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ティンタンジェル記  作者: 鳴澤うた
40/49

40】 アリアンに

──どの位時間がたったのだろう?──


 松明の灯り以外に、きっと何所かにあるのだろう、ぼんやりとした明かりが気になってはいた。

(もしかしたら日が昇ったの?)

 そうだとしたら、この洞窟に入ってもう半日たっているはず。

 そんな、焦りを招く考えがフッと頭を過ぎり鎖を切ると、やはり鎖は途中までしか切れていない。

(いけない、集中しないと)

 ブルブルと頭を振ると、大量の汗が飛び散った。

 その様子を見てアリアンが汗を拭ってくれる。

「ありがとう」

 ディーナは途切れ途切れの息で彼女に礼を述べた。

 ──もう、かなりの人数の鎖を切ったが、まだまだ三千人は程遠い。

 剣を握る手の平はすでに豆が潰れ、そこから出血し更には皮が剥けてきている。

 ディーナは手が柄から滑らないように布をあてて、再び鎖を切り出した。

(みんな、助けを待っている。きっと……)

 私の力じゃ助けられない……ディーナは唇を噛み締めた。

 でも、力を貸してくれるだろうこの騎士団を目覚めさせることができるのは私だけ。

 私の代わりに

 みんなの代わりに

 国を 民を

 救ってくれるなら──。


「──あっ!!」

 剣が汗で滑って地面に落ちてしまった。

「……あっ……」

 汗では無く、皮が剥けて肉が爛れ、そこから出血したことで滑ったのだ。

 アリアンが消毒液と包帯を持ってきた。

「厚めに巻いとくぞ」


 しかし、厚手に巻いてもらったのは良いが今度は上手く剣が握れない。

「アリアン、剣が離れないように私の手と一緒に巻いて」

 痛みを堪えて剣を握り、アリアンが柄ごとディーナの手を包帯で巻いていく。

 その間、ディーナはじっとアリアンを見つめていた。

 その視線に気付きアリアンは「何だ?」と、優しく微笑んだ。

「私ね……アリアンみたいになりたかったんだ」

「知ってる」

「そうだね」

 二人、顔を見合わせ笑った。

「でも……アリアンみたいにはなれないわね……」

 しんみり話すディーナにアリアンは

「私みたいになる必要は無いさ」

と答えた。

「ディーナはディーナなんだ。貴女が自分らしく生きて行ければそれがきっと、貴女の適した道なんだと思う。全てが終わってから、また探せば良い」

「──うん」

 アリアンのディーナを見つめる視線は、いつも力強さが溢れている。

 彼女は自分の生きる道を迷う事無く信じている。だからいつも、心の逞しさが表に表れて自分に勇気と憧れをくれた。

 ──私は、その逞しさに憧れたのかもしれない──


 きっとアリアンは、私が三千人の騎士団を目覚めさせる事ができたら彼らと共に戦うだろう。

 ──アリアンの為にも

 時間があれば剣の指南、私に限らずエリダーやノーツにカインの体調管理までやって、誰よりも私の心配をしてくれて、お姉さんみたいなアリアン。


 ──貴女に会えて良かった。

 だから生きて欲しい。


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