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町に戻ってから、瑠樺は芽衣子に連絡を取った。
芽衣子と千波はすぐにやって来た。
「『七尾の一族』が見つかったのですか?」
興奮気味に芽衣子は訊いた。
「はい、山沿いの龍泉寺という寺で会えました」
「連絡くださればすぐに行きましたのに」
「いえ、一度、引き返したほうがいいと思ったので」
瑠樺は龍泉寺で『七尾の一族』である七尾流に出会ったことを簡単に二人に話して聞かせた。
「そうでしたか。やはり簡単にはいかないようですね。でも、見つかって良かったです。これからどうされますか?」
「どうすれば話を聞いてもらえるか考えないといけません」
とは言ったものの、どうすれば七尾流が話を聞いてくれるのか、瑠樺にも具体的な考えがあるわけではなかった。
「じゃあ、アレは何だったのかな?」
千波が独り言のようにつぶやいた。
「何かあったんですか?」
「あ、いえ……変な話を聞いたんです。でも、もういいのかな?」
千波は迷いながら答えた。
「でも、もしも何か関係のある話があれば聞いておいたほうがいいんじゃないでしょうか」
「そうですか」
と答えて、芽衣子が話し始めた「……実は狐憑きの話を聞きました」
「狐憑き?」
「ええ、一ヶ月ほど前のことのようです。夜、不思議な格好をした少女を見たという人が何人もいたようです」
「不思議な格好って?」
「狐のコスプレ……だそうです」
「コスプレ?」
「頭から耳がはえていたとか……尻尾があったとか、その姿は狐に見えたそうです。私たちのような妖かしの一族の場合、その力が表に強く出た場合、そういうこともありえます。しかし、普通の人から見ればコスプレだと思われるんでしょうね」
「じゃあ、それが七尾についた妖かしなんでしょうか?」
「そうとは限りませんけど」
「六角さんの話では、七尾の力を継いでいるのは男性だと」
誰がどう見ても七尾流を見間違うようには思えない。
「――でしたね。六角さんも意識がハッキリしていたわけではないので、確実にとは言えないと思いますけど。しかし、目撃されたのは少女という話です。深夜、笑いながら空を飛び去っていくのを見たという話も。七尾と何か関係があるかも……とも思ったのですが、ハッキリしたことはわかりませんね」




