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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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95/180

山口県周南市。喫茶店の牛肉焼めん。

 三百四十七号線を歩いていると、歯医者さんの向かいに大きな看板が見えた。

 かなり大きな木製の看板で、「喫茶&焼めん/ぞうすい」と描かれている。

「……焼めん?」

 他のはともかく、「焼めん」とはなんなんでしょうか?

 と、通りすがりのタスッタさんは首をひねる。

 焼そばとは、また違うのでしょうか。

 時刻は午後二時を少し過ぎたところ。

 ちょうどよく、というのもおかしいが、とにかくこの日、タスッタさんはまだ昼食を摂っていなかった。

 試しに入ってみましょうかね、と、タスッタさんは軽い気持ちでそのお店にむけて歩きだす。


 外見は地方によくあるような、郊外型の喫茶店。

 中に入るとなかなか落ち着いた内装で、半端な時刻ということもあって店内の席は三割ほどしか埋まっていない。

 タスッタさんが店内に入ったことに気づいた店員さんが、

「お好きなお席にどうぞ」

 と案内をしてくれた。

 タスッタさんは迷うことなく空いていたテーブル席のひとつに腰掛ける。

 すかさず店員さんがお冷とメニューを持ってきてくれた。

「ふむ」

 メニューを開いたタスッタさんは、一人そういって頷いた。

 なんかこのメニュー、喫茶店というよりも食堂みたいなんですけれども。

 食事のメニューが多目で、気になっていた「焼めん」とは、焼けた鉄板の上に麺を置いた料理でらしい。

 ますます焼そばとの違いがわからない。

 いや、この焼めんのめんは、どうも中華麺ではなく、うどんの麺に近いようだ。

 それが、大きな違いになっているのだろうか。

 ま、なんにせよ。

 と、タスッタさんは思う。

 実際に食べてみればはっきりとするでしょう。

 タスッタさんは片手をあげて店員さんを呼ぶ。

 焼めんは、かつおぶしと牛肉の二種類があり、このうちタスッタさんは牛肉の方を注文した。

 店員さんから、

「一人前でよろしいのでしょうか?」

 と、確認されたので、

「一人前でお願いします」

 と答えておく。

 よく聞いてみるとこのお店では、この焼めんも二人前盛りや三人前盛りがあり、そちらを注文する人も少なくはないのだとか。

 実際に食べてみて物足りなかったら、追加でなにかを注文すればいいだけですしね。

 と、タスッタさんは思う。

 これまでタスッタさんは何度かそうと知らずに大盛り料理を頼んだ末、完食するのに苦労をした経験があり、そのために慎重になっている部分があった。


 ジュウジュウと音を立てた料理がタスッタさんの前に出されたのは、注文をしてから十分ほど経過してからだった。

「意外と大きい」

 というのが、目の前に置かれた料理に対するタスッタさんの第一印象である。

 文字通り山盛り、こんもりと半球状に料理が盛り上がっている。

 その下に、どうやら熱せられた鉄板があるらしい。

 まずは、食べてみましょう。

 タスッタさんは箸を取って、その料理を摘む。

 しかしすぐにその途中で、硬い感触にあたった。

 箸先で料理をかき分けてみると。

「あ」

 と、タスッタさんは小さく呟く。

 そうか。

 半球状の鉄板、おそらくはジンギスカン鍋の上に料理が乗っているので、山盛りに見えていたのだ。

 この分だと実物の料理は、そこまで大盛りというほどでもない。

 こんもりと盛り上がった半分に錦糸卵、もう半分に刻み海苔、その中間に薄切りの牛肉を焼いたものが置かれ、紅しょうがそれらの上に散らされている。

 それで、これを。

「このおつゆと薬味で、いただくわけですか」

 と、タスッタさんは思う。

 いっしょについてきた小鉢の中には麺つゆ、それとは別の小皿には、もみじおろしとレモンと刻みネギが乗っている。

 このうち、小皿の方は、完全に薬味だった。

 麺つゆと薬味につけて、麺をいただく。

 こういう部分は、完全にお蕎麦なんですね、と、タスッタさんは思う。

 タスッタさんは薬味を適当に麺つゆの小鉢に落とし、箸で軽く混ぜてから、熱々のジンギスカン鍋に乗っていた麺をその上の錦糸卵や刻み海苔ごと摘んで小鉢の中に入れ、音を立てて吸い込む。

 麺は太くて、表面はいい具合に焼けてカリっと、中はもちもちとした食感で。

 ん。

 これは、蕎麦というよりはうどんの麺ですね。

 と、タスッタさんは思う。

 火の通り具合によって食感が異なる、なかなか面白い食べ心地だった。

 明らかにうどんの、小麦粉を練った麺だったが、それだけではなく。

 ん。

 この風味は、磯の香り。

 海藻でも、麺に練り込んでいるのでしょうか。

 以前、別の場所で食べたへぎ蕎麦のことを思い出しながら、タスッタさんはそんな風に推測をする。

 感触といい、風味といい、なかなかユニークな麺料理ですね、と、タスッタさんは思う。

 なにより、食べていて食感に変化があって、飽きが来ないのがいい。

 熱々でもちもち、場所によってはおこげの感触まで味わえる。

 それでいて、焼けた鉄板の上に乗せているから、なかなか冷めない。

 タスッタさんは箸を休めることなく動かし続け、すぐにその料理を完食した。

 食べ終えてみると意外に分量は少なく、やはり料理の下にあったジンギスカン鍋の形でかさがあるように見えていただけだった。

 実際には、大盛りというほどでもない量なのだろうな、と、タスッタさんはそう思う。

 ともあれ、他では食べたことがないような料理であり、タスッタさんとしても珍しい体験になった。



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