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第一話 ミルバの書:1

駆け出しのジャーナリスト、ミルバは悩んでいた。来年にはワルジュア王国の建国から千年を迎える。その為国を挙げての建国祭が予定されていた。国内の様々な企業がこれに向けた行事や売り出し品を考え世に出していく中自分は全くその流れに乗れていなかった。ジャーナリストとなり二年経ち無難な記事しか出せていない自分もそろそろ大きな記事を作り世に自分の名前を売り出したいと考えていた。しかし、世を騒がすような記事は自分よりベテランの記者たちに取られていくばかりであった。かと言って地方のテレビで少しだけ流れるようなネタでは直ぐに人々の記憶から消え売り出す事は出来ない。


「どうすればいいんだぁ~?」


ミルバは自分のデスクで頭を抱え悩む。周りでは自分の仕事を行っていく者や記事を求めて外に出ている者等様々であったがミルバの様に頭を抱えている者は皆無であった。


「よっ!相変わらず辛気臭い顔してんな」


そんなミルバに声をかけてくる者がいる。字だけ見れば男にも間違えられそうな口調だがその言葉を発する声はとても高く聞けばだれもが女性と答える奇麗な声であった。


ミルバはゆっくりと声の方に顔を向ける。黒のスーツに身を包み込み金色の髪を腰まで垂らす女性。モデルの様に美しい顔には人間とは思えない長さの耳。


「…何のようだよリーシャ」


ミルバはその女性、エルフのリーシャに話しかけるなと目で訴えながら聞く。リーシャはその視線に気づいているのかいないのかミルバのデスクに体を預けながらからっとした笑顔を向ける。


「何、後輩がうじうじ悩んでいるから励ましに来たんだよ」


「…余計なお世話だよ」


決して先輩に向けていい態度ではないがリーシャはそんなミルバに気にした様子を見せず「そんなの知ってるよ」と笑顔で返す。相も変わらずジャーナリストをやっているとは思えないな、とミルバは心の中で呟く。


リーシャは十人中十人が「美人」と答えるほど容姿が良い。しかし、リーシャは自分の容姿について特に気にもしていないらしく昔からの夢であったジャーナリストになったと言う。何故この容姿でジャーナリストになったのか?ミルバは初めて会った時から疑問に思っているが中々教えてくれなかったためその内心の中で物好きと完結させていた。


「…で?君は一体何に悩んでいるんだい?この先輩に相談してみなよ」


「…別に」


リーシャは無邪気にミルバに話しかけるが少しの間をおいて拒否する。その反応が不服だったのか頬を膨らませ「別にいいじゃん!」とぷりぷり怒る。本人は別に怒っている訳ではないがリーシャの容姿のせいでそれすら絵になるためミルバは一瞬見惚れるが直ぐに表情をもとに戻す。こんな顔を見られればリーシャに揶揄われるとこれまでの経験から学んでいたからだ。


「そちらこそ、いいんですか?俺に構っていたりして」


「ん?別に問題ないよ。それよりも売り出したいけどネタが無くて悩んでいる後輩君の方が問題でしょ」


バレてたのか、ミルバは心の中で呟くとともにあんな情けない姿をさらしていれば自身の職業の事もあり直ぐに分かるかとも思っていた。


「そんな後輩君に朗報だよ~!なんと、今ならある特大ネタを提供することが出来るよ」


「…」


リーシャの言葉にミルバは胡散気な視線を向ける。決してこのような嘘をつく人物ではないと分かっていても信じる事は出来なかった。何せ彼女もジャーナリスト。特大ネタと言うからにはそれなりに世間を騒がすことが可能な者かもしれないがそれならリーシャが書けばいい。そう思っていた。


そんなミルバの心の内を知ってか知らずかリーシャは笑顔で話しを続ける。


「いや~、これって私の一族の秘密と言うか今まで誰にも言ったことがないんだけど頼み込んだら教えてくれる事になったからさ、特別に君に譲ってあげようと思ってね」


「リーシャの一族?」


ミルバはピクリと反応する。リーシャは人の五倍は寿命を持つエルフの中でもその倍を生きることが出来るハイエルフだ。リーシャも見た目に似合わず既に二百年を生きているらしい。二百年前と言えばまだ世界大戦すら起きていなかった時代だ。ミルバは初めて聞いた時リーシャが何処か遠い人物に思えたがリーシャの性格のせいでそれも直ぐに薄れ今では全く感じなくなっていた。


そのリーシャの一族の秘密をこんな駆け出しの自分に教えていいのだろうか?そもそもその秘密はリーシャが記事にするから許されたのでは?そう言った考えが頭に浮かんでくるがそんな考えを追い払う様にリーシャがミルバの腕を掴み立ち上がらせる。


「…え?」


「何ボケっとしているの?ネタは鮮度が命、直ぐに行きましょう!」


リーシャはそう言うが早いがミルバの腕を引っ張り一気に外に飛び出していく。返事をする前に連れ出されたミルバは暫くの間されるがままであり彼が回復するのはリーシャの車に乗せられてしばらく経った時であった。


ワルジュア王国:現実のポーランドに相当する国。大陸暦2060年で建国から約千年を迎えている。

エルフ:ワルジュア王国内で一定数存在する種族。人よりも長命であるがその分繁殖力は低い。二百年前までエルフ狩りと呼ばれる事が行われていた。

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