第39話 三枝をどのパーティに?
続いて、
「ミャーの装備生成スキルには素材が必要なんだけど……」
「さっきの報告でアイテムを獲得していたパーティがあったよね。もし良かったら協力してくれないかな?」
ちなみに申告があった獲得アイテムは――。
※
2階層攻略時点での獲得ドロップアイテム。
『ホーンラビットの角×1』所持者:三枝勇希
『ホーンラビットの肉×2』所持者:宮真大翔、大弥秀
『ワーウルフの牙×1』所持者:宮真大翔
『ワーウルフの爪×1』所持者:宮真大翔
『スライムグミ×1』所持者:宮真大翔
『棍棒×1』所持者:九重勇希
『木の盾×2』所持者:九重勇希、七瀬奈々果
『赤い宝玉×1』所持者:久我直人
※
生徒たちがアイテムを机の上に出していく。
ドロップを敢えて申告していない者もいるだろうが、それを疑っても切りがないだろう。
この中で武器生成スキルに使えそうな素材があればいいのだが……。
「え~と、ちょっと待って、この素材の中から生成できそうな装備を調べるから」
「調べるって、何かリストみたいのがあるの?」
尋ねたのは此花だ。
「うん。装備生成スキルの効果の一つみたい。
素材を手に取ると、生成可能な装備リストが画面に表示されるの」
説明しながら、桜咲はリストを確認していく。
「あ! 生成可能な装備発見! 『ホーンラビットの角』から『ホーンラビットの槍』って武器を生成できるみたい。
攻撃力20。獣系のモンスターに対するダメージが5%増加だって」
「そ、そんなに強くなるの?」
武器の持ち主である三枝が驚愕した。
ホーンラビットの角の攻撃力10の為、明らかに強力な武器に変化するようだ。
「ねえ、三枝さん、折角の機会だし、このまま生成してみてもいいかな?」
「あたしは構わないけど……」
いいよね? と、三枝が俺に視線を向けた。
元々、俺が獲得したアイテムを三枝に渡していた為、確認を取りたかったようだ。
俺は言葉を返す代わりに、頷くことで肯定を伝えた。
「それじゃあ……桜咲さん、お願い!」
「了解! じゃあいくよ! 装備生成!」
スキルを発動した瞬間、桜咲が手に持っていた武器が強烈な輝きを放った。
そして輝きが弱まる。
「え~と、これ……一応……成功したみたい?」
不安そうな桜咲だが、ホーンラビットの角は間違いなく形状を変化させていた。
「ちょっと待って。今、確認してみるから」
武器を受け取り、三枝が鑑定スキルを使う。
「え~と……武器の詳細はこんな感じみたい」
※
・武器『ホーンラビットの槍』
装備可能レベル3以上。
攻撃力:18
獣系のモンスターに対するダメージ3%増加。
※
鑑定スキルによる詳細情報が三枝の口から伝えられた。
だが、おかしい。
確か桜咲は攻撃力20と言っていた。
それに付加効果も弱くなっている。
「聞いていたよりも、性能が下がってるみたいだね。
生成に成功しても、本来の性能にならない可能性もあるのかな?」
皆を代表して勇希が事実を口にする。
「にゃ~……多分、そうみたい。
装備生成スキルの詳細に――成功率はスキル保持者の熟練度に依存するって書かれてるから」
「鍛冶や装備生成には、スキルの熟練度という項目があるのかい?」
大弥がそんな質問をしたのは、魔法やスキルには熟練度が存在しない為だろう。
「確認してみたけど、鍛冶スキルの詳細画面には熟練度って項目はないみたいだ」
「ミャーの装備生成スキルも同じ」
詳細に書かれている事に嘘があるとは考えにくい。
「マスクデータ――隠し要素のようなものじゃないか? ゲームにはそういうのが良くあるだろ?」
先程までつまらなそうな顔をしていた久我が、興味を持ったように口を開く。
「つまり久我くんは、見えていない隠されたステータスがあると考えているんだね」
久我の意見を、大弥は肯定的に受け止めていた。
可能性としては充分に有り得る。
セーブやロード、リセット――やり直しのできる都合のいい要素は排除されているが、この世界はゲーム的に作られているのだ。
全てが詳細情報として表示されていなくても、何らおかしいことではない。
「うわっ……なんかオタクくさっ……」
「だよね~。ゲーム感覚とかありえないわ」
「少し不謹慎な気がするよね……」
七瀬の取り巻きたちが苦言を呈する。
さっきの傲岸不遜な態度もあり、久我は女子グループに悪い印象を持たれているようだ。
「っ――さっきから貴様らは! ぼくに喧嘩を売っているのかっ!」
苛立ちを隠そうともせず、久我は怒声を上げた。
どうやら受け流すということができない性格らしい。
「く、久我くん……落ち着いて。
キミの推測は参考になったよ事実がどうかはわからないけど、瀬乃くんと桜咲さんは、できる限り沢山スキルを使ってみてほしい」
「努力あるのみだな」
「うん! 瀬乃っち、鍛冶屋同盟としてがんばろうね!」
言って、二人は握手を交わした。
今後の探索を優位に進める為にも、貴重なスキルを持つ彼らの成長に期待したい。
「あとは……パーティの再編成と、三枝さんの所属先も決めようか」
鍛冶スキルの実演が終わった為、大弥は後回しにしていた難題を切り出す。
間違いなく、久我を進んで受け入れてくれるパーティはないだろう。
大弥もそれをわかっているのか、まずは三枝に目を向けた。
「三枝さん、説明してなかったけど一組は探索を強制してはいないんだ。
ただし攻略パーティに所属しない場合は、何か仕事を持ってもらうことになってる。料理や掃除……自分にできることをしてくれたらいいから」
「えっと、あたしは……」
逡巡しているのか、三枝は視線を伏せた。
が、直ぐに答えを出したのか、大弥の顔を真っ直ぐに見つめる。
「……あたしは、攻略班に所属するつもり」
そして自らの意志を口にした。
「わかった。
それなら、三枝さんにはどこかのパーティに所属してもらいたい。
現在は五つ……いや、一つ解散予定だから、四つのパーティになるんだけど……」
1組のパーティ状況を確認する三枝。
そして選んだのは、
「できたらなんだけど――」
「良かったら、わたしたちのパーティに入りなよ」
答えが紡がれる前に、七瀬が口を挟んだ。
良かれと思って提案しているようだが、本人の意思を確認する気はないのだろうか?
「久我が抜けて、三枝さんが入ってくれるなら、うちのパーティは再編成完了でよくない?」
「それに~、マッピングスキルっていう凄い力を持ってるんでしょ?」
「三枝さんが入ってくれたら、心強いな」
同じパーティの伊野瀬たちも歓迎しているが、三枝に入ってほしいというよりマッピングスキル目当てなのだろう。
「ちょっと待ってよ。七瀬さんたちずるくない?」
「は? ずるいって何が?」
「だって、三枝さんは便利なスキルを持ってるんでしょ? なら、彼女がいるパーティは探索も楽になるじゃん!」
「それ思った。
うちらも、あの子と同じパーティがいいんだけど?」
次から次に身勝手な意見が飛び出す。
クラスメイトたちは誰一人、三枝の意志を聞こうとする者はない。
「おれらのパーティは、久我のせいで平均レベルが一番低いだろ?
三枝さんが入ってくれたら、生き残れる確率も上がると思うんだよな」
「レベルが低いからこそ、ダンジョンを彷徨ったほうがいいんじゃない? そのほうがモンスターといっぱい戦えてレベルも上がるだろうし」
協調性に欠けたまま、会議は続いていく。
誰も引く気がない以上、意見はまとまりそうにない。
「ねえ、大弥くんはどうしたらいいと思ってるの?」
「そうだな。
意見を聞かせてくれよ」
こういう状況で大弥はどう動くのだろうか?
俺は事態の動向を見守った。
「……わかった。
僕の意見も伝えておくよ。
三枝さんは――九重さんのパーティに所属してもらうべきだと思ってる」
大弥の言葉に迷いはなかった。
この態度からするに、最初から考えは決まっていたらしい。
「え!? どうしてよ大弥くん?」
「九重さんと宮真くんは、1階層、2階層ともにダンジョンを攻略しているからさ」
「でも、それは三枝さんのマッピングスキルがあったからだろ? おれらもマッピングスキルがあれば、ダンジョンの攻略くらいできると思うぜ?」
「もしそうだとしても、彼女たちには二つの階層を攻略した実績がある。
それに、ぼくは可能な限り探索は効率的に進めたい。
レベルが低いパーティよりも、高いパーティのほうがモンスターと戦闘になっても生存率が高い」
シビアだが合理的な意見だ。
弱いパーティは全滅の危険性も高い。
それで優秀なスキルを失っては、クラスの為にはならないだろう。
「……でも、それってずるくない? 強い人と、いいスキルを持った人が集まっているパーティがあるなら、うちらが探索に出る必要なんてないじゃん」
「そんなことはないよ。
それぞれのパーティで役割を決めたらいいんだ。
実際、一つのパーティだけでは、広いダンジョンの探索を全てこなすのは難しい。
みんなが探索に出てくれることが、いい結果を生むかもしれない」
「いい結果ってなんだよ?」
「たとえば、強い装備や貴重なアイテムが手に入ったりだね。
それに、生き残るにはレベルの底上げは必須だよ。
……三枝さんの加入するパーティが、最悪のケースになる可能性が高いことを想定するなら、尚更ね」
「最悪のケース?」
察しが悪い奴もいたものだ。
あえて大弥が口にしなかったことを、わざわざ聞くのか。
「探索の効率が上がるっていうのはメリットばかりじゃない。
そうだよね、九重さん」
話が振られ生徒たちの視線が勇希に集まる。
「うん。ダンジョン内で迷わなくなるの便利だけど、探索の効率が上がった分、モンスターとの遭遇率も上がっていたと思う。
私たちの班の平均レベルが高いのは、そういう理由があるんだと思う」
勇希の発言に、皆が顔色を曇らせる。
「ま、マジで……?」
「……安全に探索ができるわけじゃないの?」
「今、九重さんが言ったことだけど、ダンジョン内で迷わない――そういう意味では安全なんだろうね。
でも、探索効率が上がるということは、まだ誰も通っていない通路やフロアに入ることになる。
そこには多くのモンスターや罠が仕掛けられている可能性がある。
……言いたくはないけれど、最悪それはパーティメンバーを失うことにも繋がる」
そんな当たり前の話に、生徒たちは騒然となった。
「三枝さんの入るパーティは、攻略の中心になってもらう必要がある。
大きな危険を強いることになるけど、ポイントというシステムがある以上はそれがクラスの為なんだ」
大弥は、あくまでクラスの為の意見であることを強調する。
私心のないことを伝えておくのは、大衆を説得するには有効的な手段だろう。
「だからこそ少しでも危険を減らす為にも、三枝さんには平均レベルの高いパーティに加入してもらいたい。
都合のいいことばかり言っていると思われるかもしれないけど、僕は誰一人、クラスメイトを失いたくはないから」
そして最後に理想を語った。
人は必ずしも合理的な思考で動けるわけではない。
寧ろ理想こそが人を惹き付ける。
これを計算でやっているのなら、大弥は優秀な指導者になるだろう。
「そ、そういう理由なら、仕方ないかもね」
「だな。
三枝さんがパーティに入ってくれないのは残念だけど、おれらもできる限り探索を頑張らせてもらうからさ」
説明を受けて納得したのか、クラス内の険悪なムードが消えていた。
「ダンジョン攻略は最優先だけれど、各パーティがそれぞれの目的意識を持って行動してくれるのはありがたいよ」
「ああ! 3階層では色々と考えて行動してみようぜ!」
「2階層はモンスターと戦うだけで必死だったけど、ダンジョン内の宝箱を探すのもありだよね! それが攻略の役に立つかもしれないわけだしさ」
さっきに比べれば、まともな意見が出始める。
これで会議は建設的に進みそうだ。
「それじゃあ、決を採りたいと思う。
三枝さんは九重さんのパーティに所属で問題ないね?」
「OK~」
「それでいいよ」
「わたしらも構わないよ」
各パーティの賛成を得てから、大弥は三枝を見た。
「三枝さんはどうかな? 九重さんや宮真くんと一緒のパーティで問題ないかい?」
「う、うん! あたしは大丈夫! ごめんね、七瀬さん……折角誘ってくれたのに」
「いいよ。大変な役割だけど……がんばってね!」
「うん! ありがとう」
「じゃあ、三枝さんは九重さんのパーティに加入して欲しい。
それと……久我くんをどこのパーティに加入させるかなんだけど……」
話を合いを進めていく中で、最終的に各パーティの再編成をすることになり……メンバーが確定したところで、今日の会議は解散となった。




