11】 素質
短いです。
「眠れないみたいだな」
何度も寝返りをうつディーナに話しかけるアリアンは、逃亡兵の監視の交替ついでに話しかけてきた。
肝心の逃亡兵と言えば、傷も手当してもらい飯にもありつけた、と言うことで、熟睡かっとんでる。
「──どうする?」
アリアンの意味深な問いに
「どうするって? 何を?」
と、ディーナは首をひねった。
「今なら、奴を切れるよ」
「──!? アリアン……」
エリダーもノーツも深い眠りに付いている今、確かに復讐する絶好の機会だろう……。
──でも。
「……あんな話を聞いたらできない……」
「全部、奴の作り話かも知れんよ? それにもし真実だとしても、向こうの国の事情だ。
ディーナは、生き抜いたことに負い目を感じる事ではない」
「私ね……アリアン。ソラヤで生まれ育って、知ってる場所と言えば王立学校と城下街くらい。それだけが私の世界で、ティンタンジェルの法が私の生活を染めて、それが世界共通の法……。
思っていたと言うより、あまりにも当たり前過ぎて、国によって色々なことが違うってことに気付いて無かった。気付いてなかったから、ウィンダムの人達全員を憎んでいたの……。
でも、一人一人は私達とそう変わらないだよね」
「ディーナ……。貴女、戦士向きな娘じゃないね」
「……情けをかけ過ぎ?」
アリアンは首を横に振った。
「違うの。貴女は考え込むと深く思慮に耽ってしまう。
──だけど、逆上した時は本当に血に飢えた獣のようになる。周囲が見えなくなってしまう。
感情の気性が激しすぎる。戦の時、駒として動かなくてはならない戦士には向かない。
……でも、それは貴女がまだ若いこともあるけれど、良い所だと思う」
「……アリアン」
交替してもらう為にノーツの方に向かったアリアンに、ディーナはもう一度問うた。
「アリアンが私だったら、その兵士を切る?」
「──切るね。命までは奪わないが、二度と他人を殺めないようにね……」
一瞬、殺気立った何かがアリアンの周囲を囲んだ気がした。
これが、戦士として生きてきたアリアンの意志で、同じ戦士の敵に対する情けなのだろう。
憧れだけで目指してきた相手・役職……。
現実を目の当たりにした夜だった──。




