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エリクサーの泉の水を飲んで育った村人  作者: ぷにちゃん
第二章 世界の異変と魔女の村
42/59

4:守り神に会うため山に来ました

更新再開が遅くなってしまいました……すみません。

2~3日に1回くらいの頻度で更新できるかと思います、がんばります。

 魔女の村へ入るための条件は、傷ついた山の守り神を癒すこと。

 その山は魔女の村のすぐ裏手にある霊峰で、貴重な薬草を採取できたりする。ただ、それに比例して強い魔物も生息しているためそう簡単に足を踏み入れることはできないが。


 シーラはぐっと伸びをして、山の空気を思い切り体に取り込んだ。


「この山の守り神か、どんな生き物だろうね」

「シーラさん、そんなに急ぐと疲れ……はしないんですよね、きっと」

「うん、大丈夫だよ!」


 山の中をどんどん歩いていくシーラにルピカが心配して声をかけるも、当の本人はあっけらかんとしている。

 それに苦笑しながら、アルフは周囲を見回す。


「せめて、山のどこら辺にいるかわかったらよかったんだけどね」


 魔女は守り神がいる場所を告げなかったので、探すところからだ。あまり時間がかからないといいなと、アルフが告げる。


「そういえば、クラースは盗賊だったし森に詳しいよね。山の守り神とか、知ってるの?」

「確かにアジトは森の中にあったけど、だからって詳しいわけじゃねえよ。そもそも、守り神なんて本当に存在してるのか? ていよく俺たちを追い払うための嘘じゃねーの?」


 アルフに話を振られたクラースは、律儀なことだなとため息をつく。

 魔女たちが治療をほどこしているのだから、場所や形態だって知っているだろうに。それを伝えられていないということは、嘘をつかれたのかそもそも期待していないかのどちらかだろう。


 そんなクラースの言葉を聞いて、シーラは「きっといるよ!」と声をあげる。


「だって、いた方がなんだか楽しいよ! まあ、私も守り神っていうのに会ったことはないけど……」

「気楽だなぁ。てか、俺よりシーラの方が森に詳しいだろうよ」

「そうでもないよ。一人で森の奥に行ったりすることはなかったし」


 薬草採取などをすることはよくあるけれど、それも精霊と一緒にということが多かった。わからないことがあれば彼らに聞けばいいので、シーラ自身はそこまで森に理解が深いわけでもない。


 そこでふと、先頭を歩いていたシーラが足を止めた。


「あれ? 何か聞こえる」

「…………?」


 きょろきょろ視線をさ迷わせ、「なんだろう?」と首を傾げる。

 けれどシーラ以外には何も聞こえていないようで、ルピカは不思議そうに「どんな音ですか?」と聞く。


 シーラは悩みながら、答えを出す。


「うーん、いびきかなぁ?」

「いびき?」


 思わず全員の声が重なってしまったのも仕方がないだろう。

 クラースは頭をかきながら、面倒そうに舌打ちをしてシーラにその犯人を問いかける。


「俺には何も聞こえないけどな……人間か? 動物か? それとも魔物か?」

「うぅ~ん、人間じゃないね」

「なら動物か魔物か。てか、俺にはまったく聞こえないけどな……それが守り神だったりしてな」


 そう言ってクラースが笑うと、すぐにアルフが納得したように手をぽんと打つ。


「けがの回復のために、守り神が寝てるんじゃないか?」

「元気な病人だな……」


 とはいえ、守り神が休んでいるであろうこと自体には全員が納得する。弱っているくせにいびきをかいているのか? というツッコミもしたいところだが、何かしらの手掛かりになるかもしれない。

 もちろん、まったく無関係だった……という可能性も十分にある。


「とりあえず、その音の発生源に行ってみましょう。シーラ、案内をお願いしてもいいですか?」

「うん、任せて」


 ルピカの言葉に頷いて、シーラは再び歩き出す。

 その声はとてもかすかなもので、エルフの長い耳がなければシーラも気づかなかったかもしれない。


 声を逃さないように歩いて行くと、少しずつ、ルピカたちの耳に聞こえるくらいの大きさになってきた。


『ぐおおぉぉ……ぐおぉぉぉ』

「……なんだか、すごい音ですね」

「こんなでかい声、動物じゃないだろ。魔物だ、魔物」


 声を聞いたルピカは焦り、クラースは心底嫌そうな顔をしている。

 木々に響いてこだまするようないびきに、一同は不安を抱く。魔王を倒した実力者ぞろいの勇者パーティではあるけれど、別に戦闘が好きなわけではない。


 アルフが前を歩くシーラを見て、声をかける。


「ここからは僕が先頭を歩くよ。もし相手が魔物で、突然襲ってくることもあるかもしれないし」

「わかった」


 歩いていた順番を入れ替えて、アルフが先頭になった。その後ろにシーラとルピカで、最後尾にいるのはクラースだ。

 後ろから魔物か何かが襲ってきたら、クラースが対応するかたちになる。




 それからしばらく歩くと、赤色の巨体が姿を現した。

 見上げなければならないほどの体長はおよそ一〇メートル。ルピカとアルフはあんぐりと口を開けて、絶句している。


 そう、いびきをかいて眠っていたのは――巨大な赤き竜だ。

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