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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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青森県弘前市。公園売店のりんごラーメンとりんごごはんセット。

 二つの嵐の合間のある晴れた日、タスッタさんは青森県の弘前市にいた。

 例によって所用があったのでわざわざ立ち寄ったわけだが、そのついでにしっかりと観光も楽しんでいた。

 昨日などは弘前公園周辺を散策することで、ほぼ一日を費やしている。

 あの周辺は観光スポットが多く、一日くらい歩き回っても飽きなかった。

 そして、弘前市二日目となるこの日、もっと面白いところはないかと宿の人に訊ねてみたら、もうひとつ観光客に人気の公園がありますよと教えてもらった場所に、今、タスッタさんは来ている。


「りんご公園、ですか」

 タスッタさんはぽつりと呟いた。

 青森県がりんごの名産地であるということくらいは、タスッタさんも知っていた。

 なんというか、家族連れなんかにはよさそうな場所だなあ、と、タスッタさんは思う。

 確かにこれも、人気なスポットではあるのだろう。

 ただし、一人だけで散策するのには少しきつい感じもする。

 りんごの収穫を体験できるコーナーなどもあるようだが、タスッタさんはざっと旧小山内家住宅など含む園内を散策したあと、物販がある「りんごの家」という場所にむかった。

 残念なことに、学習コーナーなど一部の見学施設が改修工事のために立ち入れないようになっていたが、売店と軽食コーナーは平常通りに営業をしている。

 売店では、サイダーやアップルパイなど、りんごを使った加工食品がかなりの種類売られているようだったが、そちらに足をむける前に、タスッタさんはまず軽食コーナーへとむかった。


「見事なまでにりんご尽くしですね」

 メニューを一瞥したタスッタさんは、小さくそう呟く。

 軽食コーナーの中は平日の昼間ということあってか、割りと閑散としている。

 四十人前後は入れそうなスペースに、十人以下のお客さんしか入っていなかった。

 りんごのカレーとかカツカレーとかにも引かれるものがあったが、ここは無難かつ二つの料理を一度に食べることができる、「りんごラーメンとりんごご飯のセット」を頼むことにしよう。

 オーダーを通すと、すぐに料理が出てくる。

 もともと手早く調理ができるメニューであるということもあるが、やはりこういう施設では手間がかからない料理を選んで採用しているのだろうな、と、タスッタさんは思う。

 トレーに乗っている料理を見てみると、予想外に普通な外観をしている。

 りんごごはんは普通の炊き込みごはんに見えるし、ラーメンはやっぱりラーメンらしい。

 この二品に小さな小鉢がついてくる。

 セットメニューとしては、こんなものかなあ、と、タスッタさんは思う。

 期待を大きく上回るわけでもなく、さりとてがっかりするほど貧相なわけでもない。

「まあこんなもんだろう」

 的な見た目だった。

 箸を取ってまずはラーメンを啜ってみた。

 うん、普通。

 醤油ベースのスープに細麺のラーメン、それも特徴のない味……といった結論を出しかけたところで、ふわりとりんごの香りが口の中を抜けていき、あれ? と思う。

 これは、スープの中にはないですよね、と、そうも思い、さらに二、三口、麺を啜ってみる。

 そして、

「ああ、これは、麺の中から香ってくるんだ」

 と、結論した。

 どうやらこのりんごラーメンは、麺の中にりんごを練り込んでいるらしい。

 食感的には普通の中華麺だったし、そうすることによって劇的においしくなっているわけでもないのだが、かといってその香りが邪魔なわけでもない。

 なんというか、「話のタネにはなるけど、なくてもぜんぜん構わないよね」的な、余計なオプション感がある。

 このラーメンにおいて、麺にりんごを練り込んだことがプラスに働いている部分があるとは、タスッタさんには思えなかった。

 あまり期待しないで食べれば、おいしいのかなあ、とか内心で首を捻りつつ、タスッタさんはその凡庸な、どこででも食べられるような味のラーメンをさらに啜る。

 次にタスッタさんはりんごごはんを食べてみた。

 りんごを入れて炊いたごはんは、味的にはやはりこれといった特徴がなく、強いていえばシャリシャリした食感が加わることでかろうじてりんごを入れたことが理解できる、といった態だった。

 ラーメンの方とは違って、炊き上げる途中で飛んでしまうのか、こちらはりんごの香りさえしない。

 おいしくない、とまではいわないが、なんというか、普通ですね。

 と、タスッタさんは思う。

 ラーメンの方も同じだが、わざわざ手間を掛けてりんごを入れている意味がわからないのがどうにも理解できない。

 こんなことなら、変な好奇心に構わず、もっと無難なサイダーとかアップルパイを頼んでおけばよかったかな、と、タスッタさんはそんなことを思いはじめ、

「いや、こういう期待はずれも経験の一種ではありますから」

 と、慌てて自分で否定する。

 うん。

 たまには、こういうこともありますよ、と、タスッタさんは自分自身を励ました。


 タスッタさんはその日、帰りに売店でアップルパイとサイダーをそれぞれ数種類ずつ購入し、宿に帰ってから楽しんだ。

 こちらの方は、想像していた通りにハズレがなかった。




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