表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ティンタンジェル記  作者: 鳴澤うた
16/49

16】 スクライカー

 ──こんな大国に対抗できる力と知恵を女王ドーンは授けてくれるのだろうか?

 ディーナだけではなく、エリダーもノーツもそしてアリアンも同じ思いなのだろう。

 見合わした表情で分かる。

 長い沈黙に苛立ったのか、カインが話しかけてきた。

「──なあ、あんたら何か探している様だが、もしかしてこの国を守る方法を探してんの?」

 四人、一斉にカインを睨み付ける。

「当たり? だよな? 国の非常事態にこの国の王太子が、数人のお供だけで忙しく動き回ってたらそれしか考えられん。

──まさか当ても無く我武者羅じゃああるまい?」

 カインの額にノーツの長剣の先があたる。

「こちらの事情を知って何とする? 何処かしらに潜んでいる者に知らせる気か?」

 ノーツの磨かれた剣がカインの顔を映し出す。

 映し出されたカインの表情は、至極真面目だ。

「今のティンタンジェルには、妖精信仰の無い者は忍び込めん。俺と一緒に何人か飛び込んだが『海の妖精さん』に捕まって海の底さ……」

 カインは縛られた両手の指を人に例え、海に沈んで行く様を表現した。

「俺も人が見えないはずのものを色々見てきたが、あんなにはっきり見えたのは初めてだったぜ。人魚って言うんだろ? あれ? ティンタンジェルから輸入されてきた本で見たまんまだな……」

「カイン、今貴方は『妖精信仰の無い者はこの国に入れない』と言ったわね? その根拠は何?」

「意思だよ」

 ディーナの疑問に、カインは即答する。

「──意思?」

「……心……精神って言った方がピタリとはまるか?」

 カインが考え考え言葉を選ぶように話す。

「適当な言葉が見付からないんだが、海に飛び込んだ時にも、この国にこうやっている時も“誰かの強い意志”を感じるんだよな。

 俺はただ、それを受け入れただけだ。受け入れてこの国に入って『妖精信仰を尊ぶ意志』なんかな〜と、感じたんだ。だからそう言った」

「──スクライカーか」

 エリダーが呟く。

「スクライカー? この国の言葉かい?」

「この国だって、居る筈なのに見えない者達は存在しています。

 それを察し、正体を感知し、その者の弱点や言葉を知ることのできる者の名称です」

「──ああ、南の俺の国では『シャーマン』と言うぜ」

「これは親から子へ受け継がれることの方が多いようです」

「俺の亡きお袋が『巫女』だよ。──あっ、巫女ってのはシャーマンの女の呼び名ね」

 突然、ずっと黙って聞いていたアリアンが、まくし立てる様にカインに向けて喋り出した。

「……巫女が子供を産み育てるのか? ──通説によれば巫女は生涯独身だと聞き及んでいるが──」

「うるせぇ!!」

 カインがアリアンに怒鳴った。

「お袋まで侮辱するのか!? お袋の事情を俺に聞くな! 第一、関係無いだろ!!」

「……」

 気迫負けしたらしく、アリアンは黙って俯いてしまった。


「──話を戻しましょう。

 カイン、君はこちらの事情を知ってどうするつもりなんですか?」

「これでも俺は、戦で各国を見て回っている。ここで言うストライカーの力も持っている。

 ──何か手助けできるんじゃないか?」

「……仲間になる、と言うことですか?」

「そう言うことさな」

「正気か……?」

 これには、ノーツもアリアンもディーナも言葉が出なかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ