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ティンタンジェル記  作者: 鳴澤うた
11/49

11】 素質

短いです。

「眠れないみたいだな」

 何度も寝返りをうつディーナに話しかけるアリアンは、逃亡兵の監視の交替ついでに話しかけてきた。

 肝心の逃亡兵と言えば、傷も手当してもらい飯にもありつけた、と言うことで、熟睡かっとんでる。


「──どうする?」

 アリアンの意味深な問いに

「どうするって? 何を?」

 と、ディーナは首をひねった。

「今なら、奴を切れるよ」

「──!? アリアン……」

 エリダーもノーツも深い眠りに付いている今、確かに復讐する絶好の機会だろう……。

 ──でも。

「……あんな話を聞いたらできない……」

「全部、奴の作り話かも知れんよ? それにもし真実だとしても、向こうの国の事情だ。

 ディーナは、生き抜いたことに負い目を感じる事ではない」

「私ね……アリアン。ソラヤで生まれ育って、知ってる場所と言えば王立学校と城下街くらい。それだけが私の世界で、ティンタンジェルの法が私の生活を染めて、それが世界共通の法……。

 思っていたと言うより、あまりにも当たり前過ぎて、国によって色々なことが違うってことに気付いて無かった。気付いてなかったから、ウィンダムの人達全員を憎んでいたの……。

 でも、一人一人は私達とそう変わらないだよね」

「ディーナ……。貴女、戦士向きな娘じゃないね」

「……情けをかけ過ぎ?」

 アリアンは首を横に振った。

「違うの。貴女は考え込むと深く思慮に耽ってしまう。

 ──だけど、逆上した時は本当に血に飢えた獣のようになる。周囲が見えなくなってしまう。

 感情の気性が激しすぎる。戦の時、駒として動かなくてはならない戦士には向かない。

 ……でも、それは貴女がまだ若いこともあるけれど、良い所だと思う」

「……アリアン」


 交替してもらう為にノーツの方に向かったアリアンに、ディーナはもう一度問うた。

「アリアンが私だったら、その兵士を切る?」

「──切るね。命までは奪わないが、二度と他人を殺めないようにね……」

 一瞬、殺気立った何かがアリアンの周囲を囲んだ気がした。


 これが、戦士として生きてきたアリアンの意志で、同じ戦士の敵に対する情けなのだろう。


 憧れだけで目指してきた相手・役職……。

 現実を目の当たりにした夜だった──。

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