24】 黒い不安
またまた久しぶりの投稿…。
カインの兄ちゃん達。
夜の暗い海は船の明かりを全て付けても、船に当たっては消える波にその明かりは全く届かない。
月も星も見えない真っ暗な闇の海。
日が昇れば昇ったで一歩先も見えない濃霧に襲われる。方位を示してくれる磁石も狂ったまま。
ウィンダムの軍船でひと際大きく立派な船がある。
しかし、他の船同様動く気配は全く無かった──いや、動かせないのだ。
下手に動かしたら座礁してまう可能性が高い。
ウィリアムは周囲に聞こえるほど舌打ちの音を出して葡萄酒をあおる様に飲んだ。
元々持久戦でやって来たので水も食料も充分に残っている。
しかし──
「それにしたって気味が悪い!!」
吐き捨てるように言うと、また葡萄酒を口にした。
「……『妖精の御加護』と言うものだろうな」
ずっと黙って食事を取っていたクロフトンが、対称に座っている弟のウィリアムに言い聞かせるように話した。
「自然現象だろ? 父上のように『神の御加護』なんて似た言い方は好かん!」
「──ウィリアム、父上の事なのだが……」
クロフトンは手で側に控えていた兵士達に下がるよう促す。
「──容態が悪いのか? かなり……」
「……特に精神の方がな……。この五年余りで父上は更に変わられた」
「因果応報だろ? まあ……親の意見に逆わずに悪行に加担している我らも同じ穴の狢だがな」
「……私は正直、今の父上は恐ろしい……。まるで別の者が乗り移っているようだ」
クロフトンの神妙な物言いには、呆れた表情を隠すことなく晒す。
「この天気で兄上まで妖精だの神だのの存在を信じるようになったのか? ──馬鹿らしい! 元々、父上の狂言から始まったことだろう? 人を集い統一させるには象徴が必要。それも、皆が尊敬し思わず伏れさす程の崇高な象徴が! それでここまでになった!
今、統一先が荒れていようと、侵略先々で殺戮が行われようと住民が不安と不満があろうとめでたく世界が統一した後で、俺か兄上が善行を行えば良い話だ!!」
イラついているのか、檄を飛ばしまた葡萄酒を煽るウィリアムの話を聞きながら、横目で何も見えない丸い窓の外を眺めた。
(恐らく限界だろう。父上もウィンダムの情勢も……)
──思い出す、ソラヤ島の大虐殺……。
あれは、父上の恨みを晴らすかのような所業に思えた。
そして、一人逃がしたと逆恨みのように処刑された部隊。
(カイン……死んだのだろうか……?)
海に沈んだ異母兄弟──。
いつか制裁が来る。
父上だけにではなく
私やウィリアムにも……。