、四葉の口数は減っていった…
「よぅちゃんだいじょうぶ?ほぉちゃんよしよししゅる?」
3歳になった妹、穂乃夏は勉強に関しては現在難があるけれど、幼い頃から人を思いやれて労わる事の出来るいい子であった…
四葉は面食らっていたものの、苦笑して
「お願いします、ほぉちゃん」
と頭を差し出したのだ
穂乃果はお姉ちゃんになりたいと、この頃よく言っていた事もあって、四葉も弟のように穂乃果へ愚痴を言う事があった
子供が理解できる程度の【最近ご飯の味美味しい?】なんて事しか言わないけれど…
穂乃果は頼られたい精神が強かったのだろう
喜んで美味しいよ!!と四葉へ笑顔を見せてくれる
それだけで四葉は幸せだった
頭を撫でられるだけで満たされるなんて面白いなぁ、なんて思う四葉だけれど、相当疲れているのは確かな事なのだ
両親は四葉がやりたい事なら応援したし、転校したいなんて言い出したらいつでも動けるようにしてはいたが、本人はその気が微塵もなく、それにはお人好しだなぁ、なんて思ったくらいだ
そんな兄を見て育った弟は他者との付き合いが結構苦手なのか、解ってくれる友人が数人しかいない…
まあ、そんな友人たちは四葉にとても良く懐いていて、宿題なんかの自分たちでも解らない問題を四葉に理解できるまで教えてもらっている
そんな四葉は一時期頑張って家庭教師をやっていて、人へ教えることは楽しい、そう笑う四葉に両親もホッとしていた
それでも、大学に入っても四葉を取り巻く環境には必ずイジメなんていう下らないものがついて回っていた
言い返さない兄に弟がどんどん冷たくなっていったのは、言い返さないのはおかしい、けど兄にそれは言いにくい、もやもやする!!と一人百面相していたからである
子供というのは悩んでなんぼだね~と呑気に言う四葉に半ギレた弟は悪くない
だって当の本人が一番向き合う気がないのだから
向き合う気はないのは解るが、解決できないにしても素直に相談だけはして欲しかった…
まあ、こんな感じのお話である…
四葉君は人に優しすぎる設定です