表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エリクサーの泉の水を飲んで育った村人  作者: ぷにちゃん
第一章 世界のはじっこからの旅立ち
11/59

10:精霊が絶滅してる?

 ギルドの受付嬢に教えてもらった雑貨屋にやってきたシーラは、自分の村にはなかった様々な小物に驚く。お財布はシンプルな物からカラフルで可愛いものが多く、どれにしようか迷ってしまう。

 値段はだいたい2,000~5,000コーグ。どれを選んでも、手持ちのお金で買うことができる。


「すごい、どれにしようか迷っちゃう!」


 財布はがまぐちタイプのもの、リボンで結ぶもの、ピンでとめているものなどがあり、目移りしてしまう。これもいいなぁ、あれもいいなぁ、そう言っては財布を手に取りどれにしようか悩む。

 そんなとき、ふとひとつの財布が目に留まる。

 綺麗な翡翠の色に、宝石と草花が描かれた財布だ。


「あ、これ素敵だ……!」


 値段を見ると5,000コーグと高めだけれど、今のシーラには余裕がある。主に心の。お金がなくなったら、森で薬草を採取すればいいと簡単に考えた。


「決まったのかい、お嬢ちゃん」

「! はい、これをください。……あ、裏には可愛い女の子の絵が描いてあるんですね」


 店主にお金を払い、財布はすぐに使う。

 初めて買った自分のお財布だと、顔が緩む。そんなシーラを見て店主も嬉しそうに笑い、描かれている絵の説明をしてくれる。


「それは風の精霊のシルフだよ」

「シルフ? そういえば、ここら辺は精霊を見ませんね」


 シーラの村にはたくさんの精霊たちがいたけれど、『常夜の森』の途中あたりからさっぱり精霊の姿を見なくなっていたことに気付く。

 おしとやかに描かれているシルフを見て、風の精霊はどちらかといえば攻撃的で活発なんだけどなとシーラは思う。


 考え込むシーラをよそに、店主はあははと笑う。


「見るも何も、精霊はとっくの昔に絶滅したじゃないか」

「なんですと!? 絶滅!?」

「ああ、精霊に会いたかったのかい? まぁ、お嬢ちゃんくらいの年の子は誰もが精霊に会いたいと夢見るもんだよ」

「…………」


 店主に聞かされた言葉に、ショックを受ける。


 ――こっちの方は、精霊がいないっていうこと?


 でも、シーラはシルフ自身にもらった風の精霊王シルフを呼び出すことのできる召喚石のブレスレットを持っている。

 旅立ってから召喚してはいないけれど、呼びかけに応えれば来てくれるはずだ。


 こちらは自分の住んでいた村とはだいぶ違うんだと、シーラは改めて自覚する。そう考えると、ルピカたちと森で出会えたことは幸いだったのだろう。


 ――なんか、みんな言葉遣いも丁寧だったもんね。


 クラースは普通だったけれど。

 シーラの村ではあまり畏まった会話をしないため、驚いたのだ。ルピカもマリアも気品に溢れているので、実は少し気後れしていたのだ。


「まぁ、精霊に会ったら教えておくれよ。これはおまけしておくから、持っていきな」

「ありがとう」


 しょんぼりと肩を落とすシーラに、店主は財布に付けられる小さな花の装飾品をおまけしてくれた。それをさっそくつけて、その可愛さににんまりした。



 お店を出たシーラは、本当に精霊がいないのか確かめることにした。

 村の中は見当たらないから、草原や森、池や川など自然の溢れるところがいいだろう。そっちになら、精霊たちがいるかもしれない。


 村の出入り口には見張りの役人がいる。

 村に魔物が近づかないか、不審な人物の出入りがないかのチェックを常時行っているのだ。それにより、村の平和が守られていることも大きい。

 シーラを見た役人が、「どうしたんだい」と声をかけてきた。まだ子供のシーラが一人で村の外に出ようとしてるのを、心配したのだろう。


「お嬢ちゃん、アルフ様と一緒のパーティにいた子だよね?」

「はい、そうですけど……」


 どうかしましたか? と、首を傾げる。


「いや、村の外は魔物も出るからね。お嬢ちゃんみたいな子には、危険じゃないかと思ったんだけど……アルフ様のパーティメンバーなら強いのかな?」

「強さは普通かな? 一応、一人で魔物も倒せますよ」

「そうか、ならそんなに心配しなくてもいいかな……でも、どこにいくんだい?」

「この近くをちょっと散歩しようと思って。あ、そうだ! ここら辺に大樹や川とか泉とか、なんか大きな自然物ってありませんか?」


 役人は自分を心配してくれているのだということがわかり、シーラはほっこりする。

 どうせならと、精霊がいそうだというところを聞いてしまう。役人は悩みながらも、ここから二十分くらい歩いたところに小さな湧水があることを教えてくれた。


「おお、いいですね! 湧水なら、ウィンディーネがいるかもしれない」

「ウィンディーネって、精霊の? はは、絶滅してる精霊がいるわけないだろう」

「えぇぇ……」


 そうやらシルフだけではなく、精霊全体が絶滅しているという認識らしい。

 そんなことはないのにと思いながら、シーラは湧水があるという場所まで歩くことにした。



 村を出て、森に沿った草原を歩く。

 シーラの膝丈くらいまである大きな草が多く、少し歩きにくい。帰り道の目印になるので、慣らすように草を踏んでゆっくり歩く。


 途中で出てくる魔物は、ケルベロスを小さくしたような獣タイプだった。


『ガウゥ!』

「なんか、ちっちゃくて可愛いね」


 精霊が絶滅しているのであれば、精霊魔法を使うことができない。そのことに気付いたシーラは、試しに犬の魔物に向かって精霊魔法を放つ。


「風を司るシルフよ、その力を刃にせよ! 《ウィンドナイフ》!」


 力強い詠唱をすると、シーラの周囲に風が舞い起こり犬の魔物を瞬殺する。

 問題なく精霊魔法が使えることにほっとして、やっぱり絶滅なんてしてないじゃないと憤慨する。でも、詠唱をしたのに、いつもの無詠唱より威力が弱かった。


 ここら辺は、もしかしたら精霊との相性が悪い地域なのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ