出会い
僕達はお互い、恋人がいた。僕には、高校生のときから付き合っていた同学年の彼女。彼女には、妻子がいる、一回り上の社会人。
彼女との出会いは、どこにでも転がっているような出会いで、そこらの石ころのように、ありふれていて、無機質で。
そんな僕らは当たり前に、自然的に、崩れていくのが宿命で。
だからこんな、こんな終わりを迎えるなんて、僕はあの時、ちっとも思わなかったんだ。
僕と彼女は大学の新入生歓迎会といわれる飲み会で出会った。くじ引きで引いた僕の席の前は、二つ上の大人しい可愛らしいももこ先輩で、孝之が入学当初からかわいいと連呼していた相手だった。
「頼む!俺とくじ変えてくれ!!おごるから今度!!」
「じゃあ焼肉な。」
と言って、孝之とのくじを変えた席の隣に、彼女がいた。似合っていた金髪のショートヘアの先の鎖骨には綺麗なホクロが三つあった。それがなんだか妙にショートヘアを際出させていて、妙に色っぽかった。
「隣のくじです。」
さっき交換した「7」のくじを見せて笑った。敬語なんか使いたくもないが、先輩の可能性もある。初対面の人にまでわざわざ僕みたいな性格を晒し出すことはない。
「猫かぶんないでいいよ。」
彼女は目尻にシワを寄せて言った。分かるのよあたし、あと、同級生。とも。
なんだか僕は、その言葉に、心が、静かな海のようにすぅっと落ち着いていくのが分かった。
乾杯をした後、自己紹介をし、僕達は二人でぽつぽつとお互いのなんてことない会話を交わした。
わたし7って数字好きよ、僕は、7はありがちで嫌いだ。
わたしこのエビチリ好き、僕はエビマヨ派。
わたし、春って好き、僕は春は虫が多いから嫌い。
僕達両方が好きなものを見つけるのは、宇宙の中から地球を探すぐらいのものじゃないかと思うほど、僕達は正反対で、非対称で。
いつしか両方の好きなものを当てるゲームのようになっていた。
「あ!分かった。」
彼女のグラスの7杯目がカラになった時、彼女は頬を赤らめて言った。
「私は恋人が好き。君もでしょ?」
そうだね。僕はそう言ってグラスに残っていたものを飲み干した。地球を見つけた、そう思った。