第21話 タウンの構造
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勇希たちと合流して、ここが学生寮と同じ構造であることを伝えた。
「寮と同じならこの建物は5階建て。
1階は食堂とかお風呂とか……まぁ、色々と寮の施設があったね。2階から5階は寮生の部屋になってる」
此花のお陰で寮の構造はおおよそ把握できた。
その上で全ての階を調べる。
ここまでモンスターとは一切遭遇していない。
気配も全くない為、タウンの安全は確保されていると考えて間違いなさそうだ。
が、まだまだ問題は山積みだ。
「……構造は同じだけど施設が一切ないんだよね。
浴室すらまるまると抜けちゃってるもん」
此花が口に出して指摘する。
風呂やトイレは勿論だが、水道もなく飲み水すら確保できない。
「……これって……ポイントで購入しろってことだよね」
勇希に問われて俺は頷いた。
ポイントの重要性を否応なく意識させられる。
「物資の購入ついては僕たちだけで決められることじゃないから、みんなと話し合って決めよう」
「あのよ……前から思ってたんだが、オメーが仕切ってんじゃねえぞ」
大弥の提案が気に入らないのか、不良が噛み付いた。
「気に障ったら謝るよ。でも、こんな時だからこそ誰かが率先して……」
「だから、そういう役目はリーダーがやるもんだろうがっ! ね、そうですよね! 宮真くん!」
は?
なんで俺に話を振るんだ?
「わかってんのか大弥? 宮真くんがいるんだから、オメーが出しゃばんじゃねえよ」
「え?」
このヤンキーは何を言ってるんだ?
クラスリーダーはどう考えても大弥だろ。
俺がクラスを纏めるような人間に見えるのか?
「……わかった。確かに宮真くんになら任せられると思う」
「はぁ!?」
大弥まで何を言ってるんだ?
気は確かだろうか?
「んだよ。テメェもよくわかってんじゃねえか」
「……おい野島! こっちに来てくれ」
「ど、どうしたんですか、宮真くん? しょんべんっすか?」
「そうじゃない。なんで俺がリーダーなんだ?」
勇希たちと距離をとり、俺は野島とこそこそ話す。
「当たり前じゃないっすか! オレを庇ってモンスターのおとりになる男気! そしてダンジョンを生き抜く力――宮真くんは正に、男の中の男なんですから!」
興奮しながら口を開く野島。
あの時の出来事が、随分と都合良く解釈しているようだ。
このままでは野島の押しで強制的にリーダーにさせられる可能性がある。
なんとか野島を説得しなくては。
「野島……落ち着いて聞け」
「う、うっす!」
俺が真剣な表情を作り、低い声が話し掛ける。
野島は緊張したように固唾を呑んだ。
「俺はリーダーになるつりはない。
クラスのリーダー……そりゃあ委員長ってことだ」
「委員長……?」
「そうだ。
そんなもんはな、いい子ちゃんがやるもんだろ?」
「!? ……確かに、言われてみりゃあそうっすね」
「だろ? そういう面倒な仕事は大弥に任せておけばいい」
「なるほど! つまり宮真くんがなるのは――裏番ってことっすね!」
「うら……? そ、そうだ!」
とりあえず肯定しておいた。
この際、野島が納得するならなんでもいい。
「確かに裏から全部指示をするほうが、カッケーっすもんね」
「ま、まあ、そんな感じだな。
だがな野島、俺が裏番ってのは他の奴には秘密にしろよ」
「もちろんっすよ! 影から全てを操る裏番の正体を知られるわけにはいかねーっすもんね!」
納得してくれたのか、満足そうに野島は何度も頷いた。
そして凶悪な三白眼を大弥に向ける。
「おお、大弥! クラスの委員長はお前がやりやがれ!」
「え……でも、宮真くんはそれでいいのかい?」
「当たり前だろうがっ! クラスのリーダーなんてもんは、宮真くんには似合わねえだろうよっ!」
野島の発言が180度変わっていた。
これには大弥も苦笑を浮かべる。
「まぁ……リーダーについてもこれからみんなで話し合って決めようか」
仮に投票での多数決となれば大弥は過半数以上を集めるだろう。
とりあえず、これで俺がリーダーになる可能性は消えた。
野島のせいで想定外の疲労は溜まったが、以降は大きなトラブルはなく。
俺たちはタウンの探索を終えたのだった。




