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エリクサーの泉の水を飲んで育った村人  作者: ぷにちゃん
第一章 世界のはじっこからの旅立ち
25/59

24:王都観光

 翌日になり、シーラはルピカと一緒に王都観光に繰り出した。

 街に入る門から王城まで続く大通りは活気があり、シーラの興味をそそるお店がそれはもうたくさんあった。


「うわあ、何あの服すごい、可愛い……!!」

「貴族の令嬢にも人気のお店ですね。シーラが着たらきっと似合います」

「そうかな? でも、動き難そう」


 シーラが見ているのは、レースとリボンを贅沢に使って作られたドレスだ。ふわりとしたスカートに、コルセットで絞るため腰回りはとてもスッキリとして見える。


「別に、戦闘中に着る服じゃないですよ?」

「あ……それもそうだね」


 ルピカの言葉を聞いて、思わず笑う。


「でも、服をたくさん買うと荷物がかさばっちゃうなぁ」


 しかも、豪華なドレスなのでとても重そうだ。

 シーラとしては、可愛い軽めの服が数着あればいいなと思っている。まだいろいろと旅をしたいので、身軽にいられることが第一だ。


「なら、わたくしの家に置いておくのはどうですか?」

「え、でも……」


 ルピカの提案に、さすがにそれは申し訳ないとシーラは思う。しかし、次にルピカが提案してきたことを聞いて目が輝く。


「お友達ですもの、シーラにはいつでも遊びに来てほしいんです」

「遊びに行っていいの?」

「はい、いつでも大歓迎です」

「わぁ……! 嬉しい」


 そう言って笑うルピカに、シーラは礼を告げる。それならば、服を買うのもいいかもしれないと店内へ入る。


「いらっしゃいませ」


 ルピカを見た店員は、すぐに侯爵家の令嬢だと気付いたのだろう。すかさずこちらへやってきて、奥の部屋へ案内をするが、それはルピカが断った。


「本日は、お友達の服を見たいんです。わたくしが選びたいので、声をかけるまで下がっていてください」

「かしこまりました。何かありましたら、お呼びください」


 以前、ルピカはシーラに服を選んであげるという約束をしていた。それを今ここで実現しようと思い、嬉しそうにしている。

 店内には、既製服はもちろんだが、一からドレスを仕立てるための生地やレース、装飾品なども飾られている。


「シーラは綺麗な髪色ですから、濃い色でも淡い色でも、どちらのものも似合うから悩んでしまいますね」

「そうかな?」


 ルピカがシーラにドレスをあてがいながら、「そうですよ」と微笑む。


「白系統であれば清楚ですし、濃いブルーや赤なら存在感を強く主張できますね」

「ふうん……服のことは全然わからないから、そうやって教えてもらえるのは嬉しい」

「たくさん着てみましょう」

「うんっ」


 シーラとルピカは、せっかくなので店内にあるドレスを色違いで試着してみる。シーラはピンク色のドレス、ルピカは水色のドレスだ。

 頭には、リボンとレースで作られたボンネット。レース生地が広いため、シーラの長い耳もしっかり隠してくれている。

 ドレスは少し濃いめの色合いで、白色のストライプラインが入っている。袖口はひじ丈でカフスが止められ、レースが綺麗に折り重なり広がっている。


「わあ、すごく可愛い。お揃いだ」

「やっぱりシーラはピンクが似合いますね」


 二人で鏡を見ながら互いに褒め合う。

 今までこんなことをしたことがなかったので、とても楽しい。村では必要最低限の服しかなかったし、特別な日といったら結婚式くらいしかなかった。

 普段着る服も、狩りに行き仕事をするので、丈夫で汚れてもすぐに洗えるものが多い。こんなにたくさんレースのついた服を着たのは、きっと村の中でシーラだけだろう。


「これ買う! ルピカも買うの?」

「シーラとお揃いになるんだから、もちろん」


 店員にはこのまま着ていくことを伝え、会計を済ませてそのまま店を出る。


 次に向かったのは、隣にある色とりどりの品が並ぶ菓子店だ。王室御用達の看板が下げられ、店内も多くの人が買い物する姿がうかがえる。

 どうやらルピカはこのお店を知っているようで、店内へ入るときに話をしてくれる。


「ここのキャンディやクッキーは絶品ですよ。特にキャンディは日持ちするので、旅に出る前に買っていきました」

「そうなんだ! 私もそうしようっと」


 二人で店内に入ると、すぐに甘い香りが漂ってきた。それにわくわくしながら商品の並ぶ棚に目を向けると、小瓶にたっぷりとキャンディが詰まっている。


「うわあ、すごく綺麗。宝石みたいだね、ルピカ」

「確かに、宝石みたいに綺麗ですね」


 そのため、お土産やプレゼントとしても人気が高い。

 シーラはその中から何個か選び、購入した。綺麗にラッピングをしてもらったので、思わず開けるのがもったいないと思ってしまったほどだ。

 シーラが大切そうに持っているのを見て、ルピカは問いかける。


「王都は気に入りましたか?」

「とっても!」


 菓子店を出て、シーラとルピカは王都を歩く。

 屋台で食べ物を買ったり、雑貨屋で小物を見たり、女性に人気のカフェで休憩したり。昨日のレティアとの一件を吹き飛ばすくらい楽しんだ。



「やっぱり王都ってすごい。はあ、みんなも村に引きこもらず、旅すればいいのに」

「住んでいるところから離れるのは、とても大変ですからね。でも、できることならばシーラの村の皆さんにも見ていただきたいですし、わたくしはシーラの村に行ってみたいです」

「そう? でも、私の村はなにもないからつまらないよ~」


 ルピカの屋敷に戻り、シーラは今日楽しかったことを話す。けれど、ルピカからしてみれば王都よりもシーラの村の方がずっとずっと興味深い。

 いつか行ってみたいけれど、一人で行くには道中が危険すぎる。いつかシーラと一緒に行けたらいいなと思う。


「そうだ、明日は王城に行きます。マリアたちと、精霊のことを話しましょう」

「うん」


 明日であれば、マリアもある程度の情報を整理しているだろうとルピカは考えた。

 レティアのことも話をしておきたいし、シーラが王城内で勝手に歩くと何があるかわからない。けれど、明日であれば予定もないのでずっと行動をともにできる。


「早く精霊を助け出してあげたいね」

「そうですね。わたくしも、たくさん精霊と話をしたいです。……人間のことを嫌っている様子なので、少し不安ですけれど」

「大丈夫、話せばわかってくれるよ」


 精霊はみんないい子だからと、シーラは笑った。

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