其之第一.五話
夢とは不思議なもので、見ている時に夢が現実ならと思う事はあるだろう。今回は妹、霧雨魔理菜が私の所へ夢として来て私と出会い、それが現実のものならと思った事は事実だろう。夢はあくまでも夢、来るときも突然で覚める時も突然だ。だからこそ私は魔理菜に思い出を作ってやりたい、夢だけではなく現実で魔理菜と再会する事が出来る程の思い出を。そして私は少なからず、魔理菜にこの世界のものを渡した。果たして夢から覚めた時に持ってるとは思えないが間違いなく次もこの世界へと来る事は確実だろう。いや、確実でないと困る。
「現実の世界では、魔理沙お姉ちゃんには会えないか、全くどうしてこう厄介な難問を寄越すものなのぜ」
正直な所、少々寂しい気もある。昨日の僅か数時間の間だったけど、退屈な日々を一瞬で忘れさせてくれたのだから。だけど今日だって来てくれる保証がない。
そんな事を悩んでる矢先、私はとある神社の境内へと足を運んでいた。博麗神社と呼ばれる神社らしい、私と年の似た巫女がいるらしいのだが。階段を登りきって周りを見果たす、どこにもそれらしい姿は見受けられない。何せ巫女と呼ばれる人だ、日々修行に明け暮れてるに違いない。来るときが悪かったみたいだ、そう思い帰ろうとしたが奥の建物に人影らしき姿が見える。
壁の脇から顔を覗かせる、何か見た目、青白の少々が腕組んで陽気になってる。
「あっ、あれが巫女なのか?どうもイメージと大分かけ離れてる気がするのぜ。でも腕組んでるし、やはり巫女か何かのぜ…ん?こっちに来るぞ」
その良く分からないのが私の所へやってきた。もう少し気品と言うか上品せいはないのか、落ち着きのない感じで走って此方へ来た。
「やいやいやい!!貴様がここの巫女か!あたいは今幻想郷で最強と疑われたチルノ様だ!貴様も運が悪いな!だがここで会ったのも運がつき、倒させてもらうよ!!」
「くそっ!?寄りに寄ってこんな時に最強の奴に出会うなんて!?戦う準備が出来てないのぜ!?………っとでも言うと思ったか返り討ちにしてやるぜ!!食らえ星屑流星群!!」
「ギャァァーーー!!」
私の放った魔法を正面から浴びて物凄い奇声と共に星屑に飲まれていくチルノ、やがて八卦炉から星屑が尽きた時でチルノは地面にバタンッとうつ伏せに叩き附けられた。
「……………何だこいつは?」
「ぐっ…このチルノ不覚にも油断してた、まさか先制攻撃されるなんて、だが!!次は貴様はこうなる時だ!くらえ!パーフェクトフリーズ!!」
「なぁ!?そんなもん喰らわせる気かよ!!私は只の人間なのぜ!?少し魔法が使えるってだけで」
「うるさあぁぁぁいぃぃー!!あたいをこんな目に合わせといて自分だけ助かれる訳ないだろうが!!あたいが受けた痛みを貴様も味わえぇー!」
刹那、その時本当に私は死を覚悟してしまった。こんな事で良いのか、こんな訳の分からない奴なんかに私は消滅させられる為にここへ来たのか?ん?ここへ来た理由って。
「なぁ?お前は私を巫女と勘違いしてるみたいだけど私も巫女を探してるのぜ?」
「そんなのは貴様を倒したあとに考えさせてもらうよ!!特別サービスだ貴様にあたいのありったけの氷をプレゼントしてやる!!」
話の通じる相手ではなさそうだ。今度こそ本当に不味い。一歩後ろに後退る、と私の横を数枚のお札が横切った。そのお札は私の先、両腕を上げ氷の塊を持つチルノへと向かっていった。
物凄い閃光と共にチルノは光へと呑まれる。やがて光が止むとチルノは今度こそ力無い感じで地面へと落ちていった。っが、地面に落ちる所でチルノを両腕で抱き抱えた人物が目の前にいる。赤に白、また良く分からないのが出てきたのかと一瞬考えが止まってしまった。
「全く、人の神社で派手にやんないでよね。誰が後始末すると思ってるのよ」
「人の神社でって?じゃあ!?お前が博麗神社の巫女か?」
「まぁ~そんなに驚かれる身分じゃないけどね。それに誰が巫女なのかも知らないで来たのなら、当然私の名前も知らないわよね。私は博麗霊夢、貴方は見た感じ、魔法使いか何かみたいだけど名前は何て言うのよ?」
「霧雨魔理沙だぜ、魔法使いってのは間違いじゃないが魔法は余り知らないのぜ」
「ふぅーん、魔理沙ね。やっぱり魔法使いだったのね。ちょっと魔理沙、こっち来なさい」
霊夢は優しくチルノを地面に置いて魔理沙が来るように促す。魔理沙は霊夢の前にやって来た。そして霊夢は魔理沙に一言だけ呟いた。
「この馬鹿者がぁーー!!」
私は霊夢のグーパンをもろに顔に受けた。何で殴られなきゃいけないかは分からないが、怒りより先に申し訳ない気持ちが先にきた。
直ぐに土下座の体制になって霊夢に頭を下げる。
「幻想郷じゃ敵に攻撃を仕掛けたら責任持って最後まで相手する。それが掟よ、さっきの貴方を見てたら自分だけ攻撃しといて逃げようとしてた風に見えたけど?」
「それは、いきなりだから怖かっただけで逃げたとかじゃないのぜ……」
霊夢は私に背を向けてしまった。何か悪い事を言ってしまった気がしてしまった。私は霊夢に涙声で謝った。
「何勝手に涙声なってるのよ。誰も怒ってるなんて言ってないでしょ?貴方のその感じを見てたらまだ此処の世界にも慣れてないみたいだし、少しはこの世界を教えてあげようとしただけよ」
「霊夢…」
「また明日も家へいらっしゃいよ。今度は貴方から何か持って来なさいよね。ほら速く帰らないともう夕陽が沈んじゃうわよ」
魔理沙はふと周りを見果たすと周りは夕陽に囲まれていた。そして境内の階段の脇に誰か立ってる。ん?あれは!?
「あっあっ!!魔理菜!?来てたのか!」
魔理沙は走って魔理菜の方へ走って行く。先程チルノに行った自分だったが実際に会いたい人へ会う時ははしゃぎたくなるんだな。
「てへへ。来ちゃった。魔理沙お姉ちゃんが家に居なかったから、恐らくここかなって思って来たら当たりだったみたい」
魔理菜は霊夢に頭をペコッとさげた。霊夢は二人に優しい笑みを見せて私と魔理菜は博麗神社を出たのであった。