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八戸駅で新幹線を降りると、バスに乗り換えて秋田方面へと向かう。
向かうのは青森、秋田、岩手の県境である小さな田舎町だ。そこに『七尾の一族』がいると聞いている。
「そういえば、周防君はどうすることになったのですか?」
芽衣子が思い出したように訊いた。新幹線で周防から電話がかかってきた直後、沙羅が現れたり、どこかの見知らぬ若者に話しかけられたりしたことで、そのことを皆に伝えるのをすっかり忘れていた。
「周防君には一度戻ってもらうことにしました。こちらに来るのは取りやめということで」
今、この状況で周防がやって来れば、きっと雅緋とモメることになるだろう。さっきの電話でも、既に自分を騙したのが雅緋ではないかと周防は疑い怒っていたようだ。
――とはいえ、雅緋が一緒に来てくれたことに、瑠樺は実のところ力強く感じていた。
以前、一条春影が『妖夢』と化した時、それを圧倒的な力で倒した雅緋の力はやはり頼りに思ってしまう。
バスを降りると、すでに昼を過ぎていた。
近くのコンビニでサンドイッチを買って食事を済ませると、芽衣子が瑠樺に声をかけた。
「お嬢様、どうします?」
もともとこの町に着いてから二手に別れることになっていた。
『七尾の一族』がこの町にいるらしいという話しは聞いているものの、それ以上ハッキリとした情報は何も持っていなかったからだ。そこで瑠樺たちは二手に別れ、『七尾の一族』がいる可能性のある寺や神社を一つずつ捜していくことになっていた。
「二人ずつ組んで、二手に別れましょう。どう分けましょうか?」
その言葉をまるで聞こえないかのように雅緋はそっぽを向いている。明らかに瑠樺と一緒に行動するつもりに違いない。それを見て芽衣子は仕方ないというような表情で千波に声をかけた。
「千波、あなたは私と行くわよ」
「え? お姉と? 私、お嬢様と一緒がいいんだけど」
露骨に嫌な顔をして、助けを求めるように瑠樺のほうを見る。
「いいから。来なさい」
芽衣子が無理やり手を握って歩き出すと、千波も仕方なさそうにそれに従った。さすがに雅緋と千波の二人で行動させるのは不安がある。
「じゃ、雅緋さんは私と一緒に行きましょう」
「そうね」
そう言って当たり前のようにスタスタと歩きはじめる。
雅緋が父を亡くしたのは小学4年の時だと聞いている。警察官だった雅緋の父は、通り魔に襲われた子供を助けようとして殉職したのだそうだ。母親のいなかった雅緋は父親も亡くして伯母である日奈子に引き取られることになった。
そんな雅緋が瑠樺の父である辰巳と出会ったのは高校に入学して間もない頃だ。辰巳の力によって雅緋は沙羅の力を手に入れることになった。雅緋にとって、瑠樺の父の辰巳は特別な存在なのだろう。
出会った当時は、無表情で感情のよくわからないことが多かった雅緋だが、最近は喜怒哀楽の感情を表に出すようになってきた。きっと雅緋は辰巳の娘である自分のことを妹のように想ってくれているのかもしれない。今も決して口数が多いわけではないが、それでも暖かい気持ちが感じられる。