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エリクサーの泉の水を飲んで育った村人  作者: ぷにちゃん
第二章 世界の異変と魔女の村
51/59

13:入手方法

『へぇ、そんなことがあったの……』


 魔力を多く含んだヒヒイロカネを前にして、シーラは今までのことをシルフに説明した。シルフは笑顔で頷き、シーラを見る。


『そういう理由があるのなら、私も手を貸すわ』

「ありがとう、シルフ。心強いよ」

『でも、どうせならピアと一緒にヒヒイロカネをとればいいのに』


 魔王であるピアならば強いし、簡単にヒヒイロカネを手に入れられるのでは? と、シルフが告げる。

 もちろんそうなのだが、喧嘩をしてしまった手前なかなか一緒に行こうとは言いにくいわけで。


「……ヒヒイロカネを手に入れて、仲直りしようと思って」

『そう。シーラがそう決めたのなら、私はもう何も言わないわ』


 人間は面倒ねと、シルフは笑う。


『でも、そう簡単に手に入れられるかしら……』

「うーん、どうだろう」


 シーラは自分の立ち位置を改めて確認する。


 ヒヒイロカネはシーラたちの視界に入っているけれど、すぐに手を伸ばして取ることができるわけではない。

 今いる山頂部分は、くぼみになっている。しかもそのくぼみ部分にはマグマがあり、中央に足場があってそこにヒヒイロカネがあるのだ。

 つまり、ヒヒイロカネがある陸地を囲むように、マグマがある。普通であれば、あんなところへ取りに行くのは無理だろう。


 しかも、問題はそれだけではない。

 マグマが守るヒヒイロカネ。


 つまり今はとてつもなく――。


「暑い、むしろ熱い……」

『落ちたらさすがのシーラでも自己治癒が追いつかなくて死んじゃうわね』

「それは困るよ」


 シーラは生まれた時から飲んでいた飲料水が実はエリクサーで、それによって自己治癒能力がとても高くなっているのだ。

 それこそ、かすり傷や切り傷ならほぼ一瞬で治ってしまうほどに。

 しかしマグマの中で体が溶けたら、さすがに治癒能力で回復するのは無理だろう。仮に治ったとしても、すぐにまた体が溶けてしまう地獄のエンドレスだ。


 手で顔を仰ぎながら、さてどうしたものかとシーラは考える。マグマの上を飛んでいくこともできないだろうし、かといって消滅させたり凍らせることもできないだろう。


 どうしたものかと考えていると、シルフが『あら?』と声をあげた。


『ねえ、シーラ。ヒヒイロカネがある岩の横に、通路があるわよ?』

「え? あ、本当だ」


 シルフの告げたところを見ると、ヒヒイロカネのすぐ横に下から登って来られるような通路があった。

 ここから見ると、穴といってもいいだろうか。

 それを見る限り、山の中を通りマグマの中心部の陸地へ行くことができるようになっているらしい。


 けれど、どうやってそこへ行くのだろうか? 口を尖らせながら悩むシーラに、シルフはさらりと告げる。


『下から登ればいいんじゃないの?』

「ええぇっ!? せっかく空から頂上に来たのに!?」


 今更下山してもう一度登るなんて無理だ。

 せっかく目の前にヒヒイロカネがあって、それをゲットしたらピアと仲直りができるのに。シーラはあからさまに不満の表情を作り、どうにかしてこのまま手に入れることはできないかなと考える。


「どうにかして、シルフの力を使って飛んで中央にいけないかな?」

『えぇ!? マグマの上を飛ぶの?』


 シーラの案に、けれどシルフは嫌そうにする。


『それに、無理だと思うわよ』


 シルフは足元に落ちていた小さな石を拾って、シルフはそれをマグマの中央、ヒヒイロカネに向かって投げつけた。

 いったい何を? そうシーラが思ったのなんて一瞬で、シルフの投げた石はヒヒイロカネに到達する前にマグマによって呑み込まれてしまった。


「えっ!?」

『どうやらこのマグマは、あのヒヒイロカネの影響で魔力をおびているようね。たぶん、あの道を通らずヒヒイロカネを手に入れようとしたら……マグマに呑み込まれちゃうわ』


 つまるところ、意思を持った魔力が襲いかかってくるようなものだろう。さすがにそれは遠慮したいというか、恐ろしい。

 さすがのシーラでも、無事ではいられないだろう。


 大きくため息をついて、肩を落とす。

 そしてシーラはシルフに向かって、一言。


「……ちゃんと登ろう」


 シーラはシルフの言葉に大人しく従うのだった。



 ***



 一方そのころ、上空に一人取り残されてしまったシャクア。


『シーラのことだから、シルフに力を借りて着地は問題ないだろうが……』


 本当にこれでよかったのだろうか? と、首を傾げてしまう。

 ピアと仲直りできそうだと思っていた矢先のできごとなので、どうせなら一緒に手に入れにいけばいいのに……と思ってしまったことも仕方がないだろう。


『ふむ。シーラはどちらかというと、目の前のことに突っ走っていくタイプだったか』


 あまり深く考えないのは、彼女の性格だろう。

 シャクアは翼を大きく羽ばたかせ、ゆっくり地上へ降りていく。目指すは魔女の村にいる、ピアのところだ。

 余計なお節介かもしれないけれど、ピアにシーラの協力をしてやったらいいと助言をするつもりだった。


『ヒヒイロカネは確かに伝説級でとても上質な鉱石だが、そう簡単に手に入れられるものではないからな……いくらシーラが強いとはいえ、一人で手に入れられるかと言えば……』


 かなり厳しいのではないかと、シャクアは思っている。


『だが、ピアと一緒ならば可能性はあるだろう。共にいた人間の仲間では……どうだろうな』


 少し戦力的に不安があるかもしれないと、シャクアは考える。


 ――ああでも、あの男はかなりの強さを秘めているように思えたな。


 アルフと名乗った少年の目は力強く、シーラを除けばあの中で一番強いだろう。とはいえ、長い時を生きるピアと比べればまだまだひよっこか。

 ふふんと楽しそうに鼻を鳴らし、シャクアは上手くいけばいいなと思う。


 そして早く仲直りしてくれ――と、二人に言いたいのであった。

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